第97話 救出
「なんであそこだけ魔物が固まっている?いや群がっているんだ?。」
ディードは遠くに見える光景に首を傾げる。広い荒野の一角に魔物達が群れて固まっている。その集団は15匹程で奥は何か動いているものの、真ん中の魔物達は遠くで見ている限り動きは見られない。
「そんなの私達にわかる訳ないでしょ?。」
「どうする?近づいてみるか?。」
「私が上から見てきます。」
レミィは兎の盾を使い、状況を知る為に上から偵察をし始める。
ディードとリリアはそのまま足を止めず近づく。魔物達に近づくにつれて不穏な音が聞こえはじめる。
ドゴーン、ドゴーンと鳴る音に戸惑いながらも足を進める2人に上の方からレミィの焦った声が届く。
「ディードさん!魔物の群れの先、ゴーレムが盾を叩いている音です。もしかして!。」
「盾を構えて戦闘している者が居るって事か!マズイ急ごう。レミィちゃんそのゴーレムを止めて!。」
「分かりましたやってみます。」
ディードの一言にレミィは一足先に空を跳ねる様に兎の盾を駆使し、ロックゴーレムのいる所へと向かう。それを追うべくディードとリリアの2人が地上を走る。
「ディー!真ん中に紅蓮の鳥を放つわ!その後に片側をお願い!。」
「わかった右側を任せる、間違ってもレミィちゃんやその先の人に当てるなよ。」
「そんな事する訳ないでしょ!。」
リリアは走りながら紅玉の杖に込め始める。その頃、レミィは魔物の集団の先頭のロックゴーレムの頭上に辿り着いた。
レミィは双剣を抜き出し、落下速度を利用してミスリルの小太刀でロックゴーレムの右肩を背後から突き刺す。
そして着地と同時に大地の牙を地面に突き刺し魔力を込めた。
「行け!大地の牙!。」
大地の牙はレミィの魔力を受け目標のゴーレムを串刺しにし、その姿を岩の残骸と変えた。
その直後迫る魔物達に目を向けた時に、後方よりリリアの声が届く
「レミィちゃん!跳んで!。」
「はい!。」
レミィはリリアの指示に言われるがまま兎の盾を使い、上へ上へと跳躍する。
「行け!私の紅い鳥『紅蓮の鳥』。」
紅玉の杖から放たれた紅蓮の鳥は、次々と魔物達を飲み込んで行きレミィが倒したロックゴーレムの前で霧散する。
「ディー、手加減して撃ってるからまだ生きてるのも多いわ、気を付けて。」
「ああ、わかった!俺が先に突っ込むぞ。」
ディードが魔物の群れに突っ込む、紅蓮の鳥が通った中心は魔物はいないが左右にはまだ動ける魔物はチラホラと存在しており、ディードを見つけると待ち焦がれた食事を見つけた様な目で襲って来る。
「邪魔だ!。」
ディードは刀技、体術、魔法を駆使して戦う。近づいた物には刀で打ち払い、蹴りを放つと同時に足元から魔法を放ち魔物を打ち払う。
一方リリアは、どんな魔物にでも同じように剣を振るい、まるで紙切れを切り裂く様に魔物達を切り裂き突き進む。
途中レミィも合流し3人になったディード達に17階の魔物達はもう成す術が無かった。
魔物の群れを殲滅したディード達、やがて3人は盾が入口を塞いでいる所に辿り着く。
ロックゴーレムの攻撃は相当なものだったのだろう。周りの壁が所々亀裂が入り、盾はくの字に曲がっていた。
「おい!大丈夫か?。」
「・・・・ぅ・・ぅぅ。」
微かに声があるものの、まともな返事では無くただの呻き声に聞こえたディードは、少し焦りながらも声を上げる。
「おい!助けに来たぞ!この盾を離せ!。」
「諦め・・な・・い。・・・絶対・・にか・・え。」
「駄目だ会話が通じてない。盾も強引に剥がせないし、どうせうれば・・・。」
ディードの声掛けにうわ言の様に応える声に、リリアが業を煮やす。
「ディー!どいて、そこの壁を切るから。」
リリアはディードをどかし、盾の右側にある壁の一部を切り裂く。壁は前に倒れそこから様子を伺えた。
中には3人の兵士がおり盾を持っていた彼女は、リリアの開けた穴に辛うじて目を向けた。
「ディー!、この人あの時の。」
「ああ、確かライーザって人だったはず。助けに来たぞ!俺の声が分かるか?。」
「・・・・た・・すけ・・?。」
「ああ!君が指示した兵士の依頼を受け救援にきたディードだ!。」
「・・・ああ・・すま・・・ない。」
ライーザはそう言うとその場で崩れ意識を失った。リリアは盾がある場所の周辺を剣でくり抜きライーザ達を救出する。
「この2人の女性兵士は比較的軽傷だ。問題は・・。」
「ライーザさんね。これは酷いわ・・・。」
「ああ、全身どこもかしこも傷や打撲だらけだ、一番に酷いのは両腕か。少し時間がかかりそうだ。レミィちゃん周囲の警戒をお願い。」
「わかりました。」
「私は近くにいるわ。」
リリアはディードの近くに、レミィは周囲を警戒する。
ディードは深く深呼吸をし両手に光を纏わせ、一気に3人に回復魔法をかけ始める。
「光よ聖なる光よ彼の者に大いなる癒しを与え給え。【大回復】」
光が身体に注がれていく回復魔法、メイとリンの外傷はほぼ消え去り苦悶の表情は徐々に穏やかな顔になってゆく。しかし、ライーザの表情は未だに苦悶に満ちたままだった。
ディードはメイとリンの回復魔法を切り上げライーザ1人に大回復をかける。
額に汗が流れ出る程大回復をかけるディード。しかし、彼女の症状は思ったよりも重いのか中々傷が癒えない。
「ふぅ・・・・リリア。すまない来てくれ。魔法を大回復から神聖回復に切り替える。」
「わかったわ。そんなに重傷だったのね、彼女。」
「どうだろう。これだけ回復をかけていても回復しなかったのは初めてだ。それじゃ神聖回復をかけるから徐々に魔力譲渡をお願い。」
「ええ、もちろんよ。」
リリアはディードの肩に手を置き、ゆっくりと魔力譲渡でディードの魔力を回復させる。それを受け神聖回復で腕の再生を試みるディード。彼女の腕は徐々に光を帯び腕が再生されていくが、出てきたのは黒い腕だった。
「黒い腕?。」
「なんだこれ?あの時はこんな腕をしてなかったはずだぞ?一体何が・・・?。兎に角、神聖回復は一旦やめよう。」
ディードは神聖回復をやめ力を抜いた時、遠くの方からレミィの声が聞こえてきた。
「ディードさーん。兵士の方を見つけましたこちらに向かってきます。」
「こっちに案内してくれ!怪我している奴がいれば俺の所に来るように言ってくれ。」
「わかりましたー。」
レミィに案内され、スカーレット家の兵士達は次々とディードの所に寄って来る。
20人程が生き残り、軽傷重傷者問わずディードは回復魔法をかけてゆく。
激戦だった疲れからか、その表情は暗く重いものだった。
「・・・・・ここは?。私は・・・どうしてここに?。」
ライーザが意識を取り戻し目を開けると、視界にはテントの屋根が見えていた。
「あ・・・気が付きましたか?。」
「君は・・・?あの時の?。」
「ええ、レミィって言います。ギルドの緊急要請によりあなた方を助けに来ました。かなりの重傷だったのですが、大丈夫ですか?。」
「重傷・・・。少し・・・!?そうだ一緒にいた私の部下は?。」
ライーザは飛び跳ねる様に起き上がり辺りを見回す。するとすぐ隣にメイとリンが寝息を立てていた。
彼女はその姿を見て安堵し、自分達が助かった事を確信した。
「メイ、リンも無事だったのか・・・。良かった。」
「ええ、かなり危ない状況でしたね。一体何があったんです?。」
「・・・実は・・・。」
「レミィちゃん、開けるよ。」
ライーザが何かを言おうとした時、不意にディードがテントを開ける。
彼は回復魔法を使いすぎたせいか、少し疲れた様な表情をしていた。
「貴殿は、あの時の。」
「あ、ライーザさんでしたよね。どうですか?身体の具合は?。」
「ああ、少し気だるさがあるが他は大丈夫だ。」
「そうか、それと腕の再生なんだけど・・・・ダメだ。後で聞く。レミィちゃんごめん少し寝るよ。」
「ええ、お疲れ様です。見張りは私がしておきますね。」
「・・・うん。ごめんね・・・・夕食の頃にはおこし・・・て・・・。」
ディードはレミィの脇に雪崩れ込むように倒れ、そのまま寝てしまう。
レミィはディードの顔を持ち上げ、足の上に乗せ優しく髪を撫でた。
「少しだけこのままで・・・見張りは後でちゃんとしますから。」
そう言ってレミィは指を口に当て、ライーザに内緒と言わんばかりのポーズをとる。
「ふふふ、随分と彼に甘いようだな。」
「ええ、ここに着いてからずっと動きっぱなしでしたからね。ディードさん、回復とか、後片付けとか、食事とか大変でしたからね。少しでもいい眠りをと。」
「・・・・ん?回復に、後片付けに、食事?一体彼は何をしたのだ?。」
「テントの外を見ればわかりますよ。」
ライーザはレミィの言葉に疑問を感じ、そーっとテントから顔を覗かせる。
「・・・・なんだこの光景は?。」
それは、スカーレット家の兵士達が温かいスープを飲み、パンをかじり、串焼きを食べつつ交代で休息を取っている姿だった。




