第10話 異変
10話です。良かったら見てやってください。
一つの剣とペンダントは、リリアの手に渡った。
剣の名前は≪魔力剣吸≫
抜刀時に彼女を魔力を勝手に吸い上げ、刃に魔力を宿し、魔力の刃で斬る剣に改造された。
剣の形はショートソード、鍔元に手元を守るガード付き。
鍔の所にギミックがあり追加の魔力を吸い上げ威力を上げる事が出来るようになった彼女専用の武器。
リリアは気に入り名前を≪シフォン≫と命名したようだ。
もう一つはペンダント。、これは、彼女の鎖骨に見えていた黒い外骨格の様な物を隠し、村の通行証ともなり、更には、気配を少し隠せるレアアイテムとなっていた。
彼女のペンダントが出来た時、まだチェーンの部分が無かった為ディードが自作した。
そして、リリアに付けてあげると、彼女は赤面していた。
ジト目で見る、姉とドルガの視線を気にしないようにしていたディードであった。
そして彼女の素性だが、彼女自身魔族だと打ち明けたが、ディードの一家は「それが何か問題でも?」
という気の抜けた返事が返ってきた。 この村には種族差別が存在しないらしい。
ただ、道中言われなき誹謗中傷偏見差別などを避けられるように、ファルナはドルガに願いを託したのだった。
それを聞いたリリアは感謝し、泣いてしまったのだ。
ドルガは、「これであの件の借りは少し返せたかな」と一人呟いていた。
その一件から数日後、彼女はディードに剣の稽古をつけてもらっていた。
彼女がひとり立ち出来る様にと、木剣で打ち合う2人、たまにグレイヴも稽古に参加したのだが、全く歯が立たず、エリンも参戦したが、武器では戦えないので、小さな【水槍】で、回避の練習をさせていた。
そして、エリン、ディード、リリアの3人で初めての狩りへと向かおうとした時、それは、起こった。
ファルナのお産が始まったのだ。ファルナの見たことのない苦悶の顔、慌てるディードとリリア、
グレイヴはファルナを抱きかかえ寝室へと運び、村のお産に立ちあえる仲間を呼ぼうと、
何故か大盾と大剣を握りしめ外へ向かおうとしていた。 まて父よ、何をしようとするのだ。
この父、完全にポンコツになっていた。
父に水魔法を掛け武具をおろさせ、仲間を呼びに行かせる姉エリン
家に遮音結界を施し、母の様子を見に姿は頼もしく思えたが、声は震えていた。
その後、村の人からお産に立ち会える仲間が来て家に入って行った。
残されたディード、リリア、仲間を呼び、戻ってきては外に追い出された父。
なにをするわけでもなく、ただただ庭のテーブルイスに腰を掛け、ファルナの無事を祈っていた。
ドアが開き突如出てくるエリン、3人は立ち上がり無事を聞こうとするが、突如エリンはリリアに【水獄】をかける。 やがて解除され
「ゲホ・・ゲホ・・・な、なにを・・・」 「ごめん、説明している暇がないの悪いけどお産に立ち会って!」 「え?ちょっと、なんであたしが?」
「説明は後、お母さんの手を握ってくれればいいの!お願い。」 「・・・・わかりました。」
奥へ連れていかれるリリア、その表情は狼狽えていた。 残されたグレイヴとディードは、再び椅子に座り、ファルナの無事を祈っていた。
数時間が経過、ドアが開き遮音結界が解除される、元気な産声が聞こえ喜ぶ父子。
ドアから出てきたエリンは気が抜け、テーブルの上で泣き始め、リリアは、半分魂が抜けているような状況だった。
落ち着きを取り戻し、話を聞いてみた所、ファルナの横に立ちそれぞれ手を握って励ましていた。
ファルナの握る手が思いのほか強く、折れそうだったと語るエリン、まだ手がしびれているリリア。
出産という命の尊さを強制的に学ばされた2人は、しばらく恋愛はいいやと苦笑いしあうのだった。
生まれた子の名前は≪ルビア≫と名付けられた。 茜色の目をした可愛い女の子だ。
2日後村では、中央広場で宴会が行われていた。ファルナの出産を祝う会だ。
村総出で、祝い、飲み、歌い、騒ぐ、お祭り騒ぎだった。
次の日、村では異変が伝えられた。 どうやら結界の外が騒がしくなり何人かで外で偵察した所。
不思議な現象が確認されたそうだ。
ゴブリンが集団で、オークや大猪、大蜂、スライムなどを襲っているとの事だった。
さらに、集団で倒した敵をどこかへ運ぶというものだった。
この事を踏まえ、村では緊急の会議がおこなわれた。 この事を伝えられると、
村長でありファルナの弟、≪ファース≫が驚きを隠せず グレイヴに話しかけてきた。
「間違いなく、【強行軍】だろうな。。。。」 グレイブが苦い顔をする
「まだ数は揃っていないようだが殲滅しに行くか?」 ファースはグレイヴに持ち掛ける。
「時期が悪すぎる、俺は守りに入る。ファルナを護らせてもらう。これはだけは絶対に譲れない。わかってるな。」 グレイヴは腕を組みながらファースに話しかける。
「それは当然だろうな。だが討伐も必要になるな。その辺はどーする?」
「エリン、ディード、の若い世代に行かそうと思う。 補助にドルガ達でどうだろう。」
「偵察組か?」 「今の状態が確認されてから察するにダンジョンが出来てまだ日数が浅いはず、階層を確認、撃破可能なら撃破してらもらおう。」
「かなりの無茶ぶりだが、村の中と外の守りを考えると割けられる人数も多くない。行ってもらうか。」
「うちの息子と娘だ、無事に帰ってくるさ。 ・・・・・必ず。」
こうして慌ただしくも、偵察組が結成されたのだった。
メンバーは ドルガを隊長とし、ディード、エリン、リリア、ドルガと同じドワーフ族のゴイ、グレイヴのかつての仲間で、村人のラエドが加わる。 リリアに関しては当初、村の護衛組だったのだが、志願して偵察組となった。 村長のファースはさすがに引き留めたが、ガンとして譲らなかったらしい。
そして、翌日、偵察組が出発しようとした時に、アルフに行く手を阻まれるのであった。
「待ちたまえ君達、私を置いていく気かい?、そこの弓なしと私が入れ替わってあげようじゃないか。」
「アルフ、こんな時に冗談を言ってる場合じゃないんだ、どいてくれ。」
「そーよアルフ、あんたの弓さばきは確かにうまいけど、ダンジョンには不向きだから防衛に回ってるんでしょうが、わかりなさいよ。」
ディードとエリンが邪険に扱う、しかしアルフは、
「おやおや、私の実力に嫉妬しているのかい?だが安心したまえ。私は魔法も使える。そこの奴らより優れているから問題ないさ。」
リリアや魔法攻撃に不向きなドルガ達に対してもマウントをとっていくスタイルに、さすがのディードとエリンも感情を抑える気が無くなってきた。」
「いい加減にしろよ、アルフ!冗談が過ぎるぞ。」
「おやおや、ならば実力で排除するかい?」
「ディー、ここで遊んでる訳にも行かないから、やっちゃいなさい!。」 エリンがさらに煽る
ドルガがため息をつきこう伝える。
「ディー、相手してやれ。 ただしお前は素手でだ。」 「わかった。」ディードが素手で構える。
「はっ、負けた時の言い訳かい?それとも土下座でもする為の素手なのかい。」
「御託はいいから構えろ。遊んでる暇は無いといったはずだ。」
「く、・・・・後悔しても知らないぞ! 俺はお前の義理兄になる存在だぞ!」
「「絶対それは無い!!」」 同時に叫ぶディードとエリン。
「いいから始めるぞ。」 ドルガが拾ってきた木の枝を投げる。落ちた瞬間から勝負らしい。
勝負は一瞬だった。 木の枝が落ちた瞬間 アルフが弓を構えディードの足に狙いをつけ、矢を放つ。
放たれた矢の所には既にディードは居なく距離を縮めていく。焦るアルフは連射するが精度が悪く、当たらない、一気に距離を縮めたディードはアルフの鳩尾目掛け拳を打ち込む。
まさに一撃必殺であった。一瞬で意識を刈り取り勝負を決めるディード、喜ぶ気も慣れない彼は無言で結界の外へと向かいだした。それに釣られ歩き出す皆々。
「ディーって怒らせると怖いのよねー。一応あのアホにお仕置きしておくか。」
エリンは気を失ってるアルフに対し、精度の低い【土獄】をかけてから結界の外へ向かうのであった。
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