表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

6.敢為邁往

 蹴り殺されたゴブリンの死体が無造作に置かれた洞窟をひた走る中、ブレイトの視界にしゃがみこんで何かをやっている緑色の背中が入った。

 ブレイトは勢いを維持したまま跳び上がり両手に持った剣を振り回した。

 寸分の迷いもない切っ先はゴブリンの首をしっかり捉えると抵抗することを許さずにその命を飛ばした。

 突然宙を舞った二つの首に視線が行ったゴブリンの頭にも返す剣で突き刺した。

 あっという間に三体のゴブリンを屠ったクランは剣を引き抜くと両の刃の状態を見てから鞘に戻した。

 改めてゴブリン達が囲んでいた物を見ると、そこには脚を切り落とされた見覚えのある少女の死体があった。

 切り落とされた脚もその作業に使われたと見られるティントの物とみられる剣もその場に転がっていた。

 ブレイトは槍を途中で折ってから引き抜き、体を表に転がした。

 何が起きたのか分からなかったのだろう、茫然とした様子で見開かれた少女の目に手をかざして閉ざした後にブレイトは両手を合わせて目をつぶった。

 そして突然目を開けると転がっていた剣を即座に拾い上げ、全身を使って小部屋の奥に投じた。

 投じられた剣は奥にある通路からやってきたゴブリンの頭に突き刺さり、死体は投じられた剣の勢いに呑まれて後ろに倒れた。


「あれは研いでももう使えないかな」


 全く警戒せずにやってきたゴブリンを鼻で笑いつつ、ブレイトはティントの剣の状態を確認した。

 ただ先程まで素人(ゴブリン)にめちゃくちゃな使われ方をしていたからか、ティントが振り回した時にあちこちにぶつけまくったからか、今の投擲が致命傷になったのか、酷い刃こぼれを起こしていた。

 その有様にブレイトは思わず眉間に皺を寄せてしまった。


「無いよりはましか……」


 とはいえとりあえず持っていくことにしたらしく、ブレイトは強引に腰のベルトの間にティントの剣を差し込んだ。

 そして今作ったばかりのゴブリンの死体の腕を自分の剣で斬り外すと、露出した骨を通路の両端に突き刺してから縄を結んだ。

 腕を左右に動かし、その強度に不安そうな表情を浮かべたがブレイトは先を急いだ。

 今までの洞窟よりも狭い通路をしばらく進んでいくとスーラが殺されていた小部屋よりは狭いものの、広間になっている部分を見つけた。

 岩の陰から中を覗き込むと勝利の美酒の真似なのか大きな個体と小さな個体が円を成して石で出来たカップで何かを飲んでいる姿、そして部屋の奥で何かに向かって腰を振っている動物の骨を被ったゴブリンの姿などが見えた。

 その光景に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらブレイトは指を折りながらブツブツと呟いた。


「亜種は二、リアさんはあそこ……やれるな」


 そして荷物の中から紐が伸びた丸い物を取り出し、紐を抜いてから部屋の中に放り込んだ。

 その直後眩い閃光が広間を満たす中、ブレイトは素早く来た道を引き返した。

 すぐに何体もの足音が追いかけてくるのを背中に感じたブレイトは縄を跳び越えてからすぐに身を翻すと持っていた紐付き玉を口で引き抜き、縄に向かって投げてから目を隠した。

 直前まで迫っていたゴブリン達は紐付き玉から発せられた光に反射的に目を閉じ、足元の縄に気づかずに引っ掛けて倒れた。

 引っ掛けた中でも一番大きな個体にブレイトは駆け寄ると真っ先にその頭にティントの剣を突き立てた。


(いち)!」


 再び両の剣を引き抜き、起き上がり際のゴブリンの首を次々と撥ねる。


「二、三、四」


 光に目が眩んだからか、前にいた仲間達が倒れたのを見たからか、仕掛けに引っかからずに手前で足を止めていたゴブリン達にもその刃は容赦なく襲いかかった。


「五、六」


 追手を無傷で片付けるとブレイトは間髪入れずに通路を戻り、再び部屋の中に玉を投げ入れた。

 中に残っていたゴブリン達は閃光に備えて目を腕で隠したが、玉は容赦なく腕どころか体ごとゴブリン達を吹き飛ばした。


「ゴブリンでも思いつくようなことを全ての人間様がやると思うなよ?」


 木っ端微塵になったゴブリンの死体を蹴飛ばしながらブレイトが部屋の中に入ると、ようやく骨を被ったゴブリンは異変に気付いたのか腰をふるのを止め、後ろを見た。

 さっきまで笑いながら酒を飲んでいた仲間達が揃って肉塊になり、返り血で所々を真っ赤に染めた真っ白な人間がその真ん中で笑っているのを、見てしまった。

 生命の危機を感じ、慌てて呪文のような物を唱えようとするもすでに遅く。

 開いた口には一瞬で詰め寄っていたブレイトによって剣先を突っ込まれた。


「ア、ア……」


 苦しそうにうめく声を無視して勢いよくブレイトが剣を引き抜くとゴブリンは血を盛大に前後から吹き出しつつ倒れた。

 ブレイトは血糊を振り落として鞘の中に戻すと目の前に転がされていたリアを抱き上げた。

 鉄靴以外全て脱がされ、体中に塗りたくられた透明やら白やら赤やら様々な液体で服が汚れることを厭わず、ブレイトはリアの頭を撫でながら耳元でこう囁いた。


「遅くなってすまなかった。一人で半分以……頑張った。よくやりました」


 アビレオ語で最初話しかけたが、リアには通じないのを思い出してアンテロープ語で簡単に言い直す。

 するとリアの目にみるみる涙が浮かび、すすり泣き始めた。

 鎧にすがりつくリアが落ち着くまで、ブレイトは黙ってその頭を撫で続けた。



 こうして大量の犠牲を生みつつ、五人の傭兵達の狩猟は終わった。

 死者一名。負傷者二名。

 討伐、ゴブリン六十八体、ホブゴブリン一体、ゴブリンシャーマン一体。

 褒賞金、銅貨四十枚。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ