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序章

「あなた方はいつまで我が国を苦しめる化け物を地下牢に閉じ込めておくつもりですか!」


 王宮は雲一つない青空に対比するかのように暗い雰囲気に覆われていた。

 その豪華絢爛な建物の中心にある審議院では集められた貴族達の言い争いが勃発していた。


「ジャンゲ卿、せっかく今は大人しいのだ、そこまで急ぐ必要はないだろう」

「いつまで持つか分からないのだぞイオノ卿! もし万が一今正気に戻ったら我々は一巻の終わりだということが分かっていないのか!」

「分かっている! しかしだな……」

「ここには彼女の父親がいるのだぞ、目の前で娘が悪し様に言われるのを快く聞いていられるとお思いでか、ジャンゲ卿?」

「それはそれ、これはこれだ! 何よりクラン卿も彼女のことはもう既に諦めておられる! 彼女を国外に追い出すことにもトドメを刺すことにも何の障害は無い!」

「だからといって他国に迷惑をかけてもよいという話にはなりませぬぞ!」

「この世にあるあらゆる処刑法を行なっても死なないのだ! これ以上何をすればいいというのだ!」

「策はある」


 もはや水掛け論になっていたそれは、議場の一番上にある席から聞こえた声によって唐突に終わらされた。


「確かに我々には彼女を斃す策がない。しかし遠ざける(すべ)はもうすでに考えられているだろう」


 その言葉に貴族達から一斉に騒めきが起こる。その中で貴族の一人が悲鳴に似た声をあげた。


「ま、まさか、本気で他国に押し付けるおつもりですか⁉︎」

「そうだ」


 下手すれば重大な国際問題に発展する判断に騒めきはますます大きくなる。


「静粛に、静粛に!」


 側近が大声で宥めにかかり、騒めきは表面的には落ち着いた。しかしその多くは未だに不安そうな表情を浮かべ、隣の席の者と顔を見合わせていた。

 王はわざとらしく咳払いをすると抑揚が全く感じられない声で話し始めた。


「幸いあれの存在は他国にバレていない。もしあれが覚醒したとしても我々は知らぬ存ぜぬで通すことができる。そうであろう? クラン卿」

「はい。あれが外に出る前後は領への出入りを禁じておりますし、被害が起きたとしても突発的な自然災害と発表しております故、あれの存在を知っている外人は恐らくいないでしょう」


 今抱えている問題の中心人物である男の自信満々な態度に中立の立場を取っていた貴族達の間に安心した空気が流れ出す。

 それを好機とみたのか、王が悪い笑みを浮かべた。


「つまり、あれの正体さえ知られなければ『旅人が突然未知の獣人と化し暴れ出した』としか取られない。それに、あれを始末してくれれば我々としては万々歳であるし、止められなかったとしても軍を派遣するだけでも我々は恩を売ることも出来る」


 もし他国の者が聞いたらとんでもないマッチポンプだと激怒しかねない考えだが、その見返りに多くの貴族達が旨味を感じ始めていた。

 そして口には出さないが、さらに突っ込んだ邪な内容を抱く者もいた。


「しかし……万が一我々がこうなることを知っていたことがバレたら」


 そんな空気の中でも反対派の貴族は渋る。だがその考えが頭の中にない王の前ではその大勢はすでに決してしまっていた。

 こうして最終的には一方的となった議論の末、贄にされた少女は故郷を追われることとなった。

 しかしそんな会話が上でされているとは知らされてない当の本人は入っている石造りの牢屋には不釣り合い過ぎるほど豪華な寝台の上でのんびり寝転がっていた。


「あー……外に出れたら、何を見に行こうかなぁ……」

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