第4話 王妃の過去
昔あるところに、街外れの小さな村に美しい女性が貧しいながらも両親や村のみんなと助け合いながら切磋琢磨に暮らしていました。
この国の王は民のことなど考えずに自分の事しか考えていないような傍若無人な王だったので、民はいつも貧しさに苛まれていました。
そんなある日の事です。
この国の王がその美しい女性の元へ訪ねて来たのです。
「この国で最も美しいのはお前だと聞いた。お前には俺の元へ来てもらうぞ」
王は嫌がる彼女を無理矢理城へと連れて行きました。
彼女は城へ連れて行かれるとすぐにお風呂に入れられ、そして彼女にとても似合いそうな美しいドレスを着せられました。
「どうだ、俺のもとにいればこんなにも贅沢ができるぞ。嬉しいだろう」
「いいえ。御言葉ですが王様、私はこの様な贅沢をするよりも村のみんなと貧しいながらも助け合いながら暮らす方が良いのです」
彼女は恐怖に耐えながらも王に立ち向かいました。
しかしそんな抵抗も無駄に終わってしまったのです。
「ふん、村娘ごときが生意気な。俺は美しいものを集めるのが好きなんだ。お前に拒否権など最初から有りはしない」
王はそう言い、彼女を地下の牢屋へと閉じ込めてしまいました。
「考えが変わったらここから出してやろう。ああ、そうだ。ここから逃げ出そうとしたら村の奴らをお前の目の前で1人ずつ殺していくからな」
王は高らかに笑いながら去って行きました。
1人牢屋に取り残された彼女は恐怖や悲しさで一晩中涙を流し続けました。
それから数日が経ち、再び王が彼女の元へ現れ尋ねました。
「どうだ、考えは変わったか?」
「……はい。私は村を捨て、貴方様の命尽きるまで共に過ごすことを誓いましょう」
「いいだろう。俺の興が冷めないように常に美を保て」
「はい」
こうして彼女は村を守るために王のもとに付くことを決めました。
そして月日が流れたある日の事です。
彼女が庭園を歩いていたら突然後ろから口を塞がれ、体を拘束され、どこかに連れて行かれそうになりました。
お金目当ての誘拐犯が彼女に襲い掛かってきたのです。
彼女は必死に抵抗し、その甲斐があってかなんとか声を出すことが出来て、兵に助けてもらえました。
しかしその時に彼女は顔にほんの少しだけ傷を付けてしまいました。
ただ、傷と言ってもほんの些細なかすり傷程度で傷もほとんど目立ちません。
しかし王はそれすらも許しませんでした。
「その顔の傷はどうした」
「先程誘拐犯に抵抗した時に付いてしまったようです」
「ほぉ、そうか」
王は楽しそうに不気味な笑みを浮かべて言いました。
「おい、兵士ども!ここにあいつらを連れて来い!」
そして兵士たちが連れて来たのは、彼女の家の隣に住んでいる老夫婦でした。
「な、なにをするつもりなの!」
「ははっ、なぁに、お前に自覚してもらうためだ。兵士ども、やれ!」
王に命令された兵士は、その老夫婦を斬殺してしまいました。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
彼女の前で老夫婦の血が吹き飛び、彼女は絶望のあまり叫び出しました。
「はっはっはっ!俺は美しいものが好きだと言っただろう。お前の体に傷が付く度にお前の村の奴らを殺していくからな」
楽しそうに笑う王を見て彼女は思いました。
ほんの些細な傷も付けてはいけない、美しくあらねばならないのだ、それが村のみんなを守る唯一の方法なのだと。
それから彼女は王の言うとおりに従い、王の喜ぶことを行い、自分の心は押し殺しながら日々を耐え、暮らしていました。
それから数年が経ち、彼女の心が壊れかけていたそんな時に、隣の国との戦争が起きました。
多くの兵士が倒れ、ついには王の元にまで相手の騎士が現れ、王の首を取りました。
彼女は戦利品として相手国の王族のものとなり、この国も相手国の領地へとなりました。
彼女はそんな中、悲しさも嬉しさも、なんの感情も湧いてきませんでした。
ただ呆然とする中、美しくあらねばならないという洗脳だけが彼女の中を蝕んでいたのです。
そして彼女は、白雪姫の国へ拡大を企てている国の為に白雪姫の父親と結婚をし、白雪姫という自分よりも美しい義理の娘ができました。
「その隣の国というのが俺の住んでいる国だ」
王子は全てを話し終えた後、ポツリとそう付け加えました。
こんなつもりじゃなかったのに……。
「りんごと白雪姫と王子と」の第4話「王妃の過去」です。
本当はもっと余裕を持って投稿するつもりだったんです!
でももう後3日しかない(´ºωº`)
精一杯頑張ります!
書き終えてみせます!
最後までよろしくお願いします!