いざ王都へ
オーク二体との戦闘後、大体二~三十分程歩いて行くと遠くに見えていた王都を囲う壁がもうすぐそこまでになっていた
「だんだん人が増えてきたな…」
一つ前に立ち寄った町はそこそこ大きいと思っていたが、そこよりも遙かに大きかった
人の流れに沿って街門の前にいる兵士さんに呼び止められた
「身分を証明する物、もしくはそれに準ずる物を見せて貰えますか?」
「……身分証?」
「ええ」
森の深い所で育てられた為、自身の身分証明を持っていなかった
「あの…俺田舎から来たので身分証持って無いんですよ…」
「む?そうなのか?なら、あっちの詰め所で作ることが出来るから、付いてきなさい」
「え?あ、はい…」
もっと色々言われるかと思っていたが兵士さんは優しく案内してくれた
「字は書けるか?書けなければ代わりに書くが?」
「大丈夫です。字位なら書けます」
母さんから字や一般の教養を受けていたから読み書き等は楽に出来た
名前と必要項目を書き終わりソレを兵士さんに見せるとだんだん兵士さんの顔が強張ってきた
「少年、アレクシア・デュレイン殿と何か関わりがあるのか?」
「ええ、俺の師匠で母親です」
アレクシアと言うのが母さんの名前で拾われた俺は母さんの死後デュレインの名を使うようになっている
「そ、そうか…身分証を用意するから少し待っていてくれ」
「あ、はい」
三分程待っていたら身分証と手紙を俺の前に出した
「コレが君の身分を示す物だから無くさないように。後、別の国や大都市に行くとき必ず掲示するのを忘れないでくれ」
「分かりました。…所で、この封筒は?」
「用事が無ければ王城に行って欲しいと思ってな。それなりに距離があるから馬車を用意するが…どうかな?」
「えっと…師匠から、ギルドの支部長さんと学園の学園長に街に着いたらすぐ会いに行くようにと言われているんですが」
「ふむ…ならば、その後に頼めるか?」
「それなら、大丈夫かと」
「感謝する門兵にはこの手紙を渡したら通すように伝えよう。
ギルドなら通りを行けば分かる筈だ、学園は王城に近いから直ぐ分かる」
「ありがとう御座います。」
詰め所を出て言われた通りを行けば二分位でギルドに着いた
中に入ると柄の悪そうな人や、穏やかそうな人が沢山いた
「いらっしゃい、初めて見る顔ね?ギルドの登録かしら?」
受け付けに行くとお姉さんが優しく話しかけてくれた
「いえ、師匠からここの支部長にコレを渡すように言われて来ました。」
「そうなのね、なら少し待ってて」
お姉さんはそう言うと受け付けを離れて奥の扉に入って行った
少ししたらさっきのお姉さんと威厳のありそうな感じのおじさんが近づいてきた
「君がそうだね?こちらに来なさい」
おじさんの後に付いてさっきの部屋…支部長室と書いてある部屋に入った
「さっそく手紙を見せてくれるかな?」
「はい、コレです」
手紙を渡し支部長さんが読み始めた所で受け付けのお姉さんがお茶を入れて持って来てくれた
静にしているとだんだん支部長さんは悲しげな顔をしていた
「そうか…アレクシアは逝ったか…」
「…………」
支部長さんの声に無言で頷くと支部長さんは手紙を仕舞った
「エルモンド君、私はここドラグニア王国の王都でギルドの支部長をしているサリウス・アーグルネンと言う。
アレクシアとは古い親友でな…昔言っていた弟子と言うのはなるほど…いい顔をしている…」
サリウスさんは一人で納得した顔をしていた
「君は純粋な剣士の様だね?」
「はい、師匠からは剣術しか習っておらず、魔術は使えません」
「うむ、アレクシアからの手紙には君にギルドの登録を頼まれている。
君さえ良ければ作っておくが」
「……あった方が良さそう何でお願いします。」
「分かった。手続きは私がやっておこう。明日来てくれれば渡せるだろう」
「分かりました。よろしくお願いします」
サリウスさんに頭を下げ支部長室を出てお姉さんに挨拶してから学園に向かった
「………母さんって何をしてたんだろ?」
今思えば母さんの詳しい素性を知っていなくてただの厳しいけど優しい人としか知らなかった
「……何を知った所で俺の母さんに変わりないか」
苦笑いを浮かべ頬を掻きながら学園に続く道を進んで行った
体感的には1㎞位歩いた所で学園に付いたが、校門は閉じられていて学園からは人の気配が全く無かった
「…………城に行くか」
学園長に渡す予定だった手紙をカバンに仕舞いついでに兵士さんに貰った手紙を取り出した
「近くって言うか…ほぼ隣だよな…」
学園から王城までは、約500メートル離れているが、建物自体が大きいからすぐそこに見えていた
俺が歩いて城門に近づいて行くと、門を守る兵士さんが警戒するように俺を見てきた
「止まれ!王城に何か用か!?」
「コレを見せるように言われました」
「んん?………少し待っていろ」
兵士さんは手紙を開くとすぐに門の裏にあった詰め所に入ると街門の所にいたあの兵士さんがやってきた
「さっきぶりだな。」
「学園が休みって知ってましたね?」
半眼でその人を見ると優しげな笑顔で笑っていた
「いや~すまんな、ついイタズラ心が出てな。私はガルシア・ランティエス。ドラグニア王国騎士団団長をしている」
兵士さんじゃ無くて、騎士だったようだ
「さ、案内しよう。」
ガルシアさんに付いて王城に入った
ガルシアさんに付いて行きながら廊下を歩いていると自分には不釣り合いな場所に来たなと思いキョロキョロしながら歩いていると、急にガルシアさんが止まりその背中にぶつかってしまった
「ん?どうかしたか?」
「……いえ、何でも無いです…」
強くぶつかった筈なのだが、ガルシアさんは微動だにせずこちらを振り返った
「…そうか?こちらに国王がおられる。さっきみたいな事にならないようにな。」
笑い声を堪えるように話していたのでこの人はからかうのが好きなんだろうと確信した
扉の前に居る騎士さん二人も苦笑いを浮かべていた
「開けてくれ」
「「はっ!!」」
ガルシアさんの言葉に強く返事をして騎士さんはゆっくり扉を開いた
「さ、行くぞ」
開かれた扉をくぐり王様のいる部屋に入った───
ご覧下さりありがとう御座います