少年の実力
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「ん…朝…か……」
昔懐かしい夢を見た気がしてゆっくり身体を伸ばしながら起きた
「懐かしい…夢だったな…」
俺を育ててくれた母親の顔を思い出し懐かしみながら旅の続きの用意をした
家を出てから大体半年を過ぎ、母さんからの手紙に書いてあるギルドの支部長と同じ街にある学園の学園長に渡す為に街道を進んだ
「野宿にも、大分慣れたな…」
街道を歩きながら立ち寄った町で買った地図を見た
「もうすぐ着くな」
地図をカバンに仕舞い歩いて行くと、前方から数人の怒声と魔物の叫び声が聞こえてきた
「アレは…オークか…こんな街道にも居るんだな…」
五人の魔法使いと魔法剣士のパーティーが連携を組みながら二体の緑色の肌をした二メートル近い身長で猪豚の顔をしたオークと戦っていた
「……この国の魔法使い達はこんなにレベルが低いのか…?」
離れた位置から見ているとそいつ等はたった2体のオークに苦戦していた
「グォアアァァ!!」
一体のオークが魔法を放ち後衛の魔法使い一人を倒し、そっちに人の視線が向いた瞬間にもう一体が手に持っていた棍棒を横に薙ぐと前に出ていた三人の魔法剣士が一度に吹き飛ばされ、残り一人になっていた
「ガアァァ!」
すっかり士気を無くした女の子は座り込み近くにいるもう一人の魔法使いを庇うように抱き締めていた
オーグは無慈悲にも女の子に向け大きく棍棒を振り上げた
ソレを見てから全力で走り、倒れた魔法使いを庇って強く目を瞑っている女の子の前に立ち、振り下ろされた棍棒を片手で持った刀で受け止めた
「………え?」
「助けてやるよ…下がってて…」
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Other Side
学園が休みな今日、私達のパーティーはギルドに行き街道に現れる魔物の討伐に向け朝から街を出発した
「それにしてもよー」
パーティーの先頭で歩いているクラスメイトのユウト君が声を上げた
「どうかしたの?」
「ん~?休みだからゆっくりしたかったって言いたいんだよ~」
ユウト君はそう言いながら直ぐ後ろのパーティーのリーダーで学園の生徒会長のセシリア先輩に目を向けた
「仕方ないでしょ?街道に魔物が出て危ないのよ?」
「そうですよ、ユウト先輩!人助けなんですから張り切って征かないと!」
セシリア先輩に続くように後輩のアンちゃんが気合いが入ったように言っていた
「分かった分かったよ…ま、やるからにはちゃんとしないとな…」
「頑張ってユウト、僕も手伝うからさ」
ユウト君を慰めるように同じクラスメイトのマルス君が励ましていた
今は五人しかいないけど、私達のパーティーは後三人居ます
「レイちゃん、回復と援護なんだけど問題ない無い?」
「あ、はい!大丈夫です。」
四人を見ていて少し気を抜いていたら、同じく援護をするセシリア先輩が話しかけてきた
「そう?多分はぐれ魔物だから心配してないけどね、あの三人もいるし」
「はい、そうですね」
ワイワイと話している三人を見ながら魔物が出ると言われた場所に向かった
セシリア先輩の言うとおり出てくる魔物はスライムや、ゴブリンばかりで苦戦する事は無かった
「ふぃ~…とりあえずこんなもんかねぇ」
「そうね、もう居ないと思うから街に帰りましょうか」
「少し物足りないけど、ここら辺に出るとしたらこんなもんだよね」
倒した魔物から出た魔石を回収しながら帰途につこうとした時、ふと索敵魔法にこっちに近づいてくる魔物に気がついた
「皆さん!魔物が二体来ます!」
私の言葉に皆一気に戦闘モードに入った
そして、私達の前に大きな魔物…オークが現れた
「ど、どうして…こんな所にオークが…」
「危険度B級の魔物じゃねぇかよ!」
ユウト君は叫びながら現れたオークに斬り掛かりそれに続くように私達も攻撃を開始した
「や、やっぱり強い…」
セシリア先輩の言うとおり、私達ではオークに致命傷を与えるような攻撃が打てていなかった
「どうするんだよ!会長!このままじゃジリ貧だぜ!」
「い、今考えています!とりあえず、私達の援護の隙を──キャアアァ!?」
「セシリア先輩!?」
オークの放った魔法がセシリア先輩を打ち一撃で戦闘不能に追い込んだ
「「ウワアァァ!?」」「キャアアァ!!」
セシリア先輩に気を取られたのだろう前に出ていたユウト君、マルス君、アンちゃんがオークの攻撃で倒された
「あ…そん…な…皆が…」
セシリア先輩を抱えていると一体のオークが近づいてきて大きな棍棒を振り上げていた
「…っ!!」
殺されると思い目を閉じセシリア先輩を抱き締めていたが、何時までたっても痛みを感じず顔を上げると黒い服を着た男の人が普通の剣よりもかなり細い剣で棍棒を受け止めていた
「……え?」
「助けてやるよ…下がってて…」
その人はそう言って棍棒を弾いた
Other Side End
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刀を軽く振ると棍棒は簡単に押し返せてオークはバランスを崩していた
「…瞬剣…掵斬り«はばぎり»」
バランスを崩したオークを一振りで四度斬るとオークは立ったまま霧散し魔石だけがその場に落ちた
「グォアアァァ!!」
仲間を殺され怒り狂ったようにもう一体のオークが突っ込んできたが、振るわれた棍棒ごとオークの首を刎ねた
「……ふぅ」
刀を鞘に仕舞うと同時にもう一体のオークも霧散し魔石だけを残していた
「あ、あの…」
「怪我は?」
「わ、私は大丈夫です!それより皆が!」
飛び出すように女の子は倒れている四人に回復魔法をかけていた
四人をこのままにするのも可哀想なので、道端の芝の上に寝かした
「あ、あの…助けて下さってありがとう御座いました!」
女の子は深く頭を下げ礼を言ってきた
「無事なら良い、起きるまで俺も一緒に居よう」
「ありがとう御座います」
誰か起きるまで待っていると四人はほぼ同じタイミングで目を覚ました
「……それじゃ」
女の子達に背を向けて街の方に向かって歩いて行った