再戦と再会
お待たせ致しました。<(_ _)>
10話目ですどうぞご覧ください。
「………………」
ナタリアさんは何が起きたのか分からない顔をして、俺、そして彼女の背後に落ちた剣を見ていた。
怪我させないようにはしたが、念のために彼女の手や腕を見た。
ふと我に返ったナタリアさんは素早く剣を広い、俺の目を見てきた。
「あの!もう一度お願い出来ますか!?」
ナタリアさんの頼みを聞きチラリとガルシアさんを見たら「好きにしろ」と言わんように手をヒラヒラさせていた。
「では……お願いします」
今度は居合いの構えでは無く刀を抜き、正眼から少しずらした位置に置き右足を半歩後ろに下げて構えた。
「ありがとうございます。」
ナタリアさんはさっきと同じように構えていた。
「…………」
「…………」
ナタリアさんはさっきの一戦で起きたことを警戒しているみたいで、ジリジリとゆっくり間合いを詰めてきていた。
周りに居た他の騎士達は自らの訓練を中断し俺達の試合を見ていた。
「…………はぁ!」
間合いのギリギリ外から一般的には驚異的な速さで斬り掛かってきたが、軽く刀をナタリアさんの剣に添え、身体の重心を移動させて俺の後ろに受け流した。
「……くっ!」
ナタリアさんはバランスを崩していたが身体を捻り素早く立て直し再び俺の間合いの外に離脱した。
「先ほども感じましたが……強いですね」
「ありがとうございます。では……次はこちらから……っ!」
母さんから習っていた素早く相手の間合いを制圧する業、縮地を使い構えたままいたナタリアさんの剣を再び打ち払い、後ろに飛ばし肩口に刀の刃を当てる寸前で止めた。
「…………え?」
ナタリアさんは再び何が起きたのか分からない顔をしていたが、自分が負けた事を悟ったのか両手を挙げて降参の意思を示してきた。
「……ありがとうございました」
刀を肩口から引き鞘にゆっくり納めた。
「全く見えませんでした……気が付いたら剣が飛ばされ刃を向けられてました……」
ナタリアさんは剣を拾い自身の鞘に納めさっきの一戦を振り返っていた。
「わははは!見事に負けたな?」
ガルシアさんは豪快に笑いながら近づきナタリアさんの頭をグリグリ撫でていた。
「ちょっ!団長!子供扱いは止めて下さいと何度も───」
「どうだ?自分よりも年下の奴に負けた気分は?」
ナタリアさんの言葉を遮り、からかうような雰囲気を消し真面目な顔で質問していた。
「…………悔しい……です。それに、自分の強さに慢心していました……」
強く手を握り本当に悔しそうにしていた。
「……それが分かりゃ上出来だ」
撫でる手を止めずガルシアさんは俺に目を向けた。
「ありがとうな、コイツと手合わせしてくれてよ」
されるがままのナタリアさんをチラリとみながらガルシアさんを見た
「いえ、俺も楽しかったので」
「そう言ってくれるとありがたいぜ」
ガルシアさんはそこまで言ってふと何かを思い出したようだった。
「忘れてたぜ、エルモンド君。」
「何ですか?」
「陛下が会いたいと言っていた。会ってくれるか?」
結構大事な事じゃ無いかな?と感じながら頷いて了解した。
修練場から謁見の間に行く案内をしてくれているのは、ガルシアさんでは無く緊張で顔を強張らせているナタリアさんだ。
「…………大丈夫ですか?」
「だ、だだ大丈夫です!」
駄目そうだった。
謁見の間に着くとナタリアさんの緊張はピークを超えたみたいで何か達観したような顔をしていた。
中に入り国王の前に行くとナタリアさんは膝を着き頭を下げた。
「ドラグニア王国騎士団団長、ガルシア・ランティエスに代わり、副団長ナタリア・リューカスがエルモンド・デュレイン殿をお連れ致しました!」
「うむ、ナタリアよ案内ご苦労であった。下がって良い」
「はっ!」
ナタリアさんが部屋から出てすぐ外が騒がしくなった。
『副団長が倒れたぞ!?』
『緊張の糸が切れたんだ!』
『早く副団長を医務室に!!』
バタバタと騒がしい音を聞きながら国王は苦笑いを浮かべていたが、その顔は孫を見るような優しい目つきをしていた。
「ナタリアもあの上がり症が治れば良いのだがのう……」
国王の言葉に俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「国王陛下、本日はどのような御用でしょうか?」
「うむ、先ずは改めて自己紹介をしようか。……儂の名前はテレジア・ハング・ドラグニアだ。昨日会った妻はアレインと言う。」
名前を聞いた時サリウスさんから教えて貰ったのを思い出した。
「サリウスから聞いているだろう?儂達もアレクシアに世話になったのだ。返しきれなかった恩……息子であり弟子であり剣聖の継承者の君に返したい。受け入れてくれるか?」
「……気持ちは有難いですが……今の私には受け取れません……」
俺の言葉に周りに居た大臣やら騎士達が驚いた様子だった。
「ふむ……理由を聞かせてくれるか?」
国王は余り驚いて居なくて笑みを浮かべながら聞いてきた。
「私は師匠、母の力に遠く及びません。ですが、私が母を超える剣聖に成るとき……その時には必ず」
「そうか……なら、その時を待つとしよう」
その言葉に周りの空気が和み俺も一息ついた時、俺が入ってきた扉では無く玉座の左後ろにある扉が開いた。
「お父様、只今帰りました。あ、会談中でしたか……申し訳ありません。」
「良い、レイ紹介しよう。彼はエルモンド・デュレイン殿。アレクシア・デュレインの息子で剣聖の継承者だ」
「あ、失礼しました。私はレイ・ハング・ドラグニアと申し、ま……す……?」
俺の顔をじっと見つめてきたレイは自己紹介しながら首をかしげた。
「久しぶりですね」
「え、あ、はい!先日は有難うございました!」
俺とレイ、二日ぶりの再会となった─────
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