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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

200文字話集『羽生河四ノ五』

作者: 羽生河四ノ

200文字五作目です。

羽生河四ノ五



収録


01.リアル鬼ごっこ


02.インビジブルマンオブラマンチャ


03.コタツ≒タコス


04.マッシュなルームにしてくれ


05.完成の法則


06.ミラクルピラルク


07.殺人木


08.童貞を殺す服を着ている人を殺す童貞


09.目がとれる


10.mk193












01.リアル鬼ごっこ


 「鬼ごっこするものこの指とまれ」

 棚橋がそういって指を天に伸ばしたので、僕は急いでそこまで走っていって、その指を掴んだ。

 「お、北田、やるのか」

 「やる」

 「じゃあ、お前どっちやる?」

 「僕は赤がいいな」

 「分かったじゃあ行くぞ」

 棚橋はそういうと裏山に向かったので僕もその後に続いた。

 数分後、その山の中腹にある邪悪な祠で、心も体も鬼となった僕と棚橋は、そのまま山を降りて近隣の町を襲った。女は食べて、男は殺した。






02.インビジブルマンオブラマンチャ


 「まだなの」

 電話の彼女の声にはイラつきがあった。

 「いやごめん、見つからない」

 僕は焦っていた。

 「ドンキにいるって言ってるじゃん!」

 「ドンキがねんだ!」

 彼女はドンキにいるという。でもドンキが無かった。いくら探しても無かった。

 「あ、ちょっと反対車線側に渡んなさい」

 「え?」

 「いいから」

 反対車線側に渡ると確かにドンキがあった。

 「あった!」

 ガソリンスタンドに隠れていたのだ。

 近すぎると見えないこともあるんだな。





03.コタツ≒タコス


 私がキッチンで家計簿をつけていると、炬燵の部屋からがさがさという音がした。

 行ってみると、そこには息子の隆がいた。

 「見つかった」

 隆がばつが悪そうな顔をして炬燵でタコスを食べていた。

 「ふ、普通みかんなんじゃないの?」

 私が聞くと、

 「だって、こたつとタコスって似てるじゃん」

 隆は口をもぐもぐさせながら言った。

 私は隆の事を抱きしめた。

 「な、なに」

 「私も昔そう思ってやったの!」

 私は叫んだ。

 親子なんだなと思った。






04.マッシュなルームにしてくれ


 同じクラスの飛田勝次の夏休みの自由研究に私は度肝を抜かれた。

 それは、小さな家の模型に所狭しときのこが生えている得体のしれない物体だった。

 彼はそれを教壇に乗せて『マッシュルーム』と紹介した。

 女子達はそのビジュアルを見て泣き出し、男子達も青ざめて気持ち悪がっていた。

 しかし、私は感動していた。飛田勝次の才能の凄さに憧れを抱いていた。

 だから自分の作った何の工夫も無い千羽鶴なんか、即捨ててしまいたくなった。






05.完成の法則


 慣性の法則というのがある。

 詳しくは知らない。

 ただ私がそれを最初に聞いた時、慣性ではなくて、完成だと思った。

 完成の法則。

 完成の法則というのは、まあ想像だけど、某かの連載を続ければ続けるほど、結末からは遠ざかっていくという法則だ。書き手はもうやめてもいいと思っているのに、消費者がもっとと望むので、やめることが出来ないのだ。

 そういう法則だ。

 うん。

 学生時代の私はずっとこんな事を考えていた。

 今も考えている。






06.ミラクルピラルク


 ペットショップに行くと『ミラクルピラルク』という幼魚が売っていた。

 ピラルクって?って思ったが、好奇心で私はその幼魚を購入した。

 家に帰ってピラルクを水槽に入れてから、ネットでピラルクの事を調べると、でかくなります。と書いていた。

 ピラルクは世界最大の淡水魚らしい。

 実際、水槽のピラルクは徐々に大きくなり、本当に大きくなり、やがて手足が生えてきて、体は人間の体つきになった。

 そしてある日、水槽から出てきた。






07.殺人木


 そこには『殺人木』と渾名された木が立っていた。

 そこは自殺の名所だった。

 自殺をしたくて、その地を訪れた人は決まってその木で首を吊るのだそうだ。

 そして噂は更なる噂を呼び、その木に対する自殺者のイメージはどんどん向上して行った。

 富士の樹海や、東尋坊みたいに。

 しかし、私がそこに自殺をしに行って、実際にその木を見てみるとなんか噂のイメージと違った。

 「これは・・・」

 なんか、カー●ィの一面のボスみたいな・・・。






08.童貞を殺す服を着ている人を殺す童貞


 「何をする!」

 私は捕まっていた。手足も縛られていた。そこは廃工場だった。

 「うるせえ!」

 私を捕まえた男は叫んだ。

 「私が何をした!」

 私は言った。

 「黙れ!天誅!」

 そう言うと男は私の着ていた服を引き裂いた。

 「きゃああ」

 「黙ってろ!」

 男は言った。

 犯される。私がそう思って、頭の中で走馬灯を走らせていると、

 「これを着ろ」

 そう言って男は私にジャージを投げてよこした。

 「は?」

 「来たら出て行け」

 男は顔を赤らめていた。






09.目がとれる


 朝起きると目が取れていた。枕元に転がっていた。

 「わああ」

 僕は驚いて、その目を掴んだ。

 しかしそこで気がついた。

 「あれ?目見える」

 転がっていた目はスーパーボールみたくよく弾んだ。

 次の日の朝も、転がっていた。

 でも、やはり目は見えた。

 「産んでいるのか?」

 鶏みたいに?

 え?

 鶏なの?

 病気なの?

 僕は不安になった。

 でも、その後も目は取れ続けた。

 だから僕はそれを袋に詰て、ヴィレヴァンで売ってくれるように頼みにいった。






10.mk193


 合コンで隣の男性が、私を見た瞬間、小声で「mk193だ」と言った。

 それがすごく小声だったので、私は咄嗟に聞かなかったフリをしたが、でも気になった。

 mk193って何だろう?

 ネットスラング的なもの?

 私は思った。

 その後、二次会の誘いを断って帰っている時ふと、

 「あ、負け戦って意味だ」

 と気がついた。

 あの人は私の事を見て負け戦だと思ったという事だったんだ。

 「・・・」

 悪い気はしなかった。

 いや、

 むしろ、にやけた。






※ちなみにタイトル、並びに空白は文字数には含みません。

ピラクルではなく、ピラルクだそうです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 四様は頭良いですね。哲学者の詩人だと思います。こんな不可思議なものを作りだせること、各200文字に纏まっていることが凄いと思いました。 ミステリーの暗号文のようにミステリアスで、箇条書き…
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