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第八章 西園寺千景

 すごく暖かく心地よい温もりがしている。気づいたのはほんのちょっと前だ。姉ちゃんの真空飛び膝蹴りを食らったところで俺の記憶は真っ白になっちまった。

 そんで今は、柔らかくあたたかく心地よい芳香と温もりに包まれている。とてもいい感じだ。

 俺は瞼を開くことにした。自分がいったいどこにいるのかを確認したくなったのだ。


 ゆっくり目を開けると、目の前には薄茶肌色の突起のある、肌色の饅頭のようなものがあった。目はピントが多少あっていない感じだ。俺はとりあえず、それをむんずと掴んだ。それは柔らかくいい感じだった。マサの爺ちゃんのところの花子の乳でもこうはいかない。

「ケンちゃん、やっと起きたね」

 見知らぬ女の声だ、いや、最近聞いたな。この小悪魔っぽい悪戯な感じの声は。なんて言ったっけ、あの茶髪のショートでフリフリ、ふわふわの官能的な香りの女は。手下は確かカメとゴミだったかな。名前は確か、西なんとかと言ったかな。

西園寺千景さいおんじ ちかげだよ、ケンちゃん」

 そ、そうだ。西園寺千景だ。チカと呼べと言ってたな。

「西園寺千景、チカ!」

 俺は意識が急にハッキリし、おそらく昨日の光景のようなものが脳裏に浮かび上がったので、状態を起こした。

 目の前には、チカがいた。だが、すっぽんぽんである。俺の右手が掴んでいるのは、チカの左乳。手を離せばいいが気が動転して、手を開けない。金縛り状態だ。チカは堂々としたもので秘部ですら隠そうともしないでいる。流石にマユや鈴葉とは違い見慣れない他人なので一気に下腹部に血流が走り柱が固くなるのを覚えた。

「ヤーン、もうケンちゃん凄すぎ」

 俺は、金縛りを無理やりに解き、ベットから転げるように落ち、服を探すがどこにもない。とりあえず、ソファーおいてあったクッションをとっては前を隠した。

「き、キミは一体何をしてるんだ」

「何って、気絶したケンちゃんの介抱だよ」

「別に裸になる必要ないだろう」

「でも、心地よかったでしょ。あたしね増幅師能力も少し持ってるの。裸になったのは力が弱いから効果を高めるためよ。ちゃんと意味はあるのよ」

「ああ、表面積を広くしてってことか、エネルギー伝達効果を高めるってやつか」

「おお、意外と頭いいね。正解よ。あ、でもこれ失礼か。ケンちゃん、転入してくると成績優秀者にはいっちゃうものね」

「なんだそれ」

「うちの学校、ケンちゃんの学校の普通科より、若干レベル落ちるから。じゃあ、あたしは優等生の彼女にもなれるんだね」

 昨晩から俺はこのチカがまったく掴めなかった。そもそも面識がまったく無いのにこの異様ななれなれしさ。まあ、なれなれしい奴の典型って感じはするがな。俺に取り入ってなんか得することでもあるのか?

 うちはまあ田舎の名家なのかもしらんが、俺はただの次男だぜ。兄貴は今あんな状態だが死んではいねえ。きっと良くなるさ。沙希姉の一族の医療部門も懸命にやってくれてんだ。俺が兄貴に代わることなどないのさ。まったく読めねえ、このお嬢様は。

「でも、なんで俺にヒーリングとかしてくれちゃうんだ。その辺にでも寝かしておけば別に普通に起きれるぜ、姉ちゃんにKOされるなんざあ日常茶飯事なんだがな。おまけに夏休みで学校もねえわけだし」

「それはちょっと情報不足だったけど、ケンちゃんはあたしたちのリーダーになる大事な人だからね。それとメンバーの力も知らせておこうって思ったのよ」

「ちょっと待ってくれ。俺が君らのリーダーってところが良く見えないんだが、黄泉戻師って、少人数で行動するんじゃなかったっけ。昨晩は、お前ら以外にも若けやつらがいたたようだが」

「都会はね。自然の多い田舎とは違うんだよ。ビル風とかヒートアイランド現象とかあるでしょ。あれが淀みの増大、拡散に悪影響を及ぼしているのよ。田舎は範囲が広くても風の流れを読みやすいけど、人工物が多い都会じゃ大人数で対応しないと収められないこともあるのよ。そういう時、皆をまとめるリーダーが必要なのよ。

 強力な淀みを浄化する場合は、今までみたいに力を一点に集めて開放とか、そういうやり方じゃだめなのよ。変化する状況に合わせて陣形を取ったり、淀み溜まりを防止したり、その都度、戦略を立てて迅速に対処しなくちゃいけないの。わたしたちのご先祖様もそうやって戦ったって聞いてるわよ」

「戦う、人間でもない相手にか?」

 チカは急にキョトンとする。

「あれー、十六夜いざよさん、きちんと話してないの?

 淀みの存在はもはやあたし達、黄泉戻師の一族や政府機関の一部のみが知る存在ではないのよ。一族には不心な者もいるし、常に歴史の影で反目している連中がいてね、いろいろと事件を起こしているのよ。

 まあ、彼らに言わせると、それが淀みの均衡を保ち、生態系を自然な形で保つ方法なんだとか言ってるけどね。罪もない人の命を無理やり奪ったりして、それはないんじゃないかな」

「つまり俺達が対峙するのは淀みだけにとどまらず、淀みを悪用する連中も対象にあるってことなのか」

「ご名答!」

「それって危なくねえのか。相手が人なら飛び道具持っていることだってあるだろう。とにかく物理攻撃がしかけられる連中なんだぜ」

「十六夜さんの周辺に護衛の特殊部隊とかいたの見たことあるでしょ。そういうのは彼らが対処してくれるの。あたしらはどちらかと言うと術者というか、あたしたちと同等の能力を持っている人たちとの戦いかな」

「だから俺らは武道の奨励がされているってか」

「そうそう」

「そうそうって、嬉しそうに言うこちゃねえだろう。し、死ぬ事だってあるんだぞ。婆ちゃんは、それで亡くなって、兄貴はああいう状態で・・・・、チカは怖くないのか?」

「怖いよ。とても怖い。あたし、お姉ちゃん、いたけど。裕次郎さんが人間結界となったあの作戦の時参加してて、精気を根こそぎ奪われて亡くなったの。まだ二十歳だった。彼氏もいたし、結婚の約束もしてたの。なのに、あっけなく死んじゃった

 でも、あそこで、お姉ちゃんや、愛女さん、裕次郎さん達、黄泉戻師のみなが止めてくれたから、関東の町は惨事を免れたの。お姉ちゃんは、あまり強い黄泉戻師じゃなかったけど、当時、病気がちで体の弱かったあたしを救いたいと言って、出て行ったのよ。

 邪気の強い淀みが拡散すれば、小さな子供やお年寄り、病弱な人は真っ先に命を奪われるからね」

「そ、そうなのか。キミもキミの家族も大変な役割を負ってるんだね。俺はつい最近知った新参者で返す言葉もないよ」

「それは気にしなくていいよ。ケンちゃんも仲間になったんだから。お姉ちゃんのことは辛いけど、お姉ちゃんは明るくて常前向きでさ、面倒見の良いリーダーだったって聞いててね。あたしも同じに頑張ってきたんだけど、あたしはリーダー向きじゃないの。だからケンちゃんに期待してるの」

 まさかこの娘は、俺が来ることでリーダーを降ろされたのか。そういえば昨晩の仲間との態度、一番偉そうな感じがあったものな。仕切っているって感じがあった。それで俺に気を使って、・・・・ねえじゃねーか。俺の腕折ろうとしやがってたし。

「あたしのことは気にしなくていいよ。めちゃくちゃに出来る彼女だと思って、抱くなり、舐め回すなり好きにしていいよ」

「なんてこと言うんだ。キミは。とにかく服を着ろ、いや着てくれ。これ以上ムスコを硬直させられると貧血起こて、倒れちまいそうだ」

「ケンちゃん面白い」と、チカはくすっと笑い、枕元からスマホを取り出すと何かを打ち込んで操作をした。すると壁に向こう側で人が手押しテーブルのようなものを押して移動する音がして、部屋の前で止まり、「千景お嬢様、お召し物をお持ちしました」と

言っている。

 チカが「巴さん、入って」と言い、入って来たメイド服の女を見れば前御巴まえみ ともえだった。

「前御お前!」

「あら健児さん、いえ木村一尉、お久しぶりです」

 前御は姿勢正しく、ぴしっと敬礼をする。メイド服でそれをされると燃え系漫画のようであるが、意外と前御はきちんと着こなしており、派手な服よりも栄える感じもして、いい感じがした。ま、ムスコは全く刺激を受けていないがな。

「お久しぶりって、お前、黄泉付きじゃなかったのかよ」

「まあ、あれから色々とあったのですが、本来、私は木村一尉付きですので、九月からこちらのお屋敷に住まわれるという通達が出ておりましたので、木村一尉が着任される前よりこちらで働かせていただいております次第です」

「ここって、チカの家なのか?」

「うん、そうだよ。昨日、話したじゃない。ケンちゃんはあたしと同居するって」

 チカの家で生活って冗談じゃなかったのか。俺はてっきり姉貴のゴージャスな六本木のマンションでセレブな都会の生活をおくり、鉄の愛馬を駆って、アーバンカウボーイライフをおくれるとほくそ笑んでいたのに。

「あー、ケンちゃん。今、とんでもないこと考えてた。もう、チカと一緒に生活するのがそんなに嫌なの?」

「お前、テレパシーでも使えるのか!」

「これは意外。ケンちゃん、螺旋導を敗れるのに、気読みが出来ないの?」

 気読み、黄泉戻師になったときにもらった薄い入門書に書いてあったような。

「あ、その顔。勉強してない顔だ。十六夜さんも、手を焼くわけね。ケンちゃん、頭悪いわけじゃないのにこういうのはわりと勤勉じゃないのよね。保健体育の教科書だと思って読まなきゃダメでしょ」

 なんだコイツ。俺のプライベート情報をくまなく知ってやがる。昨晩もカメやゴミ、美香まで俺のこと知りまくってたなあ。

「くそう、黄泉、十六夜だな俺の個人情報を漏らしやがったのは、なんちゅうことしてくれるんだよ」

「えー、コホン。健児さまのプライベート情報を周知させたのは私でございます。ステルススーツの実用も兼ねて、健児さまのプライベートを監視しておりますので。

 私は防衛省の人間であると共に、本家である比良坂家より、健児さまのお目付け役としての命も受けておりますので、貴方様の情報はお仕事を共にされる方々には通知させていただいておるのです」

 なんてこった。じゃあ隠してもしょうがねーのか。まったく。

「だから隠しもしょうがない、しょうがない」

「だから服来てくれよ。もろ見えじゃないかよ」

 この娘はいつの間に横に座ってんだよ。年頃の女が何をしてんだよ。

「もろ見えって、見たくないなら目をつぶればいいのにね。事故だということでしっかり見ておきたいのでしょう。もう、ケンちゃんのえっち。なんてね」

 チカは巴から服を受け取りようやく着衣を始めた。なぜだか、パンツは残して上からつけてやがる。

 くうー。なんだよこの娘は。まあ、好かれるのは嫌な気はしないが、流石に澪はここまではないからなあ。

「あー、また私にやなこと考えてたでしょ」

「考えてないよ。キミに圧倒されているだけだよ」

「いいえ、考えていたわ。白鳥のエグレぶすのことを」

「エグレなんだって。白鳥ってなんだ。誰のことなんだ」

「あー、ケンちゃんごまかした」

 チカはパンツとスカートを履き残して、俺の左頬を人差し指で突いた。

「ひどいなあ。弓道日本一の田舎娘のことよ。自称、ケンちゃんの恋人でしょ」

「ああ、白鳥って、藤崎。澪のことか」

 そういえば、あいつ最初は白鳥だったよな。超お嬢様な、今思えば懐かしいな。ほんの一ヶ月ちょっと前のことなのに随分昔に感じるよ。

「なんで澪のこと知ってんだ」

「中学の時、同じ学校の同級生だったのよ」

「そういえばあいつ二十三区にいたって、言ってたなあ」

「で、あたしもケンちゃんのお嫁さん候補にしてもらおうかと思ったけど、あたしのお婿さん候補にした方が手っ取り早いかなって」

「ちょっと待ってくれよ。話がまったく見えないよ。キミとは昨日会ったばかり何だぜ。俺の記憶は戻ったはずなんだ。キミとは過去に会った覚えはないんだが。いくらヒーリング効果を高めるためたって、見ず知らずの男と裸で抱き合うってあり得なさすぎだろう」


 チカはベットに腰かけ右手で目を抑えて、ふうっとため息を漏らした。相変わらず、下はすっぽんぽんのままだ。ブラウス裾がよれてちらちら足の付け根のデルタ地帯が見えて気になるのだが。こいつわざとやってるな。ガン見する俺も俺だが。マサの秘蔵映像学習によって開発された俺の習慣癖が、俺の瞼を閉じようとさせないのだ。(ただの言い訳)

「あのねー、ケンちゃん。あたしら、あと数年で成人で、来年は選挙権もあるんだよ。若者はじっくり考えて行動するいとまもないんだよ」

「それは単にキミの私見だろう。そこまで、時間が無いことなんてないさ。お互いをよく知り合って、まずはお友達からってのが一般的だろ」

 チカは右人差し指を立てて、左右に振り、甘いぞと言わんばかりに話を切り出した。

「今時、そんな付き合い方、中学生だってしないわよ。まあ、白鳥のお嬢様ならやりそうだけど。あの娘、自分が持てるオンナを最大限に使ってるでしょ。胸は小ぶりだけど、それなりにあるように見せて色気振りまいて好感度が高くて、洋服も和服も卒なく着こなすし、勉強も家事もスポーツも武道も畑仕事だって何でも出来ちゃうんだもの、ずるいわよ」

「澪が憎いのか?」

「別に憎くなんかないわ、だってあたし達、大の親友だったのですもの」

「親友だったのか」

「ええ、そうよ。ごく普通の普段着で、渋谷原宿に出かけて、一緒にお買い物したり、スイーツを食べたりしてね。

 夏は浴衣を来てクラスの友達と一緒に隅田川花火大会に行って、途中で不良にナンパされて、あの子が一人で五人の男たちの関節外しちゃったりしてさすごかったわよ。今だったらあたしだって勝てるけど、当時は怖くて、漏らしちゃったくらいだもの」

 最近、昔の記憶がよみがえっている俺には、チカの話がリアルに分かる気がした。なんせ、澪は母ちゃんには薙刀と弓矢を、姉ちゃんからは合気道の手ほどき受けて、確か中一で段持ちだった筈なのだ。姉ちゃんに最近ちらっと聞いた話では、CQCにもたけけているとか。

 最近、よくバカやって締め落とされてるし、実はあいつが最強だったりするのかも。あいつの前ではうかつにM属性も見せられないよな。白鳥嬢の偽造イメージが強くて妄想していたが、本来あいつも体育会系だったということを知らされた。

 と、いうことは俺はどっちに転んでも強きオナゴ共にいたぶられる人生ってことなのか。

「でも、あたし負けないから。ケンちゃんの気持ちを奪ってあげるから。そういえば螺旋導を解いたご褒美上げるの忘れてたわ。このままベットで一発やってく!」

 チカはノーパンのままベットに横に寝そべり、手招きしながらカモンと挑発する。


「千景お嬢様、いい加減にしましょう。下で奥様と旦那様がお待ちでいらっしゃいます。早く、お召し物を着けて下へお越しくださいませ。健児さんのものもお荷物よりお出ししております」

 前御はそう言って、俺の服を渡してくれた。恩にきると言いたいところだがこいつは俺のデルタ地帯のジャングルを更地にしやがった奴だ。「すまない」と言うのが精一杯だった。

 廊下に出ると一見板張りのようだが、クラスの高い難燃材が使ってあるとの前御の説明があった。それは屋敷の構造でなんとなく分かる気がした。防弾ガラス戸越し中庭が見える構造で、旧日本建築っぽいのだが、どう見てもビルに相違なかった。もとは木造の屋敷だったらしいが、十年前に表向きはテロリストによる暴動のとばっちりを受けての放火による全焼を負っての改築なんだとか。

 表向きはというのがミソだ。実際は淀みに煽られた人々が理性のタガを飛ばし暴徒となったのだ。人間理性が吹っ飛ぶと、その溢れんばかりの知性と欲が仇となり、ただ狂わないのだ。

 俺が対峙した連中は、ほぼ本能的に敵意むき出しの暴徒だったが、淀みは煽る量を帰ると麻薬やドーピングのような効果も得られるらしい。もちろん、理性も知性も多く残したままで、体力や精神力など己の弱さを強めるなど、あたかも万能薬的に使えたりするらしいのだ。しかも、淀みの成分に毒素はほとんどない。それを見破れるのは黄泉戻師だけなのだ。

 だが、淀みに煽られた人間は、理性を残したまま強化された能力を使えていても、黄泉戻師のように抗体を持たない者はやがては淀みに取り込まれてしまう。最悪の場合、淀みに分解され淀みと化すと言われているがそれを目の当たりにした者は少ないという。

 黄泉戻師はそういった連中から淀みを狩り捕る仕事までも担っているのらしい。次期、俺が所属することとなる新宿支部は、チカやカメ、ゴミが主要幹部でもある割りと若者中心の構成だが、官庁街の日比谷だと三十代を中心に構成されていることもあるのだという。

 だが、黄泉戻師は年をとると能力が格段に落ちるため、四十くらいでほとんどが引退してしまうらしいのだ。俺が思った以上に黄泉戻師全体の組織はとてつもなく大きいのだなと思えた。(前御巴から今聞いたけど)



 エレベーターを降りると広いホールのようなところに出た。純和風かと思ったら和洋折衷の作りのようだ。きっとうちみたいに政界や財界の偉い人とかも来るのだろうな。


 柱時計を見ると朝の七時だとわかった。ちょっとしたカラクリ時計で昼と夜を太陽と月の絵が描かれた部品を切り替えて、午前と午後を表示するしくみとなっていた。

 そうなると行く場所は、おそらく食堂というか朝食の間であることは、だいたい察しがついた。


 不意に、先頭を歩いていた千景が立ち止まり、上体を屈めた。カチューシャを落したらしく、それを拾っていたのだが。でも、どうやって落ちるのだか。落ちる前に屈んだようにも見えたのだが。


 目の前にピンク色のアワビがお目見えした。


「お嬢様、お下着をお履きになってください」


 チカはこちらを向きテヘ、っと舌を出して愛想を振りまくと、スカートのポケットからパンツを取り出して履いた。


 どうしようもねーな。この娘は、前向きに明るいとかじゃねーよ。どうする俺。まずはこいつの親父とやらに会って話をするしかないようだな。

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