赤ん坊に転生したら、殺されかけたけどショタ兄に助けられました。
「この子は誰の子だ…!?」
この世界で一番はじめに見たのは、キラキライケメンのお父様のお顔だった。
目が覚めた時、見たことのない天井が広がっていて首を傾げたかったけど、うまく動かせなかった。
喋ろうにも、「きゃあきゃあ」か「ぎゃー」しか言えなくて、ますます首を捻った。
そして、自分の手を掲げてみたら、小さなおててしか見えなくて、そこで状況が掴めたのはかなり優秀だったのでは?と思う。
こりゃ、赤ん坊に転生しとるがな。
ええ〜、私どうやって死んだんだっけ。
それどころか前世のこと、全然覚えてないなぁ。
でも、ここが元いた世界じゃないことはわかる。
…なんか、不思議体験だなぁ。
ぼんやりそんなことを思いながら、手をグッパーしていると、周りが騒がしいことに気づいた。
「…カトリーヌが亡くなっただと?」
「は、はいっ、ご息女がお生まれになった際に…」
「それで、娘は?」
「こ、こちらにございますっ!」
いい声の人が近づいてくるなぁ〜と思っていたら、ベビーベッドを覗き込まれた。
ふぁっ!
私好みのイケメンがいる!
キラキラぴかぴかじゃないかっ!
さらさらつやつやだ!
銀髪だ!
青い目だ〜!
漫画みたいな、目の色だー!
あれ、なんかボキャブラリーが少ないっていうか、言葉を使いこなせていない感じがする…。
赤ちゃんになったから、そっち基準になったとか?
ぴかぴかのイケメンは私を見るなり、顔を歪めた。
美形の険しい顔は迫力があった。
これ、私じゃない赤ん坊なら泣いているのでは…?
それにしても、その顔でもかっこいいのはずるいなぁ〜。
いいなあ、目の保養だ〜。
「貴様、誰の子だ…?」
地を這うようなドスの利いた声に、私じゃなくて周りがビクッとしたのがわかった。
あれ、なんかまずい空気がする…。
それに、はじめましてでそれはいかがなものです…?
私、返事できませんし。
あなたの子じゃないんですか?
「黒髪に、緑の瞳…、私どころかカトリーヌの色も引き継いでいないようだが?」
イケメンは、真相を述べよと周りに圧をかけた。
おおぉ、お怒りだ。
「それが…、旦那様のお子ではないようで…」
「どういうことだ?」
「奥様…、カトリーヌ様が、旦那様が仕事ばかりで構ってくれないから、逆襲だと申して、その…余所で妊娠されてきたようで…」
ふぁっ!?
マンマ、それはまずいのではっ!?
え、てか、カトリーヌさんがママなら、さっき亡くなったって言っていたよね…?
それで、旦那様って呼ばれているこのイケメンさんが、パパだけどパパじゃないなら、私の立場、大変まずいのではないか…?
どこかの知らない男のこども、育ててもらえないんじゃない!?
えっ、生まれたてでピンチ!?
「…一族の恥だな、この娘も始末するか」
ああああ、生まれた瞬間人生終わった!!!
「今なら、母子ともに助からなかったことにできるだろう」
…ええぇ、怖え。
赤ん坊が何も聞こえていないと思ったら、大間違いだぞ。
そんなことになったら、意地でも化けて出てやるからな。
こちとら、生まれたばっかりだというのに!
「父上、赤ちゃんが生まれたとは本当ですか?」
あどけない声がして、部屋の空気が少し変わった。
「ミハエル…、いや、この娘はな」
「妹だったのですか?」
そうして足音が近づいてくると、少年がこちらを覗き込んだ。
こてんと首を傾げる仕草は、最上級に可愛かった。
うおおお、イケメンのミニチュアだ!!!
かわいい、キュート、パパ似ですね!?
目を丸くして私を見ているのが、またなんとも可愛らしい!
お兄ちゃん、なのかな?
たしかに、パパと同じ銀髪に青い瞳だ。
ああ…、死ぬ前にイケメンが拝めてよかった。
この人生、せめてそこだけはよかったな。
よくないけど。
少年が手を伸ばしてきたので、私はその人差し指を握った。
ほら、赤ちゃんがよくやる感動的なやつ。
これで、私のこと気に入ってくれたりしないかなぁ。
あれ、そういえば、生まれてからそんなに時間が経ってないはずなのに、私しっかり目が見えているな。
なんかのチート?
目をパチパチして私の手を見ている少年に、今できる最大限で微笑みかけておいた。
ついでに、「お兄」と呼んでみた。
「にゃあ」
どうせ殺されるなら、最後くらい媚を売っておこうと思ったら、思いの外効果があった。
「父上、この子すっごく可愛いですね…!僕の手を掴んでいますよ!」
キラキラお目目をさらに輝かせて、少年は嬉しそうに声を弾ませた。
おうおう、喜んでくれるなら赤ん坊冥利に尽きるってやつだな。
お兄さん、お父さんと違って、怖くないねえ。
ほっこりした気持ちにさせてくれてありがとうねぇ〜。
この部屋、殺伐としてんのよ。
空気が一掃されて、ほかほかになったぜサンキュー。
「僕、抱っこしてみたいです!」
「…ああ、それは首がすわってからの方がいい」
「それって、いつですか?」
「3、4ヶ月先だな」
「じゃあ、その時が来たら僕が一番に抱っこしてもいいですか?」
「…ああ、ミハエルはいいお兄さんになりそうだな」
おおおぉっ!?
今、3、4ヶ月って聞こえましたよね!?
えっ、死亡フラグ折った?
お兄ちゃんのおかげで、命拾いしたか…!?
まじかよ、天使かよ、ありがとうミハエルお兄ちゃん!!!!
「…ミハエルは、妹ができて嬉しいか?」
「僕、兄弟ができたら、もっとお父様と一緒にいられなくなるかなって思っていたので、本当は生まれてきてほしくなかったです…」
そう言って、ショタイケメンがしょんぼりした。
私は思わず、手を離しそうになった。
ええっ、ちょ、フラグ継続!?
鶴の一声で生き延びると思ったら、同じく兄貴の一声で死ぬんか…!?
うええええん、ママ〜〜〜!!!
あ…、ママいないんだった。
「でも、妹がこんなに可愛いなんて知りませんでした。僕、この子のお兄ちゃんになりたいですっ!」
無邪気可愛いかよ〜〜〜〜〜!!!!
ショタコン趣味は、前世になかったはずだけど、今はありがとうでしかない!
ありがとう、少年っ!!!!
「そうか…、まあ、たしかに可愛くはあるものな…」
イケメン男性は、ふう、と息をつくと腹を括ったように頷いた。
「では、この子はキアナと名付けよう。我がウィティッグ公爵家の娘としてしっかり迎えることにしようか」
そう言って、キラキラ公爵様は不器用に私の頭を撫でた。
パパに触ってもらえた…。
わあ、結構、かなり、すごく、嬉しいかもしれない。
というか、生きていていいみたいっ!
命拾いしたってこと〜!?
うわーんお兄様〜〜〜、一生感謝します…!
キアナは、お兄様のために生きますよっ!
公爵令嬢みたいだし、家のために嫁げば恩返しになるかしらね!?
「キアナ…!可愛い名前ですね!キアナ、わかる?父上が素敵な名前をつけてくれたよ」
はい、聞こえていますミハエルお兄様!
キアナは、すでにブラコンになりそうです!
なんとか出せる「きゃははっ」という声を出すと、お兄様も同じように笑った。
「キアナ、可愛いねえ」
いいえ、可愛いのはお兄様ですっ!
「…うちの子は、可愛いな」
ボソッと呟く声が聞こえたのと同時に、屋敷中の人間の生きた心地を感じた気がした。
あ、パパはミハエルお兄様に甘い感じですね?
こりゃあ、お兄様に媚を売りながら、生き延びていく作戦にしよう…!
そして、お父様に殺されないように頑張ろう!
えいえいおー!
すでにフラグを折りまくっていたことに赤ん坊の私は気づかなかったが、最初のフラグを折ってひとまず一件落着となったのだった。
好みのイケメンパパに、可愛いお兄ちゃん、ばんざーい!
了
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(追記)誤字報告ありがとうございました!修正いたしました!(2026.4.10)




