親として、そして貴族として
その日、国王は私室へ秘密裏に呼び出したメダータ公爵を待っていた。
「陛下、お呼びと伺い参上いたしました」
部屋へと案内してきた侍従に続きメダータ公爵が入室し、簡易な挨拶をする。
「突然呼び出してすまないな、さぁこちらへ来て座ってくれ、あと公爵以外のもには下がってよい」
「かしこまりました、では御前失礼いたします」
そういって、使用人はすべて部屋から出て行った。
「陛下、お話とは娘のことですかな?」
「あぁ、王太子のスークが昨日私に非公式な面会を申し込んできた。 学園に入学するまであと一年たらずだ……この辺でメダータ公爵令嬢には婚約者候補を降りてもらう方が良いのではないかとな……」
「……王太子殿下は娘になにかご不満でも?」
不満そうな顔で言うメダータ公爵に国王は慌てて
「いや公爵! そうではないのだ! …………其方ならわかっておるだろう?」
国王の慌てる様子に可笑しくなった公爵は
「ふふ……申し訳ございません……我が娘以外の二人の令嬢を推薦したのはこのメダータでございますから当然理解しておりますよ? ただ、面と向かって不適格だと言われては少々意地の悪い事を言いたくなる父親としての気持ちもご理解いただきたいですなぁ」
そう言ってメダータ公爵はニヤリと笑う。
「まったく……私の心臓に良くない真似はよしてくれ……」
「申し訳ございませんな、まぁ冗談はともかくとして候補から外れることに否やはございません、元々そうなると思っておりましたから」
その言葉に複雑そうに国王は
「そうか……」
と複雑そうに呟く。
「わが娘には覚悟が足りませぬ……国のために生き、国のために命を投げ打つ覚悟が……そこそこの教育だけをこなせても王妃は勤まらぬと最初から思っておりましたゆえ、その覚悟を見せる令嬢二人を推薦したのです」
メダータ公爵の自分の娘に対する公私を分けた辛辣な評価に国王は少し驚いた。
「そうであったか……しかし名目はどうする?」
「破棄したとなると外聞が悪うございますので、留学のために辞退させていただきたく」
その言葉に国王は驚く。
「留学だと! 一体どこへ?」
「少し遠いのですが、アーマーゾ女帝国の女学院へ」
「なんと! ……あの女学院は確か外国籍の者は招待制であったな?」
アーマーゾ女帝国は文字通り、女帝が代々治めている帝国であった。
そこにあるアーマーゾ女学院の入学者は、当然帝国の貴族の女子のみである。
そこに毎年女帝が気まぐれに選んでいるといわれる外国籍の女性の招待枠が存在した。
その基準はいつも曖昧で、『女帝が気に入ったから』としか言えないような選考基準なのだが、卒業できれば一流のレディであるとして大変名誉な事であったので密かに貴族女性にとっては憧れの学院である。
「えぇ、御承知の通り女帝みずからご招待いただきましたので、学園に入って王太子殿下方とお互いに気まずい思いをさせるより良いかと」
「それもそうであるな……しかし大変名誉なことだ……うむ、招待を受けた国の国王としても鼻が高い! これまでの令嬢の献身に報いる為にも、入学準備のための資金や滞在費は勿論、移動にかかる人出や護衛などは王家の方から出す故に遠慮なく行ってくれ」
そういってハハハと笑う、その様子を見ながら
「ありがたき幸せ」
と、メダータ公爵は慇懃に頭を下げるのであった。
普通ならそのまま女帝国に取り込まれちゃうんじゃないの?と心配するべきなんでしょうけど、この国の人には他国の血がはいると『不混』の症状がランダムで出るために、貴族同士は婚姻をお互い避けるので国王は心配してません。
国王の常識の中には一生独身で過ごすという選択肢が存在しませんのでー。




