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とある物語の『悪役令嬢』になった転生者のおはなし  作者: 清水 流花


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3/11

それぞれの思惑

「さて……お父様の説得は上手くいったわ……これが上手くいったら『強制力』は存在しないか、ものすごく弱い制約なのでしょうね……これが確認できた事はとても大きいわ」


部屋へ戻ったメダータ公爵令嬢はソファへと腰かけお茶を持って来た侍女を下がらせて一人考える。


「次にやるべきことは……やはり目立たない事よね……ていうか今思うと、よくあるラノベの主人公って目立ちたくないとか言いながらメチャクチャ怪しい動きしたり思いっきり目立ってたわよね……地味に装うとか王子に近寄らないとか目立たないの意味を間違ってるとしか思えないわ……まぁ物語なんだから目立たないと話が進まないのでしょうけど、こっちは現実を生きてるんだから本気で断罪を避けるならきちんと考えなくてはね……ならばどうすべきかしら……」


深く考え込みながら用意された紅茶を一口。


「やはり印象を薄く保ちながら、悪目立ちしないように空気になりすぎない事……やはりラーイ公爵令嬢とヴァール侯爵令嬢に派手にやってもらうのが一番ね……でもやりすぎては駄目よ……あの二人なら100点の課題を150点や180点になるほどやってくれるはずだもの……105点くらいの力でやっていくくらいでいけるはず……うん、この方針でやっていきましょう」


未来に希望が見えてきたとメダータ公爵令嬢は思わず笑顔になるのであった。




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽




 とある日の王城の廊下を、妃教育を終えたメダータ公爵令嬢は帰路に就くために廊下を歩いていた。


「メダータ公爵令嬢、少しよろしいかしら?」


そう声をかけてきたのはヴァール侯爵令嬢であった。


「あら?どうかなさいまして?」


 本来であれば下位の侯爵令嬢から声をかけるのは無礼にあたるが、現在は王太子の婚約者候補ということで暫定的に同格として扱われる。

だが、いつもはまるで二人の公爵令嬢など居ないものかのように素通りしていくというのに今日はどうしたのだろうか?


「先ほどの授業ですけども」


「あぁ……とある領地の産業についてでございましたわね」


「えぇ……木材を主産業にしている領地についての講義でしたわ、その講義にでた領地はメダータ公爵家の派閥の方の領地のことでしたわよ?」


「あら?そうでしたの? わたくしてっきり架空の領地の話だとばかり……」


「そのくらい講義の内容を聞けば察するのは難しくないと思いますが?」


「それは失礼いたしました、ですが講師の質問には問題なく答えられたと思うのですが……」


「そういう話ではありませんわ、講師は貴女様に気を使ってわざわざメダータ公爵家の派閥の方の話をされた事に気づかないのかと言っているのです」


「それは……講義の後にお礼を言わなかったのが悪いと? しかしそういう気づかいをワザワザ口にするのは貴族令嬢として、はしたないのではないかしら?」


その言葉にカッとなったヴァール侯爵令嬢は


「なっ⁉ そんな事をいっているのではありませんわ! 忖度されるような成績しか残せないようなら早々に婚約者候補を辞退されたらどうなのですかと申し上げたいのです!」


その剣幕に少々驚きつつも


「まぁ……わたくし忖度されるほどひどい成績を取った覚えはございませんが……」


と言葉を返す。


「……確かに及第点は超えていらっしゃいますわね、しかし現状わたくしやラーイ公爵令嬢と同じレベルにあるとは到底言い難い現状なのはさすがにご理解いただけていると思ってました」


その言葉にため息をつきながら、メダータ公爵令嬢は答える。


「確かにお二人と比べられてはわたくしが見劣りするのは否めませんね……ですが、妃教育を受けてまだ半年足らず……この段階でわたくしが辞退を申し出たとしましょう、その結果どうなると思いますか?」


「それは……」


ヴァール侯爵令嬢はハッとする、その様子を見ながら小声で


「聡明なヴァール侯爵令嬢ならお判りでしょう? この婚約者候補は『王家』からの打診で結ばれたものですわ……それを半年足らずで辞めますなどと言えば王家の見る目が疑われてしまう……そんな王家の顔に泥をぬるような真似ができるわけがないと……確かにわたくしもお二人に比べたら非才に見えることは重々承知いたしておりますわ……ですが()()()()()()はきちんと時期を見定めてから穏便に済ませなくてはいけない事をご承知くださいませ」


「確かにその通りですわね……軽率な言動でしたわ……謝罪いたします」


メダータ公爵家の動きを理解したヴァール侯爵令嬢は、もはや敵にあらずとメダータ公爵令嬢に対する態度をやわらげた。


「ご理解いただけたようですわね、それではごきげんよう」


そう言い残して静かに廊下を去っていくメダータ公爵令嬢、その様子を見ながらひっそりと


「ならば敵はラーイ公爵令嬢一人に絞ればいいわね……王太子様の伴侶の座は絶対に渡さないわ……」


きつくこぶしを握り一人闘志を燃やすヴァール侯爵令嬢であった。

廊下でこんな会話してたら、メダータ公爵家の意向が王家に筒抜けですよねぇ。

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