明日もその笑顔がみたいと思うのです
「どうして面倒ごとの種になりそうな存在を他家の者に教えるような事をしたんだい?」
そう聞かれて、私は少し考えてしまいました。
別に親切心なんかではありませんでしたししいて言えば……
「黙っていたせいで国に変な影響がでて、万が一にでも我が家にまで波紋が広がって来られても困るから……でしょうかね? ここからでは何が起きてもすぐ帰りますとは言えませんから」
「なるほど、確かにその通りだね。 で?その手紙にはなんと?」
「庶子の令嬢は学園にて突如錯乱状態に陥りそのまま自宅療養していたそうですが、先日病死なさったそうですわ」
「へぇ? もっと早く死ぬかと思ってたけど案外遅かったね」
「背後関係があるのではないかと大分長い事聞き取り調査を受けていたようです」
「それはそれはご苦労様な事だよね……お花畑の自称ヒロインの思考回路に背後関係なんてないのにさ……」
「それは『向こう』を知っているものだから言える話ですから、何も知らない人が見たらどう考えても精神の病か間者を疑うしかないのでは?」
「間者にしてはお粗末すぎるでしょう!」
そう言いながら腹を抱えて笑ってらっしゃるこの方……アーマーゾ帝国の宰相を務める侯爵家の次男でいらっしゃいます。
実はこの方こそが宰相閣下をたきつけて女帝陛下に私を女学院に推薦するようにしてくださった恩人でもありました。
実はあの日……女帝陛下から届いた招待状の周りに描かれていた飾り模様……まさにそこに『日本語』で【助けがいるなら逃げておいで】と書かれていたのです。
その文章を見て、てっきり女帝陛下御本人が転生者なのかと思い留学を決めた私が少々浅はかだったなと今は反省してます、女帝陛下への面会の前に簡単な注意事項があるとご招待いただいた宰相閣下のご自宅でお会いしたのがこの方でした。
最初は大変驚きましたよ?
何かの罠ではないかと警戒もしておりましたが、この方は特になにか要求することもなく『いつでも困ったら相談に乗るから』とニコニコとおっしゃるだけでした。
女帝陛下との面会も無事終わり、特に取り込みを図られるような言動もされなかった事に正直上手く行き過ぎではないかと不安を覚えたものです。
ですが、学院での寮生活が始まるとあまりのレベルの高さに付いてゆくのだけで目一杯の日々が続いておりましたが、自らの公爵令嬢という立場が邪魔をして中々教師の方や、御学友達に素直に学習内容について聞くこともできずに悩んでおりました。
そんな日々を忙しく過ごしながら、女帝国内での後見人となってくださった(女帝陛下に丸投げされたとご本人が語ってくださいました)宰相閣下へと月に2度ほど定期報告へ通っているうちに、同じ転生者である次男様とも交流する機会が何度かございました。
その時に恥を忍んで、学院のレベルの高さについていくのがつらいと思わず本音をこぼしてしまったのです、見知らぬ土地で無意識に一人孤独を感じていたのかもしれません……元同郷の人だという甘えも出てしまったと今なら分かります、それでも嫌な顔一つせずに
「僕で良ければ力になるよ」
とにこやかにおっしゃっていただけてとても救われた気持ちになりました……我ながら単純だなぁと思いますね。
それからは、なんとか学院での生活も安定し心の余裕を持てるようになり現在は専門課程へと進んでおります、ここまでくると新しい生徒のため寮の部屋を明け渡さなくてはならず
「ならうちに住めばいいよ、ははう……宰相閣下もその方が安心できるって言ってたし」
と勧められ両親へも相談した結果、今現在宰相閣下のお屋敷にお世話になりながら日々研究と勉強の日々を過ごしております。
実は次男様と婚約の話も出てはいるのですが、『不混』の事もあり踏み切れずにおります……次男様は
「別に人生まだまだ長いんだし人生二度目なんだから急いで決断することもないんじゃない? やりたいことやんなよ」
とのんびり答えてくださってます、この価値観に何度も救われた思いをしているのですから当然惹かれていないわけはないのですけど……。
「今の研究が成功したら『不混』の原因もつかめそうだしちょっとづつやっていこうよ! 僕も手伝うからさっ」
ふふ と笑うその笑顔に今日もあぁ好きだな……と思うのです。
次男様の職業は研究施設の名誉長です、なので時間が自由になるためメダータ公爵令嬢が来る日は家でスタンバイ完了しております。
女性の立場が強い国なので、気が強い女性が多く転生者で同じ価値観を共有できるメダータ公爵令嬢がお気に入りです。




