鏡の小売店
掲載日:2025/10/26
『よこうそ』ヘンテコな看板を掲げる店。
僕はそこへ吸い込まれる様に入店した。
「いまっしゃいらせ」
何て?
レジの奥にいる店員は僕に向けて何かを言った。
聞き間違いだろうか。
僕は会釈を返した。
店内はよくあるコンビニと同じ配置で商品棚が並んでいる。
照明は裸電球で薄暗く、所々点滅している。
壁も天井も古びていて、埃っぽい匂いが立ち込めていた。
僕は商品棚を見る。
そこには怪しげな品が点々と置かれていた。
錆びついた丸い鏡が目に止まった。
名札には『やがのかたみ』と書いてあった。
三種の神器の八咫の鏡だろうか。
「それ、オでスメスす」
突然の声に驚く。
店員が笑顔でこれを推してきた。
もうニュアンスで理解した。
僕は他の商品も物色した。
『ドツゴンのラメ』
『カアルのエシ』
『たつのきぼ』
商品を見て思い浮かぶ名前に反して名札が意味不明すぎる。
僕は頭を掻きながら、『やがのかたみ』をレジに持ち込んだ。
「あまいとうござがりす」
何て?
「せでえんんす」
何て?
……レジの表示的に千円か。
僕はお金を払い店を出て購入した鏡を見る。
すると鏡の中の反転した僕がニヤリと笑った。
店を振り返ると看板が『EMOCLEW』に変わっていた。




