Act.1「転生」
「梨花を...私達の大事な娘を!君が守ると誓ったじゃないか!!」
「あなた!やめてください、あれは彰人さんのせいじゃない、通り魔のせいですよ!」
お義父さんに詰められているにも関わらず、何も考えられない、頭に入ってこない。
娘を失った行き場のない悲しみと憤りを僕にぶつけられている。八つ当たり…とも言えない。
仕方がないんだ。僕だってお義父さんの立場ならそうする。
「本当に......申し訳...ありません」
「──っ!!」
バキッと醜い音が響いた。僕の口から生ぬるいものが垂れてくる。
謝るのは逆効果だった。でも謝る以外に何もできなかった。
僕には何もできない。生き返らせることも、新たな体をあげることも、魂を鎧に定着させることも、何一つできない。
僕の恋人は通り魔による包丁で刺され、死んでしまった。
何も思い浮かばない、何を考えればいい?
今までの心の支えがなくなってしまった。
君がいたからなんでもできたんだ。君がいなけりゃ何もできやしなかった。
気づけば僕はビルの屋上にいた。
いい眺めだ。いつか見た君と夜景を思い出す。あれは綺麗だった。
靴を揃え、封筒を置く。
そして夜景を見て、跳ぶ。
激しい風圧により落ちているのか浮かんでいるのかわからなかった。
内臓が持ち上げられているようだった。
───流れ星が流れていた。
「───────たい」
耳を風が撫でているせいで自分でも何を言っていたのかわからなかった。
そういう事を考える間もなく地面に激しく激突した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おーい生きてるー?あ、死んでるからここにいるのか。失敬失敬」
誰だこの人、すごく馴れ馴れしいな。
「あー自己紹介していなかったね。私は神、名前はないから自由に呼んでくれ。」
「神様...と呼びますね、僕はなぜここへ?」
「おお、順応が早くて助かるよお。ええっとね君がここにいるのは君が何かを強く願っているのを感じたからここに引き寄せたんだ。」
「強い願い?」
「あれ、てっきりわかってると思ってたんだけどお...。まあいいや死ぬ直前に流れ星に祈らなかった?」
「よく覚えていませんが…何か言ったような記憶があります。」
「それかもね、神の規則では死ぬ直前に強い祈りを込めた者の願いを叶えるってなっているんだ。」
「それが私ですか?」
「ピンポーン!正解だよお、なんて祈ったか忘れちゃったって感じだね?」
「はい、呼んでもらって悪いのですが僕は何を言ったのか覚えていません。」
「そうかそうか、じゃあ教えてあげるよ。君が祈ったのはねえ……」
「『恋人にもう一度会いたい』だよ。あれ?信じられないって顔してるね」
「地獄耳ですね、あの状況なら僕はそう言うかもしれません。」
「おいおい地獄耳なんて不謹慎だなあ、どうせなら天国耳って言ってくれよ。まあいいけど、ところで君の言っていた恋人っていうのは門野梨花でいいかい?」
「はい」
「ちょっとまっててね……。うーん、よわったなあ。君の恋人はすでにこの宇宙にいないみたいだ。」
「この宇宙にいない?どういうことですか、それは」
「君はマルチユニバース理論って知ってる?君のいる世界の人間が考え出したこの次元に関する一番正解に近い理論なんだけど。」
「聞いたことはあります、でもそれとどんな関係が?」
「まずそれを説明する前に、この次元、あっ君の恋人がいるであろう宇宙と、君のいる宇宙を含めた全次元ってことね。」
「はい。」
「この次元には宇宙が6つ存在している。幽魔宇宙、妖魔呪術宇宙、無限大宇宙、皆無宇宙、変身宇宙。そして僕が管轄している、君と君の彼女がいた文明宇宙だ。宇宙には色々仕組みがあるんだけどそれを言うのは今じゃなくてもいいかな。」
「僕の恋人…梨花がいるのはどの宇宙ですか」
「それがねえ…わからないんだよ」
「え?」
「ズバッと言っちゃうともう君と恋人は会えないかもってこと。」
「神の力でわからないんですか?」
「次元には生物がざっと数えても不可思議に及ぶ数がいるんだ。その中でたった一人を見つけ出せると思うのかい?」
「…いいえ」
「わかればよろしい。だから君と君の恋人は会えないかもなんだ。」
「そう…なんですか。」
「待ってください、なんで梨花が文明宇宙から別の宇宙に転生したかわかるんですか」
「それはね、魂が私の宇宙から出たという記録が残っているからなんだ。出たっていう記録のみ、だけどね」
「そう…なんですか。」
「うーん、どうしようかなあ。死ぬ前にあれほど強い祈りをされちゃったからなあ。規則にもあるし…」
神様は長らく考えたあとで、私にある提案をした。
「私が君を別の宇宙から転生させてあげようか。能力と記憶を付けてね。」
「それってまずいことなんじゃ」
「大丈夫大丈夫、私次元の中じゃ結構偉い方だし、それに規則にもあるから大丈夫。『神は強く願うものを見捨ててはならず』ってね。君は心配しないでいいよ。」
「そう…なんですね」
でももう一度梨花に会えるかもしれないなら、やるしかない。
「お願いします。神様」
「いいねえその神様っての、気に入った。いいよ。じゃあ行こうか。」
神様が何やら呪文を唱え始めた。神様いわく呪文じゃなく聖なる言葉らしいが
「私のできる最大限のことをしよう。君の健闘を祈っている。君がその宇宙で一生を終えるまでしばしの別れだ、じゃあね」
目の前が真っ白になり、吸い寄せられる感覚とともにいろんな景色が通っていく。
走馬灯みたいなものか。
二人でいったあの場所も。
二人で入ったあの風呂も。
二人で食べたあのご飯も。
二人で歌ったあの歌も。
もう二度と出会うことはないんだよな、全然実感がわかないな。
梨花にまた会えるって、信じてる。
どんなに苦悩があったとしてもそれを乗り越えてやる。
そう思った次の瞬間、身体が軽くなる感覚とともに視界が次第に鮮明になってきた。
獣耳が生えた優しい表情をしている二人が見える。
おそらく、転生したのだろう。
『あー、あー、聞こえるかなって返事できないか。えっと聞こえてたら新しい君のお母さんの手を握ってやりなさい』
これは、あの神様の声だな。一応返事してやろう。
「ᕦᗢᐮᖫᐮᒠᔕᐽoᗯ!!」
指を握ると嬉しそうな声色で僕の頭を撫でた。
手が大きい。僕は、今赤ちゃんサイズになってるのだろう。
『おお、聞こえてるみたいだね。じゃあ今から重要なことを話すから、よーく聞いておいてね。』
「ᕸᓻᙖᘹᕑᙚᖡᕈjᖒ…」
お父さんらしき人がお母さんらしき人に、
多分だけど「俺も抱っこしたい」みたいなことを子犬みたいな顔して言っている。
微笑ましい家族だ。
『君が転生したのは変身宇宙って言って、名の通り変身ができる宇宙だ。』
変身……もしかして仮面ライダー!?
『多分君が考えてるようなことができると思うよ。変身には装着系と肉体変化系の2つがあって、君の親は肉体変化系の種族だね。』
肉体変化系かあ。どういうふうに変身するんだろう。
『君の親は妖狐族と火狐族のハーフだね。妖狐族は化けることができる。火狐族は炎を操ることができるよ。変身の仕方は後々親御さんから教えてもらうと思う。』
『そして残念なお知らせなんだけど、人類と亜人類は互いに敵対しあってる。特に人類からの人種差別がひどい。みんながみんなってわけじゃないけどね。』
人種差別…か。どの宇宙でもなくならないんだな。
『君は運が良いね不幸中の幸いってやつかな。キツネ種は肉体変化系の中でも位が高い種族だ。』
『君はこれからたくさんの人種差別と嫉妬、理不尽な暴力を受けると思う。そこで、君に私から能力を与えた。《知識》。』
ノーレッジ…?確か知識って意味だったな。
『《知識》はすべてを理解する事ができる。もちろん代償もある。代償は君の…寿命だ。』
『ただ寿命っていうのは君の魂がついている肉体の寿命だ。安心してほしい。』
『伝えれることは伝えれたかな。それじゃ、健闘を祈っているよ。』




