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雪よ、降レ!  作者: りっか(監修/訳=Yuki.)
第1巻
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第10話


「しかし、むしむししているな……」


「現在、気温:29度、湿度:72%です」


 アイの声が、無線に届く。ごてごてした装備で来るのには、適した時節ではなかったのかもしれない。夏真っ盛りの、7月も終わりの時期であった。アーマー内部は涼しくするための様々な努力が施されているが、限界はあった。


「小隊長、どうします。進みますか?」


「いや、ここで夜を待つ。少なくとも今のところは、ここは安全そうだし、野営の実践をひとまず先にやることにしよう」


 動き出すのは、夜だ。


 ――――下層の生まれは、必ず近親交配の血が混じっている。といういやらしい言説があるが、人の顔も判別するのが難しいくらいの闇であるので、知らない人だと思って接していたら家族だった、というのがよくあることなのは間違いない。そういう世界で幼い頃を過ごし、軍に入ってからも暗闇と向き合い続けてきた我々には、夜こそがホームだった――――


「まずは、周辺の安全を確認するぞ」


 散開して、中心点から円を広げていくようにして3人は動く。


 藪をかきわける。樹が進行方向にあるので避ける。すると、また樹、樹、樹。そして、樹々の間を埋める藪。どこまでいっても景色は同じ。きりがない。


 鳥や虫が、実に平穏に過ごしている様子なので、直面した危険は無いと判断することにした小隊長は、指示を出そうと口を開いた。その瞬間だった。


「キャっ!」


 短い悲鳴が耳に入ってきた。えいらだ。


「どうした!」


 何かが起こったに違いないと判断した中尉は、すぐさまに彼女のもとへ駆け出そうとする。そうするとすぐに、


「へ、ヘビでした。すごい、本物です……! あっ、かかっ噛んできましたっ。えいっ」


 と聞こえてきたのだった。


「はぁ……まったく」


 3人は、もとの場所に集まった。えいらの手には、すぱっと首の切れたヘビが、いまだにうごめいているのが握られている。大きいのが、藪の中に潜んでいたようだ。


「食べれるのか?」


「ヘビは、おお、お……美味しいらしいですよ」


「じゃあ昼食に食べてみよう」


 ――太陽が沈むまで何をするか。理想的なのは、息を殺して潜んでいることだ。

 密林の、木陰の茂み。藪にちょうど紛れる所に四角いテントを張り、迷彩ネットを被せる。樹々が視界を遮っていることもあって、遠くから見つかることはないと思われた。


 中に入って、皆マスクを脱ぐ。ガスマスクとしての機能もあったのだが、どうやら毒ガスが蔓延しているなんてことはないらしいのは、既にはっきりしていた。


「小隊長、ヘルメットとかも脱いでいいっすか」


「そうしよう。暑すぎる。熱バカになって死んでしまうな、これは」


「み、水飲みたい……」


「まだだ。まずは川を探さないとな」


 水はあまり渡されていない。基本的に、食糧や水は現地調達が想定されていた。


「どうやったら見つけられるんすかね」


「お、お、お…………おと、音がするらしいよ。ゴォーって。それか、チョロチョロって」


 3人して耳を澄ましても、外で蝉が鳴くのが聞こえるだけだった。


「小隊長」


「なんだ」


「セミうるさいっすね。とりま駆逐します?」


「できるならやってみろ。一本の樹にバカみたいにいたぞ」


「やっぱ数はチカラってことっすね」


 そうやって喋りながら、あおめは、タンクトップの姿になって、その白い肌を露わにした。肩のところに、水滴が浮かび上がっている。首筋に、一つ汗が滴った。


「小隊長」


「なんだ」


「私ムキムキっしょ?」


「ああ、キモいくらいにな」


「ひどー」


「私は、か、かっかっこいいと思うよ」


「あんがとー」


 ミニサイズの扇風機の前に陣取った3人は、適当な会話を繰り広げるのだった。


 そうしていると、小窓から、小さなドローンが飛び込んできて、小隊長に報告を始める。


「半径300メートルの地形データの取得およびマッピングが完了しました。現地での観測結果と、100年前の既存の地形図との間に、有意な差異は検出されません。既存データをベースとし、差分のみをリアルタイムで反映する形への運用切替を推奨します。本提案を実行に移しますか?」


「ああ、頼んだ。それと、我々の現在地も併せて、地図を表示してくれ」


「了解です」


 アイが、その空飛ぶボディから光線を出す。テントの床に地図が映し出される。最初、大きな赤い点が中央を陣取っていたが、縮尺が大きくなるにつれて、徐々に小さくなっていき、ある程度のところでストップした。すると、次には、平面だったのがグンと盛り上がって、立体的な地図がそこに現れるのだった。


「見事に山地のど真ん中だな。かつて街があった場所は、ここから最も近いもので、どこにある?」


「現在持っている古い情報を基に、現在地から最も近い街を表示します。東方向、およそ50km先の地点です」


 地図がさらに引いていく。端に赤い点、もう一方の端に、灰色の直方体が立ち並ぶホログラムが浮かび上がった。


「なお、これは100年以上前の地図であり、現在の状況を反映しているわけではないことにご注意ください」


「ありがとう」


 今後の方針を話し合う。


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