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幕間:新人メイドシュバリエ頑張る!!

鳴潮というコンテンツにハマって時間が取れなくなってます(自業自得)カルテジア最高

 背筋をピンっと伸ばして両足を揃え、両手を太ももの辺りで前に出す。

 私は喋れないからと特に笑顔をしっかり浮かべる様にとミリィさんに言われた。


「その姿勢を全く崩さずに何時間も立ち続けるのが大切ですよ。鍛えているので体力的な心配はしておりませんが」


「……」


 身動ぎ一つしないの凄く苦痛……私よりもずっと綺麗な姿勢で全く動かないで見つめてくるミリィさんが居なきゃ、すぐにでも足を動かしてる。

 ガリウス様から教えて貰ったあの『コロッセオ』って呼ばれる場所で戦っていた時も、相手の出方を伺う為にジッとしてる時はあったけどあれは相手との読み合いだし、ちょっとした動きから先読みするのも兼ねてたから本当の意味ではジッとしてない。


「視線を無駄に動かさない。客人によっては使用人に目を向けられる事を嫌がる方も居ます。お出迎えをする時と、直接話しかけられた時以外は相手の全身を視界内に入れる程度で固定すること」


 相手を直視しない……!?

 相手の目が何処に向けられているかどうかは戦う時にとても大きな情報をくれるのに!?


「良いですかシュバリエさん。目と目を合わせるという行為は愛し合う者達や御友人であれば、心地の良い事ですがガリウス様が貴女を連れて行くパーティや商談の場において過度に視線を合わせる行為は相手に警戒していると教える様なものです」


「……」


「あまりピンときていない様ですね……これが常に戦いに身を置いていたが故という事ですかガリウス様」


 小さい声で何か言っているミリィに首を傾げる。

 説明されている時にジッと見つめられていたけど、それが何かあったのだろうか?……むー、言われた事から考えると多分、気まずさとかそういうのを感じるべき瞬間だったのかな?

 でも、ジッと見つめ合うのも、値踏みをされる様に見られるのも日常のことだったし……私には無理かな。


「では少し形を変えましょうか」


「……」


 何処から取り出したんだろうそのナイフ。

 よく磨がれているから普段使いしてるのかな?


「実例と一つを見せるだけですが、私がこれからする行為に本気で反撃しないでくださいね?シュバリエさんの実力で反撃されてはこの老体には響きますので」


「……」


 頷いて了承を示したけど、ミリィさん老体って言う割にはその辺の人より全然強そうだと思うんだけどなぁ。

 っと、全然関係ない事を考えてないで『じつれい』ってやつを理解しなきゃ!!

 

「「……」」


 私をジッと見つめて、すぐに心臓の辺りに視線が動いてまた私の目を見てから今度は首の辺りに視線が動いていく。

 ……あぁ、戦いばかりの私が理解しやすい形にしてくれたんだねミリィさん。

 もう一度私の目を見て、今度は容赦なく向かってきたナイフを軽い力で叩き落として、心臓に刺されそうになるのを防ぐ。


「……流石ですねシュバリエさん」


「……」


 落としちゃったナイフを拾い上げて刃毀れがないか確認してから返してあげる。

 へへっ、ふわりと微笑まれてなんだか嬉しい気分になった。


「今のは分かりやすい形でしたが、この様に相手の目を見て様子を伺い、何かを仕掛けようとする行為はよくある事です。政治の場に身を置く者達は総じて警戒心が高いのでこういった面倒事を避ける為にも相手と視線を合わせすぎないのが大切なのです」


 一対一だから簡単だったけど、これがもし複数になれば流石の私もガリウス様を守りきれる自信はない。

 発端が私になってしまう事は避けた方が良いのは理解したけど、それならそういう危ない人を先に排除しちゃうのも私の仕事じゃないんだろうか?


「勿論、こちらから手を出すのもダメです。相手が何かをしようとしていたという判断はシュバリエさん自身の判断でしかありません。良いですか?ガリウス様が身を置く場は目の前の敵を一人殺して終わる場ではないのです。むしろ、見えない敵が蔓延っているそんな場です」


「……」


 目に見えない複数の敵に取り囲まれている光景を想像して思わずブルリと身体が震えてしまった。

 ガリウス様の戦場って怖い……怪しい奴を殺して終わりじゃないんだ。


「護衛が戦って良い時は相手側が仕掛けてきたという明確な証拠がある時のみです。それ以外の時は精々、ガリウス様の近づかせない様に遠ざける程度が限界でしょうね」


 むぅ……護衛の仕事って難しい。

 

「シュバリエさん」


「……!?」


 バチっと指で額を叩かれた。

 え?なんで?急な事で全然反応出来なかったというか、《《害意》》が全く感じられなかった?


「実演後も姿勢が乱れたままですよ。今は貴女の教育の時間でもあるんですから早く直しなさい」


「……」


「狡いと責める様な目をしても駄目です。私は崩して良いとは言っていないのですから」


 ぐぬぬ……それは意地悪だと思うミリィさん。

 でも姿勢を整えなきゃいけないのは事実だから従うしかない。


「よろしい。では次にその姿勢を維持したまま、私の後ろを着いてきてください」


 それくらいなら簡単。

 ただ、歩いて後ろを着いていくだけなら何も失敗なんてって痛い!?


「足音を立てすぎです。もっと静かにお淑やかに」


 足音なんて今まで一度も意識したことなんてない……こ、これで良いのかな。

 ゆっくりと足を持ち上げて、ゆっくりと前に出しつつ耳を澄まして足音が聞こえないのを確認してホッと息を溢す。


「姿勢」


「……!!」


 今度は足音を気にし過ぎて背中が丸まってた!?

 うぐぐ、ただ部屋の中を歩くだけなのに物凄く神経が擦り減っていく……これならまだ、涎を垂らした虎二匹を相手した時の方が疲れなかったよ。


「さぁ、まだまだ悲鳴を上げるのには早いですよ。これからガリウス様が異性のお相手を避ける為に付き合うためのダンスに、食事の配給から所作にマナーと覚えていただく事は沢山ありますからね」


 私が顔を引き攣らせているのに気がついたミリィさんの言葉に、両膝から思わず崩れ落ちる。

 ガリウス様ーー!!私、早くも心が折れてしまいそうだよぉーー!!





「ふむ。まぁ、徐々に慣れていけ」


「……」


 血の匂いを纏ったガリウス様が戻ってきて、私の頭を撫でてくれたから今後も頑張る!!

可愛く書けてますか?

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