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第二話「名も無き少年」

 ――僕は生まれてから名前が無い。ママは僕を産んだ途端に全身が燃えて灰になった。パパは僕を抱っこした瞬間に手先から燃え始めてママと同じようにいなくなった。

 その場にいた皆が目を丸くした。僕を見て身体を震わせていた。僕から逃げていった。僕の事を『悪魔』と言い放ちながら。


 それからずっと僕は一人で生きていた。このまま一人寒さや飢えに耐えながら慈悲も神の恩寵も無い不条理な世界を命ある限り生きなきゃいけなかった。死にたくても死ねなかった。それが何より悔しかった。早く楽になりたかった。パパやママがいるところに行きたかった。

でもそれはこの世界が許さない。僕を逃さない。まるで世界そのものから監視されているかのようだ。


(いつになったら、終わるのかな……)


 いつもこんな事を考えてる僕を唯一笑顔にさせたものが一つある。それは、夜空に光る満点の星を見る事だ。


「お星さま……キラキラしてる」


 僕は星を見るのが好きだ。だから晴れた日の夜は大好きだ。これを見るために毎日生きようと思っていると言っても過言ではない。これが僕の毎日の日課にさえなっているのだから。


「ちっちゃいのも、大きいのもある……」


 塵のように小さい星から一等星のような大きい星までじっくり眺めていたその刹那、一筋の光が僕の視界を横切った。


「あっ……」


 流れ星。これを見れる日は中々無い。見れるだけで今日は本当に良い日だったと思える。


「あ、待ってお星さま、行かないでっ!!」


 僕を横切る星空に追いつくべく、僕は懸命に星が流れた方向に向かって走り出す。しかし流星はすぐに消えてしまい、見失ってしまう。


「むぅ……、もっと長く見てたかったな」


 星が消えると、少し寂しい気分になる。日が昇ったらまた地獄が始まるから。意味も理由も希望もない生活が始まる予兆なのだから。


「いつか、あの星達を見れなくなる日が来るのかな……」


 このまま死が来る時まで意味も無く生き延びては星を眺める……そんな日々を過ごしていたある日、ある出来事をきっかけにこの人生が大きく変わる事になる。


 僕も、その時僕と目を合わせた二人のお姉さんの人生も――



『――ねぇボク、ここで何してるのかな?』



 今この瞬間、そんな僕の波乱万丈な人生が動き出した。

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