5
日曜日、目が覚めると隣には詩織が寝ていた。
僕は起き上がり、部屋のカーテンを開けた。
「おはよう」
目を覚ました詩織はそう言って僕のことを見ている。
「おはよう」
僕は洗面台へ行って顔を洗った後、キッチンで朝食を作った。
季節は梅雨で、窓の外は少し雨が降っている。
僕は二人分のコーヒーを淹れ、リビングで詩織と一緒に飲んだ。
「どうやら私の病気は治ったみたい。検査をしたらもう問題がないんだって」
「それはよかった。ねえ、去年一緒に花火大会に行ったのを覚えてる?」
「覚えてるよ。なんだか懐かしいな」
コーヒーを飲み終わると、キッチンでトーストを焼き、ゆで卵を作った。
詩織はぼんやりと窓の外を見ていた。
長い病気を乗り越えたのだから、いろいろと思うところはあるだろう。将来は研究者として活躍できそうだったけれど、その道は閉ざされてしまった。僕はもう一度大学院に復学してもいいような気もしていたが、詩織はその道は選ばないと言っていた。
朝食ができると、二人で食べた。
「雨だね。今日はどこにも行けないな」
残念そうに詩織は言った。彼女の長い黒髪や丸い大きな目が視界に入る。
「今日は家で過ごそう。ねえ、カレー作ってよ」
「いいよ」
詩織は微笑んだ。