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冬の間、僕らはごく普通に過ごしていた。休日はショッピングセンターに行き、昼食を食べ、服や雑貨を買った。
詩織は、ごく普通に見えたし、病気だと知らなかったら、おそらく何も問題がないように思うだろう。
大学が春休みに入り、僕は講義がなくなって、研究室で研究をするだけになる頃になると、詩織はある日、病院に運ばれた。
突然彼女は倒れてしまった。僕はすぐに病院へ向かった。
彼女は病室で眠っていた。僕はまだ彼女が生きていたことに安堵した。
それから手術が決まり、僕は休日に彼女のお見舞いに行った。
「元気?」
僕は何事もなかったかのようにそう言った。
「元気だったら、入院してないって」
詩織はそう言って笑った。
僕は駅前で買ってきたシュークリームをテーブルの上に置いた。
詩織はおいしそうにそれを食べ、紙コップに入った紅茶を飲んだ。
窓の外は粉雪が舞っていた。僕は最近まで楽観的に考えていたので、ショックだった。
「せっかく元気になってきたんだけどね。なんだか私の人生はあきらめてばかりだな」
「そんなことないよ。病気でも懸命に生きていたじゃないか」
「そうかなぁ」
詩織はぼんやりと天井を眺めていた。その目には涙がにじんでいた。
きっと僕の想像以上に辛かったのだろう。