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不死狩りと舌戦場の軌跡  作者: 暦師走
〈肆章:空ヨリ堕チタ災厄ノ牙〉
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【外界100日目(晴れ)】


娘の護衛に任を移された。

遊具の如く甲冑の上を這われる事もあれば、妖女用の篭に2人して飛び込む事もある。


何が楽しいのか理解に苦しむが、座っているだけで食事が提供されるならば、贅沢な仕事と謂ゑよう。




【外界101日目(曇り)】


雇用主が街の外へ出かけた事で、自由行動の許可を得た。

早速街へ繰り出せば、妖女の嗅覚が1軒の果実屋へと導き、まずは屈む必要のない扉や天井に及第点。


さらに頭上から吊るした編み篭には果実が載せられ、景色まで訪れる者を楽しませてくれる。


店主と思しき青年には試食すら勧められ、製品もこの上なく美味。

しばらくは通い詰める事になるだろう。




【外界102日目(晴れ)】


雇用主はまだ戻ってきていないらしい。


果実屋の購入品も妖女から給仕へと渡り、提供される甘味の質が大幅に向上した。


彼女のささやかな功績も、今回ばかりは認めざるを得ないだろう。




【外界103日目(晴れ)】


[――…ないしょないしょだよ?]


妖女の手引きにより、護衛対象の娘を果実屋へ連れて行く事になった。

口元に指を当てる所作を見るに、本来であれば規約違反なのだろう。


だが果実屋の発見や甘味向上の功績を鑑み、要望に応えないわけにもいかない。

娘を妖女ごと篭に押し込み、いざ到着すると珍しそうに周囲を見回す間に、果実の選別に勤しんだ。


それから会計を済ませようとしたが、恐らく陳列棚を足場に篭を抜け出したのだろう。

気付けば店主が娘と会話し、“隠密任務”の失敗を知るに至る。



普段より多めに果実を買い込んでおいたが、今後は青年の動向を監視していく。



【外界104日目(雨)】


雇用主が帰投したものの、どうやら体調が優れないらしい。

屋敷に戻るとすぐに自室へ篭もってしまったが、恐らく旅先で悪い物でも口にしたのだろう。



だが屋敷に引き連れてきた物は、それだけではなかったようだ――。




【外界104日目(雨) - 追記】


夜間に不穏な気配を感じ、娘の部屋から哨戒に繰り出した矢先。

影から飛び出した黒装束を、咄嗟にその場で捻じ伏せてしまった。


他にも身を潜めていた一団を次々始末し、内1人を殴り飛ばした先で、興味深い物を発見する。



砕けた壁を潜れば、部屋は宝物庫だったのか。

様々な装飾品が置かれていたが、中でも注意を引いたのは、中央の台に飾られた“大鉈”。


多少は錆びついていたものの、重量に硬度。

刃渡りや切れ味。

いずれも申し分ない大刀(たち)だったが、この部屋は常に鍵が掛かっていたように思ふ。



盗人の手助けをした気分に陥るも、回り込んでみれば扉が普通に開いていた。


大鉈の傍には黒焦げの死体も倒れており、今がまさに非常事態。

手段を問わず、賊を排除する事が求められるだろう。



新たな装備(大鉈)を遺憾なく振り回し、残党を悉く成敗していったが、恐ろしいほど手に良く馴染む。


周囲に悲鳴や鮮血が迸り、妖女を娘に預けてきたのは正解だったようだ。

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