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高校生男子による怪異探訪  作者: 沢満
四章.七不思議
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15.第七の七不思議

 弛緩した空気が流れる。ちょっと洒落にならない非常事態を乗り越えた先だから緊張が緩むのも仕方ない。

 そんな弛んだ空気の中、ぽつりと美樹本が呟いた。


「……あ。なんかもう帰る気になってたけど、よく考えたらまだ六箇所しか回ってない」


 はっとした美樹本の発言によって全員それを思い出した。


「そ、そう言えば……」


「え、でももう十時近いです。あと一カ所回れますか?」


「わ! もうこんな時間!? こ、これは流石に無理っぽいね?」


 各自わたわたスマホを取り出して時間を確認して焦った声を出す。もうそろそろ時間切れだ。あと数分で最後の一個を回るのは土台無理だろう。


「えー、一個取り逃すのか?」


「そこは……、どうしましょうか? 会長さん」


 訊ねられた先輩に視線が集まる。そうだ、企画者はここにいたな。

 続行か撤収か分からないが、とりあえず先輩に指示を仰がないと。


「ふむ。ここが六番目だったか」


「あの、それでどうしましょうか? もう時間はないですけど……」


 撤収でもいいような気はしている。トイレ内での出来事やその過去の話を聞いた直後だ、これからあともう一つ怪談の検証を行うとなっても気分がそもそも乗らないだろう。時間も差し迫っているし、それなら切りよくここで終わらせても致し方ないとも思えるが。


「……ちなみに聞くが、君たちは七話目を知っているのかな?」


「え? い、いえ、嵩原は知ってるみたいですけど、僕たちは知りません。教えてもらえなかったので」


 話が明後日に飛んで戸惑いながらも美樹本は答える。なんで怪談の確認を取ってきた? まさかの継続か?


「嵩原君?」


「直前まで黙っておいた方が会長さんの好みかなって」


「なるほど」


 短いやり取りで何事か通じ合う二人。嵩原の笑みを見ればどんな企みがあるのかはなんとなく察せられる。にたぁと嫌な笑顔浮かべているからな。


「うむ。それならば私自ら『七話目』に案内しよう」


「え!?」


「え、まさか続行するんですか?」


「もう時間が……」


 突然の発表にそれぞれ驚きから拒否の反応を見せるが、それら意見を先輩は胸を張ってなんなく受け止めた。


「時間ならば大丈夫。七話目まで来たのならもう制限は関係ないからね。折角ここまで回って来られたんだ、最後まで我が学校の七不思議を知りたくないかい?」


 ふふふと怪しく笑いこちらに誘いを掛けてくる。全員それぞれ顔を見合わせて、そして結局六話確認したんだからと七話目にも挑むことと相成った。これは好奇心と呼ぶべきか、それとも自棄と呼ぶべきか。


 先輩の案内により移動となったが、その前にと一つ号令が掛けられた。


「騒がせてしまったお詫びだ。彼女のために黙祷してくれ」


 示す先はあのトイレ。全員で言われるがまま暫く手を合わせる。あそこで過去にあったこと、そこで俺たちが行ったことを思い返すとなんとも言えない感情が胸の内に湧き上がった。あの暗く湿った空気は暫く忘れられそうにない。


 暫し沈黙が続き、そして先輩の号令で顔を上げる。こちらの胸の内を読み取ったか、先輩は苦笑を浮かべて首を横に振った。


「気にするな、とは言えないが、あのトイレの過去もそれに関する噂も、皆早々に忘れるのが賢明だぞ。噂を流布されるのは困るが、だからと言って後生抱えていくこともない。それは私の役目だからな」


 あっさりと言って退ける。巻き込んどいてと思う気持ちもあるが、悲惨な過去の記録さえ真摯に受け止め、剰えそれを覚えていくことを役目と言える先輩は覚悟からして俺たちとは違うのだなと思う。噂・エンタメというフィルターを通さず、人の死を事実として受け止めるその精神性は一体どんなものなのか。あまり想像出来ないな。


「さぁ、行こうか。次がいよいよ、最後の七不思議になる」


 さっと髪を翻らせて先輩は通路を進む。俺たちは重い沈黙を抱えて、そのあとを着いていった。




 渡り通路を引き返し、戻ってきた部室棟の二階に足を進める。道中、これまでの七不思廻りに関する大雑把な報告などを行いながら唯々諾々と着いていってるんだけど、七話目って部室棟にあるの? 踊り場の鏡を後目に二階廊下の奥へ折れていく。


「あの、蘆屋先輩。七話目は部室棟なんですか?」


「文系の部室、とか?」


 相変わらず軋みの激しい廊下を歩きながらも疑問に感じたのは俺以外にいたらしい。訊ねてくるのに先輩はふっと息を溢して笑うだけで答えようとはしない。


「なんか見たことあるな。この景色」


「……まさか……」


 早々に二階廊下端に辿り着いた所で桧山がぽつりと感想を漏らし、そして美樹本は当たって欲しくないと言わんばかりに苦み走った声を出す。

 先輩が立ち止まった、その前にある扉へと懐中電灯を向ければ、質素な木の扉のその横に掛けられているルームプレートには馴染みたくない同好会の名前が印字されていた。


 『オカルト研究同好会』。己の巣であるその部室の前に立った先輩は、ばっと片手を大きく広げて威丈高に言い放った。


「ようこそ、私の『オカルト研究同好会』へ! そして『上蔵高校七不思議』、最後の『七話目』に!」


 バン!と擬音が背後に書かれそうなほど堂々とした宣言を、ああ、やっぱりそう言うことかと冷めた気持ちで受け止めた。




 なんか本当にオカ研部室が七話目であるらしい。嵩原に確認取ったら笑い堪えられながら肯定を返された。

 「これは直前まで秘密にしておいた方が絶対面白いと思った」などと供述しており、もろにそのドッキリ染みた配慮が突き刺さった美樹本は部室に入ったあともどこか目の焦点が合っていない。

 普段よく通ってる部室がまさか七不思議の舞台になっているとは思いもしなかったんだろう。受けたショックから全く戻ってこられていない姿はただ同情を誘う。


 詳しい話をすると先輩に促され部室へ入ったのはいいのだが、通常よりも半分の大きさの部屋に計八人詰めるとか流石に狭い。女子と美樹本を椅子に座らせるとしてもあとは皆立ってなくちゃ収まらんぞ。この部屋、棚が意外と場所取ってるし。


「あ、なんかごめんなさい。座らせてもらっちゃって」


「いいんだよ。女性を立たせる訳にはいかないし」


「えっと、桧山君疲れてない? 席代わろうか?」


「気にすんな。俺全然疲れてないし。美樹本ー、ほらちゃんと座っとけー」


「あ、あの、先輩座りますか?」


「こっちは気にしなくていい。ずっと歩き続けていたしちょっとは休んどけ」


 バタバタ(主に美樹本を座らせるため)しながらも各自どうにか人心地つける。煌々と電灯が室内を明るく照らす中、いつものポジションに収まった先輩が鷹揚に語り出した。


「うむ。三人には申し訳ないが暫し立っていてもらえると助かる。同好会という身分でありながら部室を確保出来ていることが望外のことでね、流石に通常の部室と同じとはいかないんだ」


「理解してますからいいですよ。それよりも『七話目』の検証を始めてしまいましょうよ」


 この部屋の借主として謝罪する先輩の言葉を嵩原の奴があっさりと受け流す。美樹本の奴が未だ復活しないからって進行役を奪ってやがる。ま、それで何か不利益が生じる訳でもないが。


「うむ。そうだな。そろそろ君たちを引き止めるのも限界であるのだし、さっさと検証を始めてしまおう。とは言え話は簡単だ。『上蔵高校部室棟二階の最奥にあるオカルト研究同好会の部室に入ると何かが起こる』。これが七話目の全容だ」


 全容短い。これまでになく短い怪談?に呆気に取られる。全容ってことはそれで話は終わりとなる、よな?


「……それだけですか?」


 訝しんだ二岡が訊ねる。それに先輩は大きく頷いた。


「そうだ。それだけだ」


「えっと……、七話目がそれって、いいんですか?」


 おずおずと切り出す朝日に答えたのは嵩原だった。


「七不思議の形態には二通りあってね、一つは七つ全ての不思議を知ることにより最後に新たな怪談が語られるもの。そしてもう一つは七つ目の不思議自体が最後のオチとして語られるものとある。我が学校は後者だったってだけの話だよ」


「うむ。実際我がオカルト研究同好会が発足してから七不思議の七番目はこの話に固定してしまっている。それまでは七つの話が先を競うように入れ替わり立ち替わりとなっていたものが、我が同好会発足後は全く様変わりせず単純な怪談として締められるようになった。実質七不思議が六不思議になったようなものだな」


 やれやれと首を振って残念がるがそう言う問題か? つまりはここが七不思議に最早殿堂入りしてるってことだろ? 桧山が「ずっとスタメン入りしてるってことか!?」なんて興奮してるのも聞き流すくらい俺は今困惑している。


「……はあ。なんだって七不思議のオチなんかになったんでしょうか?」


「記録によれば我がオカルト研究同好会の初代会長が成したことであるらしい。前身が上蔵歴史編纂部という歴とした部活動であったことはもう説明したと思うが、それから同好会へと降格の憂き目にあった初代会長が、未だ自分たちはここにありと示すため流布したのが始まりなんだとか」


「自作自演? つまりそれって自作自演で怪談話を作ったってことですよね?」


 堪らず二岡が突っ込む。何やってるの初代会長。自己アピールにしてももっと他にやりようあっただろ。


「事実、我が同好会の活動は秘して行うことも多く、部室の場所からしてまるで隠れ潜んでいるようだろう? 実態が分からなければ噂を完全に否定することは難しい。なるべくして、学校の怪談の一つとして定着を果たしたと言える」


「ね、狙い通りの成果を得られましたね?」


「無駄に実行力と運を持っていたのね、その初代会長は」


「同好会発足から数年の間は新聞部とも協力して定期的に七不思議の特集を校内新聞で発行もしていたようだ。勿論、七話目には自身の同好会を載せるという根回しも行っていて、それら地道な努力が実り七不思議の七話目という不動の地位を得られたらしいんだ。単純な運という話でもないんだよ、実際」


「そんな実は努力してました的に言われても」


「執念が感じられてむしろ引きます」


 誇らしげな先輩とは対照的にこっちはドン引きしてる。そうまでして七不思議のトリを飾りたかったのか初代よ。敢えてなのか知らないがふわっとした怪談でオチを担うって、それでよかったのか、オカルト研究同好会。


「はい、先輩。それってつまりヤラセってことか? 七話目もガセなの?」


「ほう。鋭い所を突いてくるじゃないか、桧山君。いい質問だ。実の所……」


「はっ。こ、ここが七話目ってどういうことですか会長!」


「わっ、びっくりした」


 魂飛ばしていた美樹本が漸く生還を果たした。お誕生日席からがばっと先輩に勢いよく迫る。隣にいた二岡が声を上げるが耳に入らないほど一杯一杯なようだ。


「どうもこうも、我が同好会は七不思議のラストを飾っていてだね」


「何を名誉みたいな言い方して! こここ、ここ出るんですか!?」


「あ、今ちょうどその話してたんだよ」


「え!?」


 美樹本と先輩・嵩原のテンション差酷いな。まあ落ち着けと美樹本を宥め賺し、先輩はゆっくりと語り出した。


「七不思議で語られる所の『怪談』は残念ながら真実とは言い難い。何故ならば先程も話した通り、こちらの怪談はあくまでアピールのための創作に他ならず、元々単なる空きスペース兼倉庫であったこの部室に対しても特に曰くなどは存在しなかった」


「ここ倉庫だったんかー」


「部室と言うには狭過ぎるわよね」


「そう言う扱いもあって七不思議のトリでありたいとか血迷った発想にも至ったりしたのかもな」


「しかしながら、ここはオカルトという超常的なものを研究する一機関ではある。この部屋にて代々我々同好会会員は様々な噂や怪談、超常現象の研究や調査等を行ってきた。時には資料を運び込みここで紐解き、また時には現場に赴き写真や動画等を撮りこの部屋で再生しては細部に至るまで検証した。それら超常のものを調べ尽くすその行動は、この部屋にて限りなく未知たるものへ近付いているというその実証になりはしないだろうか」


 茶化しながら聞いてたらなんか流れが変わった。会長は不敵な笑みなど浮かべてこちらを眺めている。


「この部屋にはこれまでの我が同好会が調べたその報告書の全てが収めてあり、またその調査の最中に手にした曰く付きの品物も丁重に保管している。君たちの背後にある棚が正にそれだ。それら単なる常識では決して図ることの出来ない、謂わば慮外のものが集まるこの限定された空間で、何事もなく通常の物理法則だけが我が物顔をして闊歩していると、君たちは果たしてそう信じ込めるかな?」


 持って回ったように核心を避けて言葉を重ねるが、それはつまり。


「……我が部室には七不思議で語られる怪談とは別に、様々な奇妙な噂が実はある。誰もいないはずなのに物音が聞こえた、夜とっくに施錠もなされたはずの部室の窓に淡い光が見えた。夕方、ふと見上げた我が部室の窓から、古めかしいセーラー服姿の少女が地面を見下ろしていた……などなど。挙げれば切りがないほどに実は逸話がこの部屋にはあるのだよ」


 ニィと口端を歪め笑う。ごくりと喉を鳴らしたのは誰か。皆が先輩の語りに集中し、その声に耳を傾けていた。


「七不思議ではあくまで締めの怪談という側面を強調しているに過ぎない。話自体も創作だ。だがね? 噂というものは語り継がれて行く内に、やがて実体という肉を持ち一人で立ち上がることもままあるのだよ。我がオカルト研究同好会の噂もそうだ。……『この部屋に入ると何かが起こる』。私は怪談は嘘だと言ったが、何も起こらないとは一言も明言してはいない」


 先輩がそう告げた、瞬間。


「ワーーーッ!!!」


「「「「キャーッ!!」」」」


 バン!と音がして叫び声が狭い室内に木霊した。なんだと振り返れば暗い廊下を背に万歳した駒津が大口開けて出入口を陣取っている。

 突然の音と声に先輩の語りに集中していた女子三人と美樹本は甲高い悲鳴を上げ、一瞬にして辺りは大混乱といった様相となってしまっていた。


 俺もびっくりはしたけど駒津と分かれば怖いことは何もない。襲い掛かる熊みたいなポーズで扉前で固まってるのを冷めた目で睥睨する。女子三人は慌てて身を寄せてキャーキャー言ってるし、そこに美樹本が紛れ込んでてこの事態をどう収拾すればいいのかも分からん。おい責任取れ教師。


「お疲れさまです、駒津先生。校内の見回りは終えられたんですか?」


「本校舎並びに特別棟はオールOKです。あとは部室棟と昇降口だけだね。そろそろ引き止めも限界だと思うけど、まだ終えられないかな?」


「いえ、もう七話目も語り終えました。ある程度報告も受けましたし、あとは後日レポートとして提出してもらえればいいかと考えています」


「じゃあそろそろ解散と言うことになるかな?」


「そうなりますね」


 こちらの騒ぎなど全く無視して淡々とした会話が続く。何? 駒津は先輩の仕込みだったのか? 冷静な二人のやり取りに騒いでいた奴らも落ち着きを取り戻してきた。


「……え。せ、先輩?」


「うむ。先程も言ったように七不思議で語られる怪談は願望込みの創話であり、またそれとは別の我が部室を題材とする怪談が校内で流れているのも事実だ。なので両者を上手いことドッキングさせれば『オカルト研究同好会に入室すると何かが起こる』という曖昧な七不思議も、概ね嘘ではないと言えるのではないかなと言うのが私の見解なのだけど、皆はどんな風に思う」


「違う! そうじゃない!」


 マイペースに七不思議の七話目の検証を進める先輩の語りに、美樹本の悲痛な叫びが思いっ切り被さった。


 つまりはまぁ、七話目もガセと言えばガセという結論となり、こうして俺たちの七不思議ツアーは幕を閉じた。なんとも締まらない終わりだが、下手にまた不穏な気配が漂うのも嫌なのでこれでよかったのだと思っとこう。


「タクシー呼んだので正門の方に移動しときましょうか。あと十分くらいで来るみたいだよ?」


 一旦職員室に戻りタクシーを呼んだ駒津が部室に戻ってきてそう報告する。あのタイミングでの乱入はやはり元々狙っていたらしく、先輩の語りを聞きながら隙を窺っていたと聞かされ女子+美樹本が激怒。タクシー呼びの使いパシりとして使われるも、それに本人さえ異を唱えなかった。謝ってはいたけど、本当に申し訳ないと思っているのかは分からん。


 そして今回の七不思議の検証だが、後日レポートを提出してもらうことでそれを報告書として扱うとのこと。先輩としては討論会的なものを開きたかったようなのだが、流石にもうこれ以上引き止められないしそれは断念したとのこと。俺ら本当にただ肝試ししたみたいな形になっちゃったんだけど、それでいいのだろうか。


「うむ。それでは長時間に渡る我が同好会の検証作業に付き合ってもらって本当に感謝申し上げる。まだ報告書という作業は残っているが、どうか最後まで協力してもらえればと思う」


 締めに入る先輩は戸締まりの済んだ部室内で仁王立ちになる。撤収と言うことで俺たちももう全員直ぐ移動出来るようにしているので、狭い部室に駒津を含めて九人が立っていることになる。ぎっちりだよ。今夜涼しくなってて心から良かったと思う。これで熱帯夜だったら汗だらだら掻いていただろうな。


「報告書の提出日は勝手ながら登校日と定めさせてもらう。それまでにどのような怪談であったか、どんな検証を行ったか、それについてどう感じたかと言ったように内容を纏めてもらえればと思う。何もきちんとした報告書の体などは求めやしないので、各自書き易いように書いてもらって構わない。ただし七話全てについて触れては欲しい。分かったかな?」


 三々五々に返事が上がる。桧山辺りはちょっと怪しい感じがするが、まぁ美樹本が着いているんだし大丈夫だろ。実質宿題が一つ増えたようなものだが、たかだか数時間の体験を纏めるだけだ、そう時間も掛からないと思う、多分。


「それでは、移動しようか。タクシーは私と駒津先生がそれぞれ女子と男子に別れて随伴する。自宅まできちんと送るのでどうか安心して欲しい。皆、忘れ物等がないかきちんと確認したか?」


「はい、大丈夫です」


「オッケー、先輩!」


「懐中電灯も全部あるかな?」


「大丈夫だな。持ち運んだ物ってそれくらいか? 七不思議に特別な物用意するとかあんまり聞かないよな」


「うん。そうだね」


「私たちも特にないわね」


「スマホは、大丈夫。どこかに置いてたりしないね」


「鞄も持ってきてなかったので手ぶらなんですよね。本当にスマホくらい?」


「今やスマホ一台あれば不便はしない時代だからねぇ」


「ふふ。ちょっと年を食ったような言い回しですよ、それは。駒津先生もまだお若いでしょうに。それじゃぁ、行こうか」


 先輩の号令に合わせてばらばらと廊下に出る。最後に先輩がきちんと消灯し、施錠も確認してから昇降口に向かって歩き出した。

 懐中電灯も部室に戻してしまったので辺りは暗い。各自スマホで照らしながらの道中は、もう検証からは解放された影響か純粋な肝試しをしているかのようでワイワイと会話が弾んだ。


 明確に怖い怪談のある場所を目指している訳でなし、先輩と駒津という年上も参入している影響があるのだろう。ギィギィと軋む廊下もさして気にならず、俺たちは昇降口までの道程を一塊になって進んでいった。




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