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33.もしゾンビのいる世界で考察をする場合

連続更新4話目です。いないとは思いますがブックマークの最新話から飛んできた際は注意して下さい。

「そうか、キミは私を信じてくれるんだね。まぁ、まだ市役所までは距離がある。折角だから何か聞きたい事とかはないかい? じゃあまずは千春クンから」


 突如始まった質問タイム。

 きっと、なんとなく気まずくて一言も発さない俺たちに見兼ねたのだろう。

 あるいは単純に退屈だったからかもしれない。

 

「えっと……そのコート、暑くないんですか?」

 

 宵櫻さんは真っ黒のコートを着込んでいた。どうやら相当古い物らしく、そこら中がほつれたり、破れた所を修復した跡があった。


「実際、かなり暑い。でもこのコートはずっと着ていないといけないんだ」


「どうしてですか?」


「うーん。勘だけど、多分直希クンと大体同じ理由かな? 後で直希クンから聞いてみると良い。次、秋乃クン!」


「……そうだな――じゃあ、なんであんな場所にいたんだ?」


 アキの質問はもっともだった。


「ああ、それはちょっと人を探しててね。はぐれたら市役所で合流と言ってはいるんだが、中々戻ってこないから探しに来たんだ。彼女を見掛けてはいないかい?」


 そう言って宵櫻さんは一枚の写真を見せてくれた。

 歳は宵櫻さんよりも少し上くらいか。

 鳶色の髪を後ろで一纏めにした女性は、撮影者に向かって怒っている様子だった。

 俺たちは見掛けていない事を伝えると、少し面倒くさそうな顔をして、ため息をついた。


「まぁ楓クンの事だ。どこかで面倒ごとに巻き込まれてるだろうから、そこまで心配はしていない」


 もしかしたら何処かで亡くなっているかもしれないと言うのに、彼女は一切そんな不安を持っていない様に見えた。


「次は直希クンだけど……」


「このパンデミックについて、知ってる事を教えて欲しい」


 ずっと気になっていた事だ。

 そもそも、何故ゾンビが発生したのか。

 ゾンビの習性も、スキルについても全てが自然現象というのは到底あり得ない。

 それに宵櫻さんを助ける時に感じたゾンビの弱さについても不可解だ。


 宵櫻さんが全てを知っているとは思ってないが、安全な拠点にずっと居た俺たちとは違って、各地を転々としているなら何らかの情報を握っているかもしれない。


「良い質問だね。私もそこまで情報を得ている訳ではないが、ある程度の仮説――推理はしている。それでも良ければ話そう」


 ――――――――――――――――――――


「まず、ゾンビについてだが――まず間違いなく自然発生ではないだろうね。

 キミたちも知っているとは思うが、この辺りでは桂琴町の繁華街で大きな爆発事故があって、それからやつらが現れ始めた。

 

 いやいや、爆発の規模が大き過ぎる。話によれば衝撃波で数キロ離れた場所でも窓ガラスが割れたそうじゃないか。


 この規模は大きな工場でもなければ普通は発生しないだろうね。

 それが日本各地で同時に起こっている。つまり――」


「同時多発の爆破テロ?」


「だが、ただのテロでもこんなに爆発物を用意できるかな?

 残念だけど爆発とゾンビの発生についての情報は少ないね。爆心地に行けば何か分かるかもしれないけれど……」


 ゾンビの強さについて。


「これについてはある程度検証は済んでいる。

 分かりやすく解釈すれば、恐らくRPGロールプレイングゲームのレベルシステムに近い」


「ゲーム……ですか?」

 

 比嘉さんは思わず口にした。大量の死者が出ているこの災害の一片をゲームに喩えられたのが気に障ったのかもしれない。


「そう、ゲームさ。やつらは私たち人間を喰らう度、少しずつだけど強くなっていく。

 直希クンは気付いてるかもしれないけど、やつらはまず首を狙って噛みついてくる。


 その時に肉と共に血を吸い取ってるらしいんだ。それが力の源らしい。

 そしてそれと同時に、何らかの物質を傷口を介して人間に注入して、それが脳をどうにかしてゾンビに変貌させる。


 人間の首に噛み付き、血を吸って同族にする――ふふ、私たちは外見のイメージからゾンビと呼んでいるけど、どちらかと言えば吸血鬼に近いのかもしれないね」


 場所によって強さの差が激しい理由。


「単純に人口の多い地区だったり、逃げ込める場所が少ないとその分犠牲者(経験値)が増えるだろう。

 この辺は閑静な住宅街で、みんな息を殺して家に引き篭もってるから犠牲者は少なく、ゾンビも流れて来にくいのさ」


 スキルについて。


「得られる能力は、本人の得意分野を更に拡張した物が多いみたいだ。

 だけど手から火の球を発射したり土の壁を作ったりと、あきらかに物理法則に反した能力は全く以って意味不明だね。一体何を消費して生成しているのかさっぱり分からない」


 スキルの種類について。

 

「単純に身体能力や知覚を強化する強化系。

 何らかの物質を生成する魔法系。

 他人の精神に影響を与える精神系。

 この三種に当てはまらない、特殊系の四種類が確認されているよ」


 一部の人間しかスキルが使えない理由。

 これについて聞いた時、宵櫻さんは少し話すか迷っている様に見えた。

 

「……キミたちは二十年頃に起きた新型のインフルエンザが流行した事を覚えてるかい?」


「覚えてますけど……でも治療薬とワクチンがすぐに完成して半年位で終息しましたよね」

 

「私も家族とワクチンを打ちに行ったのでよく覚えてます」


「そうだね。そこでふと気付いてアンケートを取ったんだが――

 どうやらスキルに目覚めた人は全員ワクチンを接種しているらしい」


「なっ⁉︎」

 俺は動揺を隠せなかった。

 

「当然これは未確定の情報だよ。スキル持ちでも接種したと嘘を言っている可能性はあるし、接種済みでもスキルがない人だって大勢いる」


「だけどまぁ、高い確率でワクチンがスキル――いや、このパンデミックに絡んでいると見てもいいね」


 宵櫻さんの口から出た衝撃の情報。

 これが真実だとしたら、間違いなく国家レベルの存在が災害の元凶と言っている様な物だ。


 スキルを強化する方法。

 

「基本的には無いと言われているね。

 だけど、ゾンビはある種、全員強化系スキル持ちの能力者とも言えるんじゃないかな……そんなやつらは人の血を啜る事でレベルアップしていく。

 ならば、もしかしたら…………」

















 




 


―― 『一人殺せば殺人。千人殺せば英雄』というのは、誰の言葉だったかな?――なんてね。

 


この物語はフィクションであり、現実世界の世界情勢や、薬品等は一切関係ありません。

 目先の情報に踊らされず、正しい知識を身に付けましょう。

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