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21.もし日常が崩れる場合

昨夜、8月14日にアラスカやハイチでM(マグニチュード)7.2の地震が発生した様です。

https://mainichi.jp/articles/20210815/k00/00m/030/010000c

この地震で亡くなった方にご冥福を。

そして負傷者や今もなお危険な状態の方々へ、一刻も早く救助が来るのを祈ります。


また、日本でも大雨や土砂崩れが起こっています。

該当地域外に住んでいる人も、他人事だと一蹴せずに、


“もし自分が被災したら”


自分に何が出来るのか、出来ないか。

なにをしたらいいのか、なにをしてはダメか。

そして、それまでに何を準備出来るのか。


そういった事を、5分だけでも構いません。

ほんの少しでも考える事が、なによりも重要だと私は思っています。




それでは長くなりましたが、本編をどうぞ。

 自宅に帰ってきてから十日が経った。

 俺たちは未だに降り続ける雨にうんざりしながらも、安全な家の中で過ごしていた。


 雨足は数日前にピークを超え、最悪今出発しても問題はない位には弱くなっている。おそらくは明日か明後日で降り止むはずだ。


「ナオ、腹減った。アイス取って」


「冷凍庫のアイスはとっくの昔にダメになって捨てただろ」


「じゃ何でもいいから食糧部屋から持ってきてー、このままだと空腹で死んじゃうぞー」


 アキはソファーに寝っ転がりながらまるで召使いに命令するかの様な態度を取っている。

 以前にもまして厚顔無恥な態度に拍車が掛かっている気がする。


 長期間待たせてしまった負い目があるので何もしなかったが、そろそろ文句を言ってもいい頃合いかもしれない。


「アキ、いい加減」


「あ?」


「……持ってきます」


 ――殺られる。

 死の予感が全身を駆け巡り、俺は反論を取りやめてソファーから立ち上がり、一目散に駆けた。


 俺はアキとの喧嘩に、ただの一度も勝てた事がない。その上今の彼女は以前の一・三倍の力を出せるのだ。ヘタに刺激して怪我をする前に従った方が良いはずだ。


 冗談はさておき、実際俺も腹が減っていた。

 時計を見れば、丁度昼の十二時を示している。いつもより少し早いが、昼飯にしよう。


 俺たちの会話に引き気味の比嘉さんを連れて、食糧を保管している部屋に入った。




「比嘉さん、今日は何が食べたい?」


 実際に盛り付けたりガスコンロで調理してくれるのは彼女だが、こちら側から提案しないとどうにも遠慮してしまうのだ。逆に一度聞くと、絶対にコレが食べたいと明確に言ってくるのだが。


 俺は比嘉さんに聞きながら、大量に積まれたダンボールの中から一箱を引っ張り出し、中から適当に食べ物を取り出す。


 米。ひじき。きんぴら。野菜スープ。パン――これは朝に食べたので除外。ツナ缶。カレー。うどん。「カレーうどんにしましょう。付け合わせは……」


 机の上に並べると、比嘉さんの琴線に触れた食材達が取り上げられていく。

 カレーうどん。うどん自体久しぶりに食べるのでその選択は嬉しい。


「しかし、いつ見てもスゴい量の非常食ですね」


 比嘉さんは部屋を見渡してそう呟く。


 六畳の洋室に似合わない、金属製で頑丈な棚達。

 そこに天井近くまで積まれたダンボールやケースの類いが所狭しと並んでいる。

 少しでも配置を間違えれば足の踏み場も無くなる様な物量に、彼女は圧倒されていた。


 当然医療品やその他予備の物資も含め、この部屋には二人がおよそ一年は余裕で籠城出来る程食糧を備蓄していた。


 “あらゆる事態”を想定すると、出来る事なら一年と言わず、一生引きこもっても使い切れない程貯めておきたかったが、保管場所や消費期限を考えると、ローリングストック※1 で貯めておけるのは六畳一部屋が限界だった。


「まぁね。“プレッパーたる者、備蓄は最大限怠るべからず”。なんてね」



――――――――――――――――――――



「それでよ、突然スーツのおっさんが『飴一個あげるから手でシてよ』って言ってきてさ。

 (ズルズル……)ムカついたから思いっきりそいつの股を蹴り上げてやったんだ。(ズルズル……)んで気絶してる間に慰謝料として飴玉を頂いたんだが、それが――」


「口に物をいれたまま喋るな、それに汁が服に飛んでるぞ」


「カレーうどんなんだから服に付くのは仕方ねぇだろ」


「はぁ……少しは俺たちを見習ったらどうだ? だよね、比嘉さん」


「そ、そうですね。藤宮さん、こうやって食べるとスープの跳ねが少なくなりますよ」


 比嘉さんは会話を振られるとは思ってなかったのか少し困惑しながらも、とても綺麗な動作でレンゲと箸を扱い、アキに食べ方をレクチャーする。




 そんななんでもない平穏な時間。

 今だけはゾンビも、敵も、何もかもを忘れている。心地良い日常。


 教えられた通りの動きを試してみるが、どうにもむず痒さを覚えた藤宮は、二人のマナー講師から逃げようと、柄にもなくピッチャー(水差し)を補充すると言って席を立った。


 その時。

 東京の地中の奥深くで、とある異変が起きていた。


 否、異変というには少々語弊がある。

 人間が感じ取れるもの、それも日本のみに限定しても年に数百回も発生している現象で、“異変”とは言い難い。

 それは地球の表面を覆う“プレート”の動きによって起こり、それに伴う現象。


 前兆はあまりに小さく一瞬で、さしもの朝倉も感じ取る事が出来なかった。


 その次の瞬間。日常は、平穏は――


 のちの世では、“東京大震災”と呼ばれる事となる大地震によって、文字通り崩れ去るのだった。

※1.備蓄→消費→補充のサイクルの事。

 古い物を消費して新しい物を買う事で、備蓄の量を維持しつつ鮮度を保てる。



修正報告:『18.もし自宅に帰る場合』にて指摘された部分と、終盤の部分(+あとがき)が盛大に脱字してたのを修正しました。

 お察しの通り作者は結構雑な性分で、校正がまともに出来ません。

 なのでしょっちゅうとんでもないやらかしをしていると思いますが、ミスにお気付きの方はお手数ですが何かしらで報告して頂けると幸いです。


いやホントお願いします。後書き含めたら六百字位欠落してたとかマジで恥ずかしい……


それに気が付いたら前回の投稿から一月が経っていました。

サボるつもりはなかったんですが、WiFiが死んだり、映画を見たり、働いたり、Vtuberの配信追ったり、映画を見たりで執筆時間……はありましたが、気力が足りず一文字も書けませんでした。本当に申し訳ないです。


これからも細々と続けていくつもりですので、これからもどうかよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 2人の一年分と3人一年分ってめちゃくちゃ容量が変わるのですが… 単純に365日1095食分差がありますよね? 1日2食にして、とかあるかもしれませんが、プレッパーなら正確に把握するはず…
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