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13.もし1ヶ月の経過と術中に嵌った場合

このまま学園籠城を続けようと思っていましたが、それだと本来私が書きたいものと趣旨がズレてくるしタイトル詐欺になっちゃうんで巻いていきます。


「もう詐欺になってるだろ、いい加減にしろ!」

という批評はぐうの音もでない正論なので勘弁して下さい。

 さて、爆発から約一ヶ月が経った。


 俺たち探索隊が地下の倉庫で食糧や防災グッズ等を見つけた後、それらを予め背負ってきたバックパックに詰めて、無事持ち帰る事に成功した。


 帰還後、物資の分配と並行して、体育道具を用いて山田の身体能力の検証が行われた。

 すると握力、脚力、跳躍力……なんとあらゆる数値が成人男性のおよそ二、三倍程という結果となった。

 この力は爆発の後から身についた物で、完璧に制御も可能との事。


 ヤツら(ゾンビ)の警戒状態と同じ上昇率なので、念のために身体検査もしたが結果はシロ、かすり傷一つ見当たらなかった。


 そして変化が起きていたのは山田だけではなかった。

 測定中、それを見ていた生徒の一人が声を掛けてきた。見覚えがあると思えば、どうやらゾンビが侵入したのを最初に目撃した生徒だった。


 彼の話によると、同じく爆発の後から視力を一時的に強化出来る様になったらしい。


 それを聞いていた長井はすぐに全員を集め調査を開始した。


 検証と実験の結果、十五名もの生徒が何らかの新たな力を発現できるようになっていた事が明らかになった。


 山田のように単純な身体能力の向上や、先程の生徒と同じく目や耳等、身体の一部分のみの強化が出来る者。

 そして驚いたことに、静電気の発生や発火能力などと魔法のような力を持った者まで現れ始めた。


 程度の差はあれ、完全に人体の限界を超えた(チート)

 しかしその本人も外野も、驚きはすれど人外の力を恐れず、非現実的でファンタジーな能力にとても興奮した面持ちだった。流石現代人といった感じか。


 小太りでメガネを掛けた、見るからにオタクな生徒の提案により、これらの力は総じて異能力(スキル)と名付けられ、危険な能力に関しては長井達生徒会の管理下でのみ、使用が許可される事になった。


 上記の十五名以外の人間には、何度検証や実験をしてみても一切の身体的変化はみられなかった。


 ある者は能力が無いことを嘆き、またある者は異能力(スキル)持ちに使い方を教えてもらおうと頭を下げている。


 中でも、意外と子供っぽいのか、無い能力を必死に出そうと顔を真っ赤にして、某亀の波動のポーズを何度も行なっている校長がとても哀れだった。


 ……まぁ、俺も今どきの高校生なので、運悪く異能力(スキル)が無いことには少なからずショックを受けた。

 具体的に言えば、その日の夕飯の親子丼が喉を通らず、比嘉さんにほとんど持っていかれるくらいには。





 それから数日後、二回目の探索が行われ、そこで発電装置を発見。

 長い間放置されていたためちゃんと稼働するか不安だったが、実は清掃員のおじさんが電気工事士の資格を持っていたので無事整備することが出来た。


 およそ一週間ぶりに見る天井の照明は、俺たちの目には少し眩しかった。


 更に数日後。

 体育館の入り口が()()()された。

 警戒しつつ二階から声を掛けると、そこには二十人もの学生達がいた。


 爆発の日、既に下校して校内にいなかった生徒達の一部が戻ってきたのだ。

 彼らは全員、桂琴町の方に遊びに行っており、地下鉄の駅にいたらしい。


 爆発を地下で回避した後、襲ってくるゾンビ達から必死に逃げ、付近の建物に籠城。

 食糧が尽きたので、生き残り全員でそこから一番近い避難所である全安高校まで避難してきたとの事。


 他校の生徒や一般人も何人か混ざっているが、それを当然のように受け入れようとした俺に長井が待ったを掛ける。

 議論の末、説得に成功して学生達を中に入れるが、長井との溝が深くなったのは間違いないだろう。


 その翌日。

 居住スペースと、更なる物資確保のために校内制圧計画を開始。


 いつもの陽動と長井の的確な指揮によって各個撃破する事で、俺たちは誰一人欠けることなく二週間掛けて、学校の敷地全てのゾンビを一掃する事に成功した。

 同時に、まだ回収できていなかった物資も回収して、ようやく完璧な安全を確保できた。


 その日の夜、水系異能力(スキル)を使った校舎内の清掃も終わり、ようやく一息つけた。

 残りは自由時間となったので、俺はいつも通り比嘉さんと食事を摂ったあと、自分の教室に向かう。


 なんだかやけに眠い気がする。体力の管理には自信があるのだが、一段落ついた事で気が緩んでしまったか。

 やらなければならない事はまだまだあるが、それはまぁ明日にしようかな。


 俺は柄にもなく気を緩めながら、静かな教室で布団に包まって眠るのだった。

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