大魔王は考えた
大魔王は考えた。
もう我が子達にコインを持たせるのは止めよう。
知能が足りず人間の言葉が話せない我が子が、人間に襲われたときに投げて気を逸らせたり、命乞いに使えればと持たせたコインなのに近頃はそのコイン欲しさに人間に襲われているのだ。
そもそもなぜ我々側だけが悪し様に「魔物」等と呼ばれるのか。
大地に資源があり、縄張りがあり、それが取り合わねばならないほどの量しかないなら、争うのは仕方がない。
お互い対等な立場ではないのか?
人間どもは我々より非力なことをひけらかし、弱者ぶってみせるが、我々側には知能が足りないものが多い。
せいぜい徒党を組むくらいしかできないし、人間の様に村や町、城など造る術は持たないのだ。
知能と力でイーブンになるだろう。
牙や爪、怪力に対抗し、武器や防具を開発し医療を施す彼らは、個々の力は弱いのかもしれないが、人間と言う集団で考えたとき決して弱者ではない。
それは今まで数え切れないくらい我が子達が屠られてきたことでも証明されている。
我が子達の命も同じ命だとなぜ考えないのか?
人間の言葉が使える個体が増えれば虐殺は減るだろうか?
そう考えた私は我が子を造り出すときに少し魔力を多く込めてみることにした。
試みは成功し、新しく生み出された我が子達は片言だが人間の言葉を使えるようになった。
ただ、私の身体は魔力を少しずつ失い小さく弱くなっていった。
このままでは遠くない未来私も我が子達と同じ様な個体になるだろう。
でもそれも良いのかもしれない。
屠られ続ける我が子達を見守り続けるのも疲れてしまった。
我が子達と同じ様に野に放たれ、片言の言葉を使い、運が悪ければ人間に討たれる、そんな生活も良いのかもしれない。