表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

番外編 香水 その2

「メロディと『ドールチェアーンド~』のフレーズが耳に残るのは、皆異論はないと思うけど」


「耳に残るだけさ。単純なコード進行。要は"売れ線"さ」


「『香水』の歌詞については、ちゃんと聞いてみた?」


「フラれけれどヨリを戻したい、女々しい男の話だろ?」


「ううん、違うよ」


「えっ?」


女は周りを見渡し、外に人がいない事を確かめると、スマホの画面に指を走らせ、流れていた曲をはじめに戻す。


「……!」


そして彼女は歌い出した。囁くように、とても綺麗な声で―――――




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



夜中に いきなりさ いつ空いてるのってライン

君とはもう三年くらい会ってないのにどうしたの

あの頃 僕達はさなんでもできる気がした

二人で海に行ってはたくさん写真撮ったね


でも見てよ今の僕を

クズになった僕を

人を傷つけてまた泣かせても

何も感じ取れなくてさ


別に君を求めてないけど

横にいられると思い出す

君のドルチェ&ガッバーナの

その香水のせいだよ


今更君に会ってさ

僕は何を言ったらいい

かわいくなったね

口先でしか言えないよ

どうしたの、いきなりさあ

タバコなんかくわえだして

悲しくないよ悲しくないよ

君が変わっただけだから


でもみてよ今の僕を

空っぽの僕を

人に嘘ついて軽蔑されて

涙ひとつもでなくてさ


別に君を求めてないけど

横にいられると思い出す

君のドルチェ&ガッバーナの

その香水のせいだよ


別に君をまた好きになる

ことなんてありえないけど

君のドルチェ&ガッバーナの

香水が思い出させる


何もなくても

楽しかった頃に

戻りたいとかは思わないけど

君の目を見ると思う


別に君を求めてないけど

横にいられると思い出す

君のドルチェ&ガッバーナの

その香水のせいだよ


別に君をまた好きになる

くらい君は素敵な人だよ

でもまた同じことの繰り返してって

僕がふられるんだ



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



歌い終わった彼女はブランコからひらりと降りて、少年の方へ振り返る。


「どう? なかなかでしょ」


「う……うん……!」


少年はゴクリと息をのむ。夕焼けを背に歌う彼女の姿は、彼の目にはっきりと焼き付けられていた。


「曲の解釈なんて、正解はないけどさ。私はこの"僕"は、ヨリを戻そうとはしてないと思うの。むしろ、戻せないと悟っている」


「え……?」


「『あの頃 僕達はさなんでもできる気がした。二人で海に行ってはたくさん写真撮ったね』

 付き合っていた頃の"僕"と"君"はとても純粋で、そして若かった。でも"僕"は別れてから人を傷つけて何も感じ取れない、クズなオトナになってしまった。そんな時、"君"から3年ぶりに連絡が来る」


「………」


「多分だけど……"僕"は"君"に対して、『何でもできる気がしてたあの頃』を求めて会ったのだと思う。

 でも、そこにはキレイで魅力的になったけど、タバコを咥えるようにもなった彼女がいた。彼女もまたオトナになってしまって………"僕"が思い描いたあの頃の"君"は、もうそこにはいなかった」


「………」


「そしてそれは"君"もきっと同じだったんだと思う。彼女から連絡してきた訳だしね。二人はもう過去のようには戻れず、楽しかったあの頃に思いを馳せる事しか出来ない。思い出しても虚しいだけの楽しかった日々を、香水の香りが思い出させる。だから『香水の()()』なんじゃないかな」


「……ふぅん……」


「この曲はね、そんな哀しい歌だと思う。シンプルで分かりやすい言葉だけれど、胸を打つよ。だから、私はこの曲が好き」


「う……ん……」


「自分を肯定するために、他の何かを貶める人は多くいる。ヒットしたメジャーな曲=薄っぺらいと勝手なレッテルを貼るなんて、つまらない生き方だよ。香水も良い、デッドマンズ・ギャラクシー・デイズも良い。それで良いと思わない?」


「……かった」


「?」


「分かったよ。とりあえず、この曲をバカにすんのはやめる。………AKBの事も」


「ふふ……君のそういう素直なトコ、好きだな」


「またそうやって子供扱いする……いい曲かもしれないけどさぁ! 一発屋である事には変わりないぜ?」


「あら、一発当てるのは偉大でしょ。当たらない人が大半なんだから。それに、一発屋が二発目を当てられないとは限らない」


そう言って、彼女は優先のイヤホンを取り出して片方を耳につけると、もう片方を少年に差し出す。


「はい」


「えっあっ……!?」


「良かったらさ………一緒に()()()、聞いてみようよ」









https://youtu.be/-KvuKErBbss


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 売れたものが良いとは限らぬ。 しかし、売れるには何か理由があるのさ 40人強のあの人達も商法に疑義があるだけで、作詞や作曲はプロがしてるのだからきっと良い曲がまじっているはずさ。 [一言]…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ