(^ω^)【おでん屋台】のようです
('A`)「らっしゃい!」
( ・∀・)「お酒一本浸けてくれる?」
('A`)「はいよ!」
( ・∀・)「よいしょっと。とりあえずタマゴと大根をお願いね」
('A`)「はいよ!」
( ・∀・)「それにしても大将。今日も冷えるね」
('A`)「そりゃあ2月なんて寒いのが当たり前よ」
( ・∀・)「しっかし、もう新春も立春も過ぎてんだ。
いつまでも冬気分で居られても、人間様が困るってんだ」
('A`)「そりゃ誰に文句言ってんだ?……はいよ。酒とおでんね」
( ・∀・)「そら冬将軍よ。さっさと前線から引いてくれねぇと」
('A`)「アンタみたいな一兵卒の言うことを将軍が聞くかね」
( ・∀・)「こりゃ手厳しい。んじゃ、大将の方から言ってやってよ」
('A`)「嫌だね」
( ・∀・)「そらまたなんで?」
('A`)「冬が長引いてくれると、
アンタみたいなのが金を落としてってくれるからね」
( ・∀・)「ひでぇもんだ。こちとらそのせいで懐が寒いのよ」
('A`)「じゃ、熱々のおでんで身体を暖かくせんとね」
( ・∀・)「おっと。牛すじと昆布ともう一回大根ね」
('A`)「毎度あり」
( ・∀・)「大将、今のはちょいと強引すぎやしないかい?」
('A`)「なんでい。お客様の手前が寂しかったのを心配したんだ。
心温かい話じゃねぇか」
( ・∀・)「自分で言ったら仕舞いよ」
('A`)「商売なんて多少強引にやらないとね。儲けが出ないのよ」
( ・∀・)「そらそうだけど、そのうち強要罪で逮捕されないようにな」
('A`)「大丈夫よ。ちゃんと客は選んでらぁ。
ほら、次一本いくだろう?」
( ・∀・)「いやぁ、よく見てらっしゃる。大将には敵いませんわ」
('A`)「ところで客と言えば、今日はあのアホ面、居ないのかい?」
( ・∀・)「ああ、アイツなら最近は仕事が終わると、
飛ぶように家に帰ってるよ」
('A`)「あれま、付き合いが悪いね。嫌われちまったかい?」
( ・∀・)「いいや。子供が出来たんだってよ」
('A`)「お!そいつぁめでたいじゃねぇか。いつだ?」
( ・∀・)「そんなことは知らんよ。本人が言ってくるまで待ちだ」
('A`)「それで奥さんの身体を気遣ってやってるってか」
( ・∀・)「ん……まぁ、そんなところだろ。
なんせ人生初だ、心配もするだろうよ」
('A`)「そうかぁ、アイツも遂に人の親か。感慨深いな」
( ・∀・)「あぁ、ホント。アイツはいい親になるよ」
('A`)「なんでぃ。いつもは馬鹿にした様な口を聞いてる癖に」
( ・∀・)「馬鹿なのは事実だ」
('A`)「きっと親馬鹿になるだろうな」
( ・∀・)「きっとじゃないな。絶対だ」
('A`)「そうか、あぁ、これでまたお得意様が一人……」
( ・∀・)「……別に、来させようと思えば、俺が誘えば」
('A`)「馬鹿言っちゃいけねぇ。
妻と子抱えた父親が、家族放っぽって酒飲んで良い訳がねぇ。
だろう?」
( ・∀・)「ああ、ごもっともだ」
('A`)「それで家族に放り出された奴を、俺は二人も知ってる」
( ・∀・)「アンタと俺だってんだろう?はははっ!」
('A`)「はっはっは!慣れちまえば気楽なもんだがね」
( ・∀・)「そうだな。三度目を起こさない為にも、もうココには誘わないでおこう」
('A`)「おいおい、別に奥さんと子供も誘って来てくれりゃいいんだぜ?」
( ・∀・)「いいのかい!」
('A`)「ったり前だろ。むしろ客が増えて歓迎だわさ」
( ・∀・)「そいつぁ良いことを聞いた。アイツも喜ぶ」
(^ω^)「アイツってのは俺のことですかい?」
( ・∀・)「おわっ!びっくりした!」
('A`)「お!らっしゃい!噂をすればだね」
( ・∀・)「おいおい。お前、奥さんは大丈夫なのか?」
(^ω^)「今日はお義父さんとお義母さんが家に来てくれてね。
久しぶりの親子水入らずってんで、どっかいけってさ」
('A`)「家から放っぽり出されたわけだ。あっはっは!」
(^ω^)「おかげで身も心も寂しくてねぇ。
大将、とりあえず……」
( ・∀・)「大根、タマゴ、タコ、ちくわ。全部二つづつね」
('A`)「あいよ」
(^ω^)「お!よく分かりましたねぇ!」
( ・∀・)「馬鹿。何年一緒に飲んでんだ。
お前が最初に頼むタネなんて大体分かんだよ」
(^ω^)「ふっふっふ。じゃあ、俺がなんで今日ここに来たか分かります?」
( ・∀・)「向こうの家族を邪魔しないようにだろう?」
(^ω^)「そりゃ、家を追い出された理由ですよ。
他の理由がなきゃ、わざわざこんなしみったれた屋台なんて来ませんよ」
('A`)「おい」
( ・∀・)「うぅん?なんだ?」
(^ω^)「ヒントは、ここに来れば『ある人』に会えるからです」
( ・∀・)「そりゃどうせ俺だろ?
俺に会いたいなんて、気色悪ぃな」
(^ω^)「あれ?気付いて無いんですか?」
( ・∀・)「なにが?」
(^ω^)「今日誕生日ですよ」
( ・∀・)「え?俺が?」
('A`)「マジで?」
(^ω^)「はい。二人共気付いてなかったんすか」
('A`)「まぁ、この年になると、正直どうでも良いしなぁ」
( ・∀・)「祝ってくれる家族が居るわけでも無し……」
(^ω^)「だーかーら、そんな寂しいおじさんを祝ってやろうと駆けつけたんですよ」
('A`)「かぁ~泣けるねぇ。可愛い部下じゃないか」
(^ω^)「というわけでこちらがプレゼント、純米大吟醸となりやす」
('A`)「おっと、そりゃあ山形の高ぇ奴じゃねぇか!
なかなか手に入らないぞこりゃあ……」
( ・∀・)「……おぉ……ありがとう……!」
(^ω^)「大将、持ち込み大丈夫だったよね?これで浸けてもらえる?」
('A`)「え?いや、構わんが……吟醸酒だろ?
冷やのままがいいんじゃないか?」
( ・∀・)「……いや、浸けてくれ」
(^ω^)「酒造の人が燗でも美味しいって言ってたし、
この人、温かい酒が好きなんだよ」
('A`)「ま、そっちが良いなら構わんがね」
( ・∀・)「どうだ。大将も飲んでみるか?アンタも好きだろう?」
('A`)「お、良いのかい?ありがたいねぇ。
じゃ、俺も燗でいかせてもらおうかね」
(^ω^)「っと!お誕生日会なのにケーキがねぇや」
( ・∀・)「ガキじゃあるめぇし」
('A`)「このおっさんは大根にからしで十分だよ」
(^ω^)「そうですかい?ならいいんですが」
('A`)「ほら、浸けてやったぞ。それじゃ主役さん乾杯の一言」
( ・∀・)「えぇ?」
(^ω^)「ほらほら。お願いしますよ」
( ・∀・)「しょうがねぇなぁ……ん、うん。
え~今日は、祝ってくれて、本当にありがとう……え~
……乾杯」
(^ω^)「乾杯!
('A`)「乾杯……ってもうちょっとマシにならんかったのか?」
( ・∀・)「しょうがないだろ?慣れてないんだ」
(^ω^)「ま。っぽくていいお」
('A`)「……おっ!こりゃいい!」
( ・∀・)「味が沁みるねぇ……」
(^ω^)「……自分用にもう一本買っときゃ良かったかも」
('A`)「ついでに俺の分も頼むわ」
(^ω^)「大将は自分で買ってこの店に置いてくれお」
('A`)「こんな旨い酒、客に飲ませてたまるかってんだ」
(^ω^)「いや、飲ませろよ」
( ・∀・)「……それにしても、お前がこんなサプライズを用意してくれるなんてなぁ」
('A`)「ホントホント。どういう風の吹き回しだい?」
(^ω^)「いやいや、そんな滅相もない!日頃のお礼だお!」
('A`)「こりゃあ、怪しいな……」
( ・∀・)「……」
(^ω^)「うぅっ……いや、あの、実は……」
( ・∀・)「やっぱりか。なんだ?」
(^ω^)「年末頃、子供が産まれることになりまして……はい」
( ・∀・)「それは知ってる」
(^ω^)「出産祝いの方に、色を付けてもらいたいなぁ……なんて」
( ・∀・)「……」
('A`)「……」
(^ω^)「燗酒だけに、僕の懐も温めて……って」
( ・∀・)「……ぷっ」
('A`)「あっはっはっは!
お前さん、いくらなんでも面と向かってそれは無いだろ!」
( ・∀・)「はははっ!そんなこったろうと思ったよ!」
(^ω^)「へ……へへっ」
( ・∀・)「安心しろ。たっぷりとお祝いをしてやるよ!」
('A`)「おっと。俺からも贈らせてくれ。
いつも贔屓にしてくれる礼も兼ねてな」
(^ω^)「あっありがとうございます!」
( ・∀・)「よし、じゃあ今日は俺のおごりだ。好きなもん食え!」
(^ω^)「え?いやいや、主役に金を出させちゃ男が廃れます!
ここは私が!」
( ・∀・)「いやいや。お前は子供のために金を溜めておけ」
(^ω^)「いやいや」
( ・∀・)「いやいや」
('A`)「二人共しょうがねぇなぁ。
今日のところは、俺のおごりでもいいんだぜ?」
( ・∀・)(^ω^)「ごちそうさまです!」
('A`)「おい」




