そのままの夜*兎とチャック
眠れない。
恐怖と不安が隣に座る。
あるがまま。ありのまま。
全てを受け入れようじゃないか。
君達は僕であり、友である。
楽しいダンスを踊ろう。
恐怖と不安と僕の楽しいダンス。
素晴らしい時間かもしれない。
あれほど憎んだ恐怖。
あれほど嫌悪した不安。
楽しい時間を共に過ごしてみれば、
心はゆっくりと落ち着いてきた。
ありがとう。また踊ろう。
素晴らしい世界の中で。
兎が一羽やって来た。
白地に茶色のまだら模様。
「やぁやぁやぁ」と、彼は言う。
「はいはいはい」と、僕は言う。
「おいおいおい」と、彼は続ける。
「なんですか?」と、僕は問う。
「あ、いや。チャック開いてますよ」と、彼は告げる。
「あっあぁっ、どうもありがとうございます。」と、僕は答える。
午前四時の四番線。
まだら模様の兎は、僕へ向かって会釈をする。
そして電車へ飛び乗り消え去った。