火澄乃亜
◆名前
火澄乃亜(ひずみ・のあ)
◆性別・年齢
女。
現在十五歳。
◆外見
日本人。黒目黒茶髪。髪の長さは肩を越えたくらい。少しくせっけ。
小柄で、十そこそこに間違えられることも多い。かわいい系。
◆経歴
高麗分家火澄家の出。家族に恵まれていなかった。双子の姉がいたが、乃亜が幼いころから天才ぶりを発揮したことにより、彼女は高麗本家に預けられることになる。離れて育った姉妹のうち、姉が六歳の頃高麗因子を発症し、死亡。その直後に乃亜自身も高麗因子を発症する。自身の余命が最長で三十までと知った乃亜は薬の開発に着手。死にたくないと努力する一方で高麗家に預けられてのちどこかであった遠慮を放り捨て、様々な分野の学問にのめりこんだ。八歳のころ、彼女は魔法に依らない亜空間転送理論を開発。二年かけて実証研究を行い、十歳の頃にアイズにそれを報告した。この際、実用に足るレベルの亜空間転送を行うため、必要なキャパシティをもつ人工知能「ノアズ・アーク」と動力源、アムリタも開発している。
わずか十歳の子どもがそれだけの理論を発表したということは驚きを伴っていたが、アイズ、高麗家は昔から異端を受け入れる素地があったため、乃亜もそう忌避されることなく、理論は約十年かけてアイズで取り入れられることが決まった。アムリタは即時採用。アムリタを利用した発電設備と共に生産していくことになる。乃亜は開発班長として迎え入れられ、NAプロジェクト用のプロジェクトチームが集められた。
総勢三十余名のプロジェクトチームは乃亜の理論を段階的に実現していくことにした。ちなみに「ノアズ・アーク」は乃亜の名前とノアの箱舟をかけた仮称だったのがプロジェクトチーム発足時にそのまま採用された。当時のアイズのメインコンピュータは「アルファラク」。最終的に開発するのが「ノアズ・アーク」ということで、悪乗りしたチームが第一段階を「アダム」、「イヴ」、第二段階を「アベル」、「カイン」、第三段階を「ミカエル」、「ラファエル」、「ウリエル」、「ガブリエル」として聖書の呼称を採用した。最初に開発された二つのシステムのうち、実際に採用されたのはイヴ‐システム。さらにカイン‐システムが採用され、四大天使の名を冠したコンピュータは後にアイズのサブコンピュータ「アーケインゲル」に転用される。「Archangel」をアーケインゲルと読むのは、プロジェクトリーダーの乃亜が読み間違えたため。
転機が訪れたのはプロジェクトの発足から三年後、原作開始から二年前。アーケインゲルを開発し、実験運用し始めた直後。最高司令官に就任した高麗晶樹が、プロジェクトを無期限延期にしたことによる。NAプロジェクトでもたらされるテクノロジーの進歩が飛躍的すぎることを警戒した晶樹の言にチームは最終的に折れ、乃亜の科学を彼女一人に頼ったものとしないため、多くが開発班に転属。乃亜の下で様々な新技術を生み出している。
現時点での代表的な発明はアムリタ、そしてアムリタを利用した発電施設。稔が使用する演算処理の補助装置や情報系列隊が使用する同調装置も乃亜の発明が基本となっている。同調装置の方は一章の段階でまだまだ改良の余地があり。人工知能ノアの開発の後、サイバースペーススコープ(通称スコープ)として完成。スコープ自体はAR、E-フィールドを展開するとスカイボードのように現実に物質的な影響を与えるのでARでもVRでもなく、E-ワールドにダイブするのはVR。フルダイブはVRというより明確な世界間転移であろう。E-フィールドはMR(「VRは仮想現実、ARは拡張現実。E-フィールドはどっちでもないわ。MR――複合現実よ」「現実的なもの、空間に仮想的なものを融合させる。現実から切り離された情報を作るのが仮想現実、現実に知覚情報を加えるのが拡張現実なら、複合現実は仮想に実体を与えるものよ。そこには明確な存在がある」)。
物語の中ではNAプロジェクトを晶樹に内緒で再始動させ、E-フィールド実証実験を行う際、原因不明の事故で第四世界E-ワールドを生み出すに至った。
魔法使いたちが魔術師たちを攻撃した際、司令室でその様子を目の当たりにする。実戦の空気に気おされていたところで魔術師たちの非人道的な実験の様子を見、また人を救うための研究であったディーターの研究が悪用されていたことを知った乃亜は言葉にできないほどの衝撃を受ける。彼女のターニングポイントともいえるだろう。
自分の行いを反省し、その危険性を認識した乃亜だったが、死にたくないという思いの間で深い葛藤にさいなまれることになる。自身の延命について諦められなかった乃亜はノアズ・アークを欠陥をもったシステムとして完成させることにし、それについて晶樹に認めさせる。たった一人、最優先順位者がいなければ機能を百パーセント発揮できないようにプログラミングした。最優先順位者は休眠中のノアズ・アークの防壁を抜き、ノアのコアプログラムに直接接触した段階で自動登録される。はっきり言えば欠陥品もいいところだが、晶樹はその危険を受け入れた。
その後、乃亜はそれまでもほとんどしていなかった自重を遥か彼方に放り投げる。それまで案はあったものの実際の運用に問題がある、実現性に乏しいものをすべて含めて「乃亜の凍れる遺産」として人工知能ノアズ・アークの奥深くに封印。この中には後に水津風秋が使うことになるハイパースリープ装置や恵那たちが類似したものを開発したフルダイブ技術も含まれている。
その後も開発班の下で「アイズの科学を百年分進歩させた」。
恵那を保護し、彼女の世話を何くれとなく見ていたことが彼女の精神を成長させる。その後十二年間アイズを支え続け、二十七歳の若さで亡くなった。高麗因子の根治療法はつかめず、彼女はそれを自らを模した人工知能ノアに託す。
◆性格・特徴
もともとは引っ込み思案な性格だったが、双子の姉が亡くなったことを契機に自重を捨てる。自身の生存の可能性をつかむため、あるいは自らの足跡を残すために研究に没頭。
ただし当初、彼女は自身が危険なものを生み出す可能性については楽観、あるいは度外視している面があり、それを危険視した晶樹によって何度か実験の中止を求められている。晶樹が最高司令官に就任したのちは開発班の監査役にルーを据え、彼女がのっぴきなく危険な実験を強行しようとしたときは止められる体制を何とか作り出した。それでもその監視網を逃れようとする乃亜は、研究の根本的な動機が自身の延命ということもあり、周囲が同情的。彼女が暴走するのに一役買ってしまった面もあり、それは最終的にE-ワールドの創出という結果に表れる。
E-ワールドが生まれ、その時彼女の上司であった琴音が責任を取らされたのちも事態の危険性を十全に理解していたとは言えない乃亜だったが、晶樹たちが広域殲滅兵器の工場に攻め込み、その組織の行っていた実験の非人道性を目の当たりにしたことにより成長。自らを省み、自身がいつそうなってもおかしくなかったこと、また全くその気がなく、人命救済のために研究を行っていた科学者ディーター・フォン・ローゼンクランツの遺伝子工学が結果的に百万人以上の人間を殺すことになったことに戦慄する。物は作った瞬間から制作者の手を離れる、と危惧していた晶樹の言葉を初めて実感した形である。
子供らしいといえば子供らしい性格をしている。世間知らずで忠告を受け入れる度量がない。人生経験不足。ついでにのめり込むと止められないタイプ。
恵那にかまうことで精神的な成長を得る。琴音が亡くなったことも拍車をかける。