高麗晶樹
◆名前
ヴィルフレーゼ・テレシアス(禊ぎの劫火・およそ炎の中で最上の魔法)
日本名は高麗晶樹
◆性別・年齢
男
アーバに生まれてからはすでに百年程度。前世含めて二百年足らず。
◆外見
本性は二藍の髪に朱金の瞳。「晶樹」は黒髪赤目だが、どちらの姿の時も共通して右の眼の下に一筋の傷がある。
晶樹は典型的な魔法使いの体型。特記するほどの特徴はなく、顔だちも整ってはいるものの、記憶に強烈に残る個性は目の色と傷だけ。
本性も、体型はほとんど変化がない。容貌はこちらの方がより整って凄みを増している。
声が非常に音楽的。
◆経歴
『暁と曙の狭間』ではアイズの最高司令官。『聖石物語』『運命なんて知るものか!』に登場する高麗祥鋭・優姫兄妹の母方の大叔父にあたる。いろいろ苦労性な人物。
右の眼の下の傷は初生の時、幼少期に外部からの刺激によって与えられたもの。端的に言えば切り付けられた。自己治癒能力が未熟な時分だったので、右目は完全に視力を失っている。現在は自ら開発した魔法によって視界をカバー。本体が視力を失っているので、当然仮代である晶樹も右目は見えていない。
初生はアニル、夢幻時代。事故で次元外へ吹っ飛ばされ、オルグァッシェの発見者となる。夢幻時代はアニルが崩壊し、時の神ヴィーザードが欠け、次元神ヴェローが死んだ影響で次元がかなり不安定になっており、ヴィルフレーゼが次元外へ弾きだされたのはそれが遠因でもあるだろうと思われる。
その後、オルグァッシェはアニルからの魔法使いが流入し、戦いを巻き起こしたことにより、その世界に存在した独自の理とアニルの理がぶつかり合い、結局崩壊した。現在のオルグァッシェは存在するかどうかもわからない、時間が流れているのか、生きているのか死んでいるのか、何かがあるのかないのかもわからないような世界になってしまっている。
ヴィルフレーゼを含め、オルグァッシェに存在していた一部の魔法族は理が崩壊した余波で再び世界から弾き飛ばされ、アニル(アーバ)に転生。世界が崩壊したという事実は戦争を行う者たちを一層魔術師として迫害させ、また魔法族にとっては消えぬ汚点、過ちとして種族全体で共有されることとなった。オルグァッシェで光族vs闇族の戦いが起こっていたころはオルグァッシェ側の第三勢力として両者の間に介入していた。魔力断裂はこのころ開発した彼のオリジナル魔法。世界を武器にする、まさに最終兵器。
オルグァッシェ崩壊の間接的な原因になったことで強い罪悪感を抱えている。
その罪悪感に彼が次に生まれ落ちた世界、アーバで魔法族を保護する組織の中核の一族に生まれたという事実がブレンドされ、魔法族のため、と自身を抑えてアイズに加わっていた。大戦の際、人間とかかわることに対して非常に忌避的だったのはオルグァッシェの経験があったため。戦争終結に力を貸すことに前向きになり、アイズに号令を発した直後に広域殲滅兵器の一件があり、彼自身の身体的、精神的なダメージは相当なものだった。それを押し殺して「最高司令官」に徹するが、乃亜の実験強行や琴音の危険性、親友であるディーターの死を感じ取ったことなど、イレギュラーにストレスは蓄積され、かなり危険な状態であった。
ウィードルセイラの脱走の時にはそのストレスが一部非常に面倒な形に爆発し、後先考えず、というか後先考えているんだけどそれなんかおかしいよね!? もっと別の手段があるんじゃない!? という外野の叫びを無視してウィードルセイラと一対一の真っ向勝負で彼を打ち負かす。いろいろ考えるのが面倒になってほっぽりなげて最短ルートをたどったともいう。ストレスはためて爆発させるタイプ。短絡的な思考の結果、そのあとの作戦に参加できるか微妙なところになって後悔していたが、態度を軟化させたウィードルセイラが夢幻時代の生まれであり、晶樹を回復させたことで結果オーライ。
使えるものは何でも使う人なので、ちゃっかりウィードルセイラもその後の作戦に組み込む。本人からは事後承諾。ウィードルセイラに本部の結界をすべて任せることで、同時に二つの戦闘領域を確保する結界魔法使いたちの人数をそろえることに成功する。
晶樹自身はおそらく広域殲滅兵器には人造魔法使いが使われていたと考えていた。人工聖石は失敗するとサズルートと呼ばれる非常にもろい聖石にしかならず、ちょっとの衝撃で魔力爆発を起こす。そこまで頻繁に魔力爆発の痕跡を見逃すはずがないと考えた晶樹は、人間のもつ遺伝子工学と魔術師の人造魔法使いの研究が合わさり、それが広域殲滅兵器に転用されたのだろうと考えたのである。自身が突入した工場でリルティアナを見つけ、人造魔法使いがすでに生み出されていることに動揺し、彼女を殺すべきか否か、判断に迫られる。晶樹は結局リルティアナに望まずしてこの世界に生まれ落ち、帰還もかなわず、衝動に襲われて戦いに身を投じる自分たちの影を重ね、殺さずに保護した。
保護した後で精密検査の際、リルティアナが完全に魔力タンクとして使われていたであろうこと、また彼女に魔法使いとしてなら絶対に備わっているはずの器官、ストアがないことが判明する。ディーターから晶樹に託されていた聖石と超獣に関する研究から彼女が人造魔法使いではなく人工聖石の完全体である可能性が浮上。再び選択を迫られる晶樹だが、「もしものときは自分が責任もってこの子を殺す」とリルティアナを生かすことに。
その後はアイズの最高司令官として大戦に介入。する傍ら、リルティアナの面倒を見たり、空也と様々なことを語ったりしていた。
その際ひょんなことから空也が持っている記憶と魔法族としての記憶が食い違うことが判明。魔法族の記憶が操作されているのではないかという疑いを抱く。まず疑問だったのが、エンシェント・ミスリルにアニルにないものが単語として存在していること(たとえば太陽や星)。神話ではアニエスが止めようとしたのに光族と闇族の戦いが続いているのも謎。光族と闇族で同じ言葉がつかわれているのも謎。とにかく不審な点が多いことに眉をひそめていた晶樹は、空也にそれをぶつけた時、空也が「時の巫女が殺害されたことによって世界が自らを崩壊させようとし、一柱が欠け、世界は不完全な形になった」と自身には全く存在しないことについて触れたことで両者の記憶が食い違っていることがわかった。二人はそのあと記憶を突き合わせ、時の巫女を失ったことによる世界の暴走、人に向けられた悪意、世界変動を間接的に引き起こした光族と闇族との確執などを中心に魔法族に誤った記憶が植え付けられていることに気づいた。
晶樹はさらに、自分の研究、力食の時に莫大な魔力が「なにか」に使用されていることをつなぎ合わせ、力食とは記憶をいじる魔法を何者かが行使しているのかもしれない、という仮説を立てる。この時は晶樹、空也とも半信半疑。
晶樹がこのことについて真実を知るのは恵那が暴走し、晶樹がそれを魔力断裂で止めた時。魔力断裂は晶樹の中にあった魔法陣さえも破壊し、彼は古の真実を知る。
時の巫女ヴィーザードは自らが死ぬとき、世界が世界そのものを崩壊させようとしているのに巻き込まれ、神としての存在さえ失いかねなかった。最高神が欠けるという、世界にとって最悪のシナリオを避けようとした結果、一番手近にいてともに世界の狂乱に巻き込まれた時の民、シャルナー(星の守護神ファースシータリナ)に神としての名と力を渡し、彼女を何とか輪廻の内に送り返す。ヴィーザードはこの時消滅。シャルナーは転生。
世界の何もかもを巻き込む自殺に対して生き残った時の民は人々を聖域に避難させ、この崩壊を唯一止められるであろう神竜を待つ。最愛を亡くした神竜は、けれど世界とは逆に時の巫女が愛した世界だからこそ、この世界を守ろうとした。
相反する両者。結局世界の暴走を止めることはできたが、世界は聖域を残して滅び、残った聖域同士がつながり、今のアニルとなった。けれど世界の怨嗟は世界樹という魔法陣の形で残り、世界に争いの種を残す。それが力食であり、記憶の改変であり、そこからつながる光族、闇族という魔法族を二つに別つ戦いだった。
神々はほとんど世界樹に押されっ放し。神竜は自らの身を五つに砕き、来る日まで世界中に隠れて時を待つ。時の民たちは世界樹を斃そうとするものの、逆にクィルが世界樹にとらわれ、なんとか残る二人の時の民は輪廻の輪に逃がす。このまま争いが激化すると魔力汚染やら世界の揺らぎやらで魔法族という種自体が滅びる感じだったが、神々は一つだけ希望を送り出すことに成功する。それが「世界を変える魔法式」であり、その存在がリルティアナ自身であった。ヴィーザードが予言した「千と百の夜が訪れる日、すべての力は解き放たれる。その時こそ戦いは終わりに向かう」というのは千百回目の力食の日で、この力食の日には記憶を書き換える魔法ではなく、その反転魔法が完成し発動する。このへんは『千と百の夜をこえて』の世界。反転魔法は神々や時の民たちがそろったことで発動したことにするか、作ったのは誰か、そのへんの細かい設定はまだ考えていない。
とまあ、そんな世界そのものと生きようとしたものたちとの闘いについて視た晶樹はその記憶を空也に託して一度死ぬ。
・『聖石物語』
一度死んだ晶樹は執念でわずか六十年足らずで転生する。が、転生先は残念ながらアニル、闇族の世界。晶樹は肉体の覚醒と記憶や力の覚醒が同時ではなかったタイプで、光族だと気付かれないまま育つ。十数歳のころ予言の夜が訪れ、そののち戦争終結。晶樹を育てた人が終戦反対派で、彼はそのまま対光族の戦いに身を投じることになり、アーバでアイズを襲撃した、時に空也が晶樹の存在に気づく。事情を知らないまま、空也は晶樹がアイズを襲撃してきたことに動揺し、激高し、力を暴発させたことにより戦線終了。
記憶が戻っていない晶樹は空也の怒りについてはさっぱりわからないまま。彼の記憶が戻った時、晶樹は恵那に自身の存在についての決断をしてもらうため、アニル、世界樹の残骸のもとに連れ出す。
ちなみにこの時恵那をアイズから引き離そうとする空也と、アイズの中で恵那を守ろうとする秋とが激突。恵那に乞われた晶樹はこの両者の戦いを魔力断裂で強制的に終了させる。さすがにこのレベルになった空也と魔法の扱いに長けた秋とを同時に相手にするのは無理。もともと勝つために手段は選ばないタイプ。
世界樹の残骸にあてられて恵那が自身の魔法式を発動させてしまったのは完全なる誤算。
◆性格・特徴
性格は温厚で寛容。ただし頑固。同じ間違いを何度も繰り返すような場合でも怒ることもあきれることもしない根気強いタイプで、丁寧に指導することに苦がない。遠慮なく怒鳴りつけるのはルーや乃亜のようなごく少数人だけ。ある意味甘えていると言えるのか?
保守的な一面もあり、特に人間社会になるべく影響を与えないよう、慎重にふるまっていた。一度守りに入ったらなかなかの頑固者。
大量の情報の推移からその先を推測する判断推理能力に長けており、研究者としても優秀。特にアーバと魔法族との関係についてを自身のおおざっぱな研究テーマにしており、過去のアーバの魔力分布や濃度、生まれる魔法使いたちの潜在能力など多角的なデータから「予言の夜」が近いのではないかという推測をしており、それは空也が生まれたことにより彼の中で確信に変わった。
「困難は分割するもので発想は転換するもの」が口癖でモットー。常識はひっくり返るもの。
精神的にストレス過多。いろいろなことに考え至ってしまうため。打たれ強いけれど、限度はある。
琴音と恋人同士。最初は小さな琴音を妹というか、恋愛範疇外にしか見ていなかったが、告白され続け、ある時不意に琴音が妙齢の女性になったことに気づき、怖くなって「寿命が違う、種族が違う」と拒絶。したら琴音が泣いて(「そんなまだ来てない未来のことで振るなら、素直に私が好きだってみとめて、一緒に生きなさいよ!!」)、部下が憤怒の表情で琴音を追うように言う。いつの間にか琴音に惹かれていた心情はその部下には丸わかり。両片思い……ではないな。琴音から晶樹への矢印は明白で、晶樹から琴音への矢印は自覚していなかった、て感じ。短編で書きたいな。
世界に疑問を抱き続けている人。魔法族の記憶が何らかの方法によって一部奪われているのではないかと疑っている。
◆戦闘スタイル
エンシェント・ミスリルの使い手。イラクス式も使える。得意は「炎蛇」。自身の名の通り、炎系統に適性が高い。
超獣はアイディン(九尾の狐・特異種)。魔導杖もゼラクトを使用している。魔導具の形態は銀環。剣は白。どちらも盲目の鍛冶師、刀鋳の作。
戦い方は近中距離専門の魔法剣士。炎蛇はほとんど発動しっぱなし。白と炎蛇は魔力を食うため、空也との戦いではどちらも使用できなかった。白は魔力での破壊力のブーストが可能。刀型ではあるが、時々バスターソードのような使い方をしている(切るというより叩き潰す……)。魔力が万全の時は白と炎蛇に加えてアイディンを利用して魔法も展開してくるので戦いが非常に多彩。ついでに体質として他人からの魔力の影響を受けにくいというのがあるので、多少の魔法は気にせず突っ込んでくる。高速戦闘も可能なので、接近されると本当に厄介。
◆セリフ集
「そうだね。……ルーはきっと、世界を憎んでいる」
「考えすぎは僕の悪い癖だ。大事なのはね、僕はこの子を守るつもりで、生かすつもりがあるってことだよ」
「えっ、僕嫌われた!? ねえ僕嫌われたの!?」「仕事しろ最高司令官!!」(by空也)