表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/26

玉の負債

 




 七番目の勝負。忠顕ただあきは「伊勢」、玉は「駿河」と答え、審判の章有あきなりは千種を勝者とした。


「はあーっ、はっはっはっ! これで、十万六千貫の勝ちだ。あー、たまらん、よし次だ、次行こう」


 玉の後ろに控える吉永は、額から冷や汗を垂らす。警固衆は、オロオロとしていた。



 八番目の勝負、忠顕は「伊賀」、玉は「武蔵」と答え、章有は、忠顕を勝者とする。忠顕は、狂ったように喜んだ。


「ひゃあーっ、はっはっはっ! これで、百十万六千貫、百十万六千貫だ。ひゃあーっ、はっはっはっ!」


 さすがの吉永も顔を青くした。忠顕は、ねちっこく玉に声をかける。


「おっ、玉あ、玉ぁ、こんな大金払えるのかぁ、ええ、玉ぁ」

「千種様、負けた者は、必ず支払わねばなりませんか」と玉が聞くと、


「当たり前だ! 一銭でも払えなかったら許さん! 賀茂氏の領地を差し出せ! 神社を売れ! たくわえた奉納品を全て差し出せ! 玉の身体で支払え! 足りなかったら巫女を全員差し出せ!」


 と忠顕は怒鳴った。そして「中原! 取り決めにちゃんと書いておけ!」と言うと、また「くーっ、くっくっっ、はーっはっはっはっ!」と、ご機嫌になって笑った。


「良いか」と章有あきなりは玉に聞いた。

「つまり、最終的に支払えない場合は、領地、財産、身体を全て差し出すという事ですね」

「そうだ」

「分かりました。ではそのようにお願いいたします」


 玉は頭を下げた。章有は、少し申し訳ないような顔をして、その事を取り決めに書き加えた。




 九番勝負が始まった。忠顕は「これに勝ったら一千万貫。これに勝ったら一千万貫。ヒヒヒ…」と血走った眼で舌なめずりした。忠顕と玉は、解答を記した短冊を章有あきなりに渡す。


「玉、栂尾。千種様、宇治。勝者…」


 章有あきなりが勝者を決めようとした時である。


「かーっ、かっかっかっ。やっておるな。お、千種殿、玉殿」


 ずかずかと、佐々木高氏たかうじが廊下を歩いて来た。忠顕は目を見開いて驚く。


「さ、佐々木殿! なんでお主がここに」

「失礼します」


 そこへ足利尊氏たかうじも入って来た。その後ろには、忠顕の家人が、あたふたして付いて来ている。


「千種殿と玉の闘茶勝負を見物に来たのじゃ。かっかっかっ」

「なっ、な、何故……」忠顕は口をぱくぱくさせる。

「勝負は、誰もが観覧できる……ですね」と尊氏。


「佐々木様、足利様、お越しくださり、ありがとうございます」と玉は三つ指をついて礼をした。

「おお、玉殿、手紙を貰って飛んできたぞ。かっかっかっ」

「頑張ってください」尊氏は、真面目な顔をして、頭を下げた。


 そこへ次々に人が入って来る。闘茶の会場はがやがやと賑やかになってきた。







挿絵(By みてみん)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ