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元神様と女神の冒険日記  作者: ふとんむ
3/3

第三話

このお話を開いてくださりありがとうございます。


「ぷー!」

 茂みから何かが現れる、そう思った瞬間。

 俺に聞こえたのは何かの動物の声のような物。そして、俺の顔面に向って飛び込んでくる何かだった。

「ぐあっ?!」

「カケル様?!」

 何かがぶつかった様な衝撃と同時、顔にへばりついたそれを手で引き剥がそうとする。

 力を入れて引き剥がそうとするが、何故かそれは取れずにへばりついたままになっている。

 触っている感触からしてまるで餅か何かが伸びたりするような感覚みたいだが…。

「……イリューシア、俺は一体今どうなっているんだ?」

「ぷー」

「いや、ぷーじゃないだろう、ちゃんと喋れ」

「あの、カケル様? それを言ってるのは私じゃありませんから……」

 そういえば、この声は茂みから現れた何かが発していた様な気がする。しかし、いい加減視界が防がれるのは困るな。

 たぶん、イリューシアがすぐに排除したりしていない以上、そこまで危険な何かじゃない様子だが……。

「ええ、と……カケル様の顔に今張り付いているのが、その、先程話したプルリンなのですが……」

「ほう、こいつがか……俺の顔に一撃を与えるとは中々いい根性をしている魔物らしいな。ええい、いい加減離れろ……!」

 言いながら、再度そのプルリンとやらを強引に引き剥がそうとすると今度はあっさり俺の顔から離れてくれたようだ。


 漸く見える様になった視界に飛び込んで来たのは、白に輝く半透明のスライムの様な何かだった。

 顔はおろか、発声器官も特には見受けられず今は黙って俺の手に掴まれてぶらりとぶら下がっている。

「何か妙に眩しい奴だな、俺は弱いというからもっと地味な奴だと思ってたんだが」

 普通は青だとか赤だとか、そういう地味目な色から弱いのは出てくるのが鉄則だろうに。

「ぷー」

「……いや、ぷーじゃなくてだな。おい、イリューシア、これはどういう事だ」

「珍しいですね、この子、ユニークモンスターじゃないでしょうか?」

「ユニークモンスター?」

 いわゆる、レアモンスターだとか珍しいタイプのモンスターという事だろうか。

 まさか初見からそんなパターンに当たるとは……。


「ベースは間違いなくプルリンですが……この子、属性が……あぁ、なるほど。そういう事ですか」

「知っているのか、イリューシア」

「ぷー?」

「ええい、余計な所で会話に混ざるのは止めろ」

「ぷー……」

 俺が言うと、掴んでいるプルリンはまるで怒られた子供かなにかのようにしょげているかのように見える。


「まず、普通のプルリンですがこの様に発声する様な事はありませんね。上位固体でも言語を理解する固体は確認されていないです。

 ……何より、私達に対して敵意が見られません。カケル様に飛び込んで来た時は驚きましたけれど」

 なるほど、確かにぶつかった時に衝撃を感じたがどうやらダメージは入っていないらしい。

「じゃあ、どうしてこいつは俺に飛び込んで来たんだ?」

 とりあえず掴んだままのプルリンをその場に放してみる。

 ぽよん、とその場で跳ねて地面に着地。どうやらこの場から逃げる心算はないらしい。

 先程叱った俺からはやや距離を開けて、イリューシアの方へと近づいている。

「その、少し言い難いのですが……仲間か何かを見つけた様な感じだったのではないかと……」

 ほう、つまり俺はプルリンとかいう魔物と同じだという事か……。

「……物凄く納得がいかんが、まだ説明に続きがあるな? ある筈だよな、イリューシア。正直、それだけだと物凄くショックを受けるぞ、俺は」

「大丈夫ですよ、悪いお話じゃありませんから」

 そういって苦笑するイリューシアは説明を続ける。


 どうやら、このプルリンが俺に妙に懐いているように見えるのは理由があるらしい。

 この世界には7種類の属性が存在する。

 まず、基本的な火、水、土、風。その4つの内のどれにも属さない物が無属性。

 そしてさらに特別な属性として天と冥があるのだそうだ。

「先程、属性がどうこうと言っていたが……」

「ええ、基本的に通常の方は無属性ですし、そういった特徴は普通は持ちえていません。せいぜい、どの属性の魔術が得意だとか得手、不得手のお話になると思ってください。魔物となると話が別なのですが」

「……ふむ、それでこのプルリンは何の属性なんだ?」

「見た目もそうですが、私達を見て敵意もほぼ見受けられない事から天属性の魔物ではないかと。

 基本的に天属性の魔物は聖獣ガーディアンとして扱われます、滅多に個体自体も生まれませんし……人間の中にはそれらを高く取引したりする事も珍しくはありません」

「ふむ、もう一つの冥属性を持っている場合は?」

「大体が強力な個体であるですとか、知性のある魔族などが挙げられると思います。必ずしも一定ではありませんが」

「こいつが聖獣なあ……もっと格好いい何かのイメージがあるんだが、あ、こら、足にへばりつくんじゃない!」

「ぷー!」

「聖獣は魔物使いであれば、使役するのは一種のステータスなんですよ。メジャーな物だと“疾駆する氷原”ツンドラウルフ、“知恵の猫”スフィンクス辺りでしょうか」

 俺の呟いた言葉に講義をしたいらしいプルリンは先程まで離れていた距離を詰めて俺の足に張り付いている。

 ……何か動物にでも懐かれた様な気分だ。

 その様子を見て、くすくすと笑うイリューシア。

「恐らく、カケル様の魂から発せられている力を読み取ったのでしょうね。カケル様の属性への親和は天属性が一番高いのは確実でしょうから」

 ふむ、もしかするとあの完全に読み取れなかったあのスキルの影響か……?

「──そろそろ良い加減、俺がどんな神とやらだったのか具体的に教えて欲しい物なんだがな」

 どうやら、イリューシアにはそれをわざと教えるのを避けようとしている節がある。

 これまで聞いているのはどういった性格だったか、或いはどういった功績を残したか。

 実際にその神とやらの名前は聞いていないし、どういった力を持っていたのかも俺はまだ知らない。

「大きな力を持ちながらもそれに慢心する事無く、何よりその強大な力を振るう事を嫌うお方でした……必要以上に人に干渉すべきではないとも仰られていたでしょうか」

「力があるのに、それを使わないのか? それだけ力があるのなら、人を助けてやれば良いと思うんだが」

「……えぇ、確かにそうかも知れません。ですが恐らく、人の可能性を一番信じたのはあの方でした、カケル様。それこそ──」

 それ以上、イリューシアは言葉を先に出す事は無かったが恐らく言いたい事は理解出来た。

 自らの消滅の危険を承知の上で、その神とやらはこの世界を救ったのだ。

 命を捨ててでも──そんな風に明確な意志を持って俺は果たして戦えるだろうか?

 そんな自問自答をしていると、俺の足元に転がっているプルリンを腕の中に抱きかかえてイリューシアはにこりと笑った。


「そういえば、この子の名前ですがどうしましょうか」

「連れて行くのは決定なのか?」

「あら、じゃあこの場に捨てていきますか?」

「ぷ?」

「……くそ、好きにしろ! ほら、さっさと行くぞ、日が暮れちまったら野宿をしなくちゃいけなくなる。

 それと、ひとつだけ覚えておけよ。お前だけじゃない、イリューシアもだ。

 俺と一緒に旅をするのは構わない。だが、自分で出来る事は最低限自分でやれ。本当に努力してどうにもならないようなら俺が助けてやっても良い」

「ぷー」

「カケル様は素直じゃないですねー?」

「お前ら後で覚えてろよ……」

 俺の言葉を理解したのか、そうでないのか。プルリンはふるりと震えて返事を返した。

 早速実践する心算なのか、イリューシアの腕の中から抜け出して自ら歩いて(?)先へと進もうとしている様だ。

「すいません、カケル様。けれど……先程のお話、あのお方のお話は……町につけば、必ず。そこに見せたい物もありますから」

「……解った。事情があるんだろう? 但し、必ずだぞ」

「ぷ!」

 俺とイリューシアの間に流れる妙な空気を感じたのか、まるで仲裁をするかのように窘めるプルリン。

「別に喧嘩をしている訳じゃないんだがな」

「えぇ」

 思わず、苦笑してイリューシアと顔を見合わせる。

「まあ、二人旅が多少賑やかになったとでも思えば良いか」

「ふふ、その方がカケル様もお好きなのでは?」

「……そう、かもな」

 地球で生きていた頃は、楽しそうに、賑やかにしている人達を眺める事が好きだった。

 自分もまたその輪の中に入らずともそれだけで満足する事が出来ていたから。

「ぷー?」

「なんでもない。ほら、行くぞ。お前の名前も考えてやらないとな」

 いつまでもプルリンじゃこっちも呼び難いだろうし……そういや、こいつは男か女かどっちなんだ?

 

 足元でぽよぽよと跳ねながらついて来るそれを眺めながら、暫くの間俺は思案するのだった。


 システム:

 称号 聖獣の主を取得しました。

 スキル <聖獣使役>レベル1を取得しました。


戦闘開始、かと思いきやどうやら仲間が1匹増えたようです。

キャラクターの名前を考えるのって難しいですよね。


最後までお読み頂きありがとうございます。

次回、漸く初戦闘。

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