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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
はじめての街
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魔法を覚えました

 気功術講座を終えた千夏は夕飯までだらだらするために宿に戻ってきた。

 普通の人より気力が多いと講師であったトムに散々言い聞かされ、一週間後に特別気功術講座を受けることになった。


(正直面倒…………)

 はじめは〇〇〇〇波をうてるかも?くらいな気持ちで参加したのだが、毎日訓練が必要だという話ですでに千夏の心は挫折しはじめた。まぁイメージくらいならベットに寝転んでできる。ただ毎日するということが億劫なのである。誰か見てるわけでもないので千夏の中でサボることが決定した。


 明日受ける講座の魔法も面倒なんだろうか。しかし、魔法は大事だ。お風呂にはいるためにも。〇〇〇〇波とは重要度が段違いに違う。今の季節は水浴びしても寒さをちょっと我慢すればいいが、冬になったら死んでしまう。魔法についてはちょっと頑張ろうと千夏は前向きになった。


 次の日もおばちゃんに起こしてもらって朝食を食べたあと、今日の洗濯に間に合わせるように水浴びをする。今日でこの冷たい水ともお別れのはずだ。


 昨日と同じ時間にギルドの中庭にたどり着く。もちろん中庭の入口で昨日と同じく講座の参加料である銀貨1枚を払う。昨日よりは人が結構多い。20人くらいいるだろうか。


「魔法講座をはじめます。担当講師のイルマです。今日初めての人はいますか?」

 スレンダーで耳がすこし長めでとがったエルフらしき20台前半くらいの女性がパンパンと手を叩いて中庭の中央でそう宣言した。

 千夏は手を上げる。千夏以外にはじめての人はもう一人くらいしかいなかった。


「では、簡単に説明をします。まずは魔力の属性検査をします。属性は火・水・風・土・光・闇・空間の7種類です。属性に適性がないと魔法は使えません。属性検査はあちらにいるマーサさんが検査道具を持っていますのでそっちにいってください」

 千夏は言われたとおり右手の小さなテーブルの前に立っている痩せた老婆のほうに移動した。テーブルの上に7つの小さな水晶が置いてある。

「これは各属性検査水晶じゃ。それぞれの水晶をにぎって光ったら属性ありじゃ」

 老婆が簡単に説明をしてくれる。水晶に文字が刻まれており、それぞれ火・水・風・土・光・闇・空間となっていた。


 火の属性だけは絶対にほしい。千夏はじーっと食い入るように火とかかれた水晶を見つめた。

 千夏より先にもうひとりの初参加者がそれぞれの水晶を握る。結果は風魔法だけ属性あり。試した人ががっかりとした様子で中庭を出ていく。


 ある程度の属性をみな持っていると思い込んでいたのだが、適性属性の幅が狭いことに千夏はかなりがっかりした。これでは自分も希望する属性を持てないかもしれない。


「ほれ、お主の番じゃ」

 催促された千夏は覚悟を決めて火と書かれた水晶をぎゅっと握る。

「やったー!」

 水晶が光ったとたん大声をあげて千夏は喜ぶ。他の受講者が何事かと千夏をじろりと見る。


「ほれ、みんな待っておる。さっさと他のも試すのじゃ」

 両手をあげて喜んでいる千夏の体をツンツンと老婆は杖で軽く小突く。

「わかった」

 調子よく返事をしながら千夏は次々と水晶を握る。目当ての魔法が使えるとわかったので、他の属性はあまり気にしていなかった。

「ふむ。火・水・風・空間か。とりあえず向うに戻るのじゃ」

 老婆にそういわれて、千夏は機嫌よく集団の中に戻って行く。


「では、今日の講座は予定どおりに火の魔法についての説明となります。火の属性を持っていられないかたは残念ですが受講しても取り扱えません」

 イルマが再度手をたたいて注目を集める。

「なお、いつものように受講するのが面倒な人のためにマーサさんによる魔法転写をあちらで受け付けます。料金は市販の魔法転写より1割りほど安いです」

 そうイルマが言ったとたん受講者の6割がマーサのほうにさっと移動する。


「魔法転写って?」

 千夏にはなんのことだかわからない。

「魔法転写とは、直接頭の中に覚えたい魔法を写しこむことによって魔法理論とか関係せずに魔法が使えるようになります。ただし、転写可能な魔法は中級クラスまでです。属性適性がない場合とその魔法が使える魔力がない場合は転写不可となります。なお、使える魔力があるかどうかは転写してみてみないとわからないです。まぁ一種の博打ですね。Cクラス以上の冒険者はLvが上がるととりあえずお試しに転写しにいっています。ちなみに、転写に失敗しても料金は払ってもらいます」


「使える魔力がわからないって……魔力の数値でわかるんじゃないの?」

 千夏は思わず首をかしげる。イルマは訝し気に千夏を見る。

「魔力の数値ってなんのことです?」


 どうやらステータス画面がこの世界の人には見えないらしい。千夏も知らないふりをしていたほうがよさそうだ。

「Lvはどうやってわかるんです?私はまだLvアップしてないので……」

 とりあえず千夏は言い訳をしてみる。

「Lvが上がるとギルドカードに表示されます」

 イルマが千夏の胸元にぶらさがっているギルドカードを指さした。千夏はカードをよくよくみてみる。するとLv表示がされていることに気が付いた。


「それなりのお金をはらって魔法転写するか、銀貨1枚でこちらで魔法理論を理解するまで聞いて魔法を覚えるかどちらかになります」

 さすがにそろそろ講義をはじめてほしいと思っている受講生から冷たい視線が千夏に突き刺さる。

「わかりました。では転写のほうにいってみます」

 ぺこりと頭をさげて千夏はマーサのほうに向かった。楽して魔法を覚えられるなら覚えたい。マーサの転写待ちの一番後ろに千夏は並ぶ。


 先ほど属性判定で使用した小さなテーブルが順番待ちの列に並行に並べられていた。テーブルの上には転写魔法の種別と料金が記載されている。水をお湯にかえるヒートという魔法と水そのものを出すウォーターという魔法はそれぞれ銀貨5枚。これからの依頼のことを考えると、攻撃魔法も買っておいたほうがよさそうだ。

 一番安い火属性の攻撃魔法ファイヤーボルトで金貨2枚。結構高い。3つ魔法買うと千夏の手持ち残金は金貨4枚と銀貨6枚くらいになる。


(うー、ちゃんと働かないとそろそろキツイか。先行投資だとおもって買うしかないかなぁ。私は剣とか使えないし。)

 千夏は今後について少し考え込む。

「ほれ、あんたの番じゃ。何にするかい?」

 悩んでいる間に千夏の番になっていたようだ。またもや千夏は老婆に杖で小突かれる。


「ヒート、ウォーターそれとファイヤーボルトで」

「ふむ。さっきLv1とか言ってなかったかい?転写できなくても料金はもらうよ」

 Lv1で魔法転写をする人間はこの世界にはいない。失敗の可能性を考えてLv3以降からが主流である。だが千夏はゲーム感覚なので魔法使いは最初は1つくらい攻撃魔法を覚えられると信じている。


 老婆は左手で杖を振り上げ、右手を千夏の頭に置いてぶつぶつとつぶやいた。

「転写。ヒート」

 ばちっと千夏の頭の中で光がはじける。

(なにこれ、ちょっとビリっとくる……)


「ふむ。反発はないようだから覚えられたな。じゃ次、転写。ウォーター。転写。ファイヤーボルト」

 連続で転写魔法を頭に叩き込まれ、千夏は頭がくらくらした。


 無事に千夏は全ての魔法を覚えることができた。本来はLv1では何の魔法も覚えることができない。魔力が小さすぎるのだ。だが、千夏は「貯める」というスキルのおかげで問題なく覚えることができたのだ。


「ほれ、金貨3枚払うんじゃ」

 またもや千夏はツンツンと杖で小突かれる。


「うー、くらくらする。ちょっと待ってよ」

「知らんわ。わしゃ早くかえってさっさと一杯ひっかけたいんじゃ」

 しぶしぶ千夏は金貨3枚を払ったあと、その場にしゃがみ込む。老婆はさくさくと片づけをしてギルドを後にした。


「これもお風呂のためか……」

 そのままごろんと横になって頭痛が落ち着くまで寝ることにした。

 結局、魔法講座が2時間後に終了し、イルマにたたき起こされるまで爆睡していた千夏であった。



 ◇千夏のステータス◇

 名前:佐藤千夏

 年齢:24

 LV1


 生命力 :100(+300)

 魔力 :80(+240)

 持久力 :20(+28)

 気力  :10(+20)


 STR(力) :10(+30)

 DEX(器用) :10

 AGI(素早さ):10

 DEF(防御) :10

 INT(知力) :10

 LUK(幸運) :10


 その他

 ・食いだめ:4日分

 ・寝だめ :2日分

 ・汚れ度 :標準


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