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王都襲撃 (2)

「よし、全員準備できたな」

 アルフォンスは一同の装備を確認する。

 教会のほうから絶えず戦闘による轟音が空気を伝って響いてくる。


「では、転移します」

 エドがそう宣言すると、教会から100メートルほど離れた商業区の一角に移動する。

 教会周辺50メートル付近は瓦礫に埋もれ、今日お茶を飲んだ食堂も半壊している。瓦礫に下敷きになった市民に倒れた複数の兵士たち。

 教会があった場所には近衛兵の大部隊が展開しているが、敵による魔法攻撃で防戦一方だ。


「消耗戦になっているな」

 アルフォンスは戦場を確認する。

(浅いが肩に傷を負っとる。剣は有効みたいやな。魔法の打ち合いは不利や。魔力が桁違いやからな。魔法は手のひらから発射しとる。ええか、手に要注意や。できればさっさと切り落とせ)


 シルフィンの指示にアルフォンスとセレナは頷く。

「では、チナツ以外の全員でエドの転移で魔族に特攻をかける。チナツは後方から援護を頼む」

「わかった。気を付けて」

「それでは行くぞ!」

 アルフォンスの合図で、エドは魔族の背後へと転移をする。


「ウリャァァァ!」

 シャムシードの背後に踊り出たアルフォンスとセレナは、それぞれの目指す腕に向かって剣を振り下ろす。

 突然背後から現れた襲撃者にシャムシードは慌てて身をそらすが、襲撃者のスピードは今までと桁違いに早い。逃げきれずにざっくりと両腕に深手の切り傷をつけられる。


(浅い!)

 そのまま後ろへ飛び距離をとろうとするシャムシードにエドが体当たりをかける。

 重い一撃をくらい、シャムシードはよろりとよろめく。

 その隙に再度アルフォンスとセレナが迫る。

 シャムシードはすぐに魔法を発動させ、迫る二人に向け放つ。

 手のひらが光ったことを確認した二人は、剣を素早く動かし、『リフレクションブレイク』を放つ。


「馬鹿な!」

 自分が放った魔法がシャムシードに戻ってくる。

 とっさに転移魔法を使い、自分の放った魔法を避ける。

 そこへ千夏が待機させていた気功砲によるミニュチュア戦闘機が音速で、シャムシードめがけて突っ込んでくる。

 今度はよけることさえできない。


「ギャァァァァ!」

 気功砲をその身に受けシャムシードは絶叫を放つ。

 藍色のマントは爆撃により燃え尽き、シャムシードの右腕はもがれる。


「よくもやってくれたな!」

 シャムシードは、魔力を右腕に集める。魔力が変換され、切断された箇所から新しい腕が生える。


 千夏に向かって激しい憎悪を向けるシャムシード。

 すぐさまアルフォンスとセレナはヘイト(憎悪)を稼ぐために再突撃する。

 二人に向かって魔法をシャムシードは放とうとするが、転移で真横から現れたエドの蹴りをくらい、そのまま横へ吹っ飛ばされる。

 そしてまたもや、千夏からの気功砲の餌食となる。


「なんなんだ、圧倒的じゃないか」

 マイヤーは突然乱入してきた千夏達の戦いぶりをみて唖然となる。


 シャムシードが魔法を放てばそのまま魔法を返し、その隙に蹴りや魔法で攻撃を食らわせる。

 その戦いぶりに没頭していたマイヤーは、突然鋭い脚の痛みを覚え我に返る。


「なにをぼけっとしているの。今のうちに、生きている前衛の回収と治療をしなさい」

 マイヤーの右足をハイヒールのかかとで、ぐりぐりと踏みつけている小柄な女性が指示を飛ばす。


「誰だ、お前は!」

「そんなこといっている場合なの?部下が全員死んでしまうわよ」

 マイヤーはうっと言葉をつまらせると、すぐに部下に負傷者の回収を指示する。


 現在の戦場は元教会からみて右側で展開されている。最初に激突した前方のほうは安全だ。

 騎士たちは結界を抜け、生きている同僚や冒険者たちを担いで自陣に戻ってくる。

 すぐに治療チームによる治療が開始される。


「今のうちに魔法部隊に魔力回復剤を飲ませて。魔族が変化したら、いままでよりも強烈なのがくるわよ」

「変化?どういうことだ」


「魔族は変化するのよ。知らないの?今の状態は平常状態。人の姿をしているでしょう。魔族は自分の身が危険にさらされると変化するのよ。魔物の姿にね。いいから、さっさと指示を出しなさい」

 小柄な女性、いやセラは呑み込みが悪い騎士団長にイライラしながら答える。


 目の前の千夏達の戦いぶりはいままでセラが集めていた情報通りだ。

 アルフォンスとセレナがリフレクションブレイクによる魔防御を行い、エドが奇襲し、千夏がダメージを与えている。

 まずは想定していた通りの結果だ。


 問題は魔族が変化した後だ。

 どこまで食いついていけるのだろうか。


「タマちゃんはいったいどうしたのよ!」

 いまだに戦場に現れない竜。変化した魔族に勝つためには竜の力が必要だ。


「ちょっと、タマちゃんを探してきなさい。大至急よ」

 セラは背後に控える直属の部下に向かって言いつける。

 部下はすぐに指示に従うべく転移で消える。


 目の前では魔族が右半身を失い、怒りの怒号を上げている。

「くるわ」

 セラがそうつぶやいた瞬間、魔族の体が激しい光に包まれどんどんと体積を増やしていく。


(変身や。今までの数倍つようなる。気張れや!チナツは本体と合流せい。守りきれん)

 眩い閃光の中、シルフィンの声が聞こえてくる。


 千夏はすぐさま転移で近衛兵本隊へと合流する。

 光が収まると、そこには3つの頭をもつ全長6メートルほどある黒い大型犬がいた。


「……ケルベロス。地獄の番人の登場ってわけ?」

 千夏はその姿を唖然として見つめる。


「「「ウォォォォォォォォォォォン」」」

 ケルベロスは3つの頭が遠吠を放つと、ゆっくりとアルフォンス達を見下ろす。


(魔法くるで!)

 3つの口から炎のブレスが吐き出され、アルフォンス達を襲う。

 すぐさまエドは二人を連れ転移してブレスをよける。


「耐火防御魔法を彼らにかけて!」

 セラは、魔法部隊へ指示を飛ばす。

 魔法部隊長はすぐに耐火防御魔法を前線にいる3人に向かって放つ。


 千夏は本陣の魔法結界ギリギリのところまで飛び出し、すべての気力をつぎ込んで気功砲を放つ。


 狙いは左の頭だ。

 ミニュチュア戦闘機の大編隊がケルベロスの左の頭に向かって音速で突っ込む。

 凄まじい爆撃音が鳴り響き、左の頭が吹き飛ぶ。


「「グガァァァァ!」」

 残った二つの頭から絶叫が迸る。


 だがすぐに左の首に光が集まり始める。


「まだ再生する魔力があるの?カトレア、相手の魔力はあとどのくらいなの?」

 セラは再生し始めるケルベロスを見ながら、王城にいる主席魔術師に問い合わせる。


『再生に使う魔力と残りの魔力から考えて、もう再生はできないと思われます』

 遠話のマジックアイテムであるイヤリングからカトレアの声が聞こえてくる。


「それはそれで喜ばしいことだけど、チナツは気力をすべて使い切ったようだわ。次の決め手になるものがない」

 セラは冷静に戦況を把握する。


 中級魔法では、傷くらいはつけられるが、頭を落とすことは難しい。


『やはり、私がそちらにまいりましょうか?』

 カトレアが心配そうにそう問い返す。


「だめよ、今のあなたが上級魔法使ったら死んでしまうわ。今あなたを失う気はないの」

 セラはきっぱりと拒絶する。


「魔法結界を維持するだけでなく、合唱魔法で上級魔法は使えないかしら?」

 セラは魔法部隊長に質問する。


「今の人数では無理ですが、もう少し魔法使いが増えれば可能です」

 魔法部隊長は、先ほどから宮廷主席魔術師と会話を続けているこの女性を信頼してもよさそうだと判断する。


「カトレア、王城から魔法使いを回せるだけ回してちょうだい。もちろん、あなたは留守番よ」

『かしこまりました』

 カトレアの返事を聞き、うてる手は全て打ち尽くしたセラは、戦場に再び目を戻す。


 なんとか炎のブレスをアルフォンスとセレナが返し技で魔物に反射しているが、魔物自身の魔法ではなかなかダメージに結びつかない。

 決定的な攻撃力が不足している。


「あのおかまはいったい何しているのよ!」

 セラはまだ現れない元Sランク冒険者に向かって怨嗟の言葉を吐いた。


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