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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
王都に出かけよう
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Cランクにランクアップしました

 翌日の朝、千夏とセレナは冒険者ギルドに向かった。珍しく千夏が早起きなのは今日の昼にこの街を出発するからだ。

 朝食の席で侯爵への挨拶はすでに済んでいる。


 少しずつ人が戻ってきたのか、いままでぽつりぽつりとしかなかった露店が、今朝は多く立っている。

 辿り着いた冒険者ギルドも依頼を受ける冒険者でごった返していた。受付カウンター待ちの最後尾に並び、順番が来るのを待つ。

 千夏やセレナに気が付いた数人の冒険者が、噂話で盛り上がっている。


「おいおい、何の話だ?」

 新たに噂話の輪に加わった冒険者が尋ねる。

「お前、魔物討伐のとき見ていなかったのか?あそこにいる嬢ちゃんがオーガを気功術でばったばったと倒してたんだぜ」

「気功術なんて、カンドックの爺さん以外にまともに使えるやつがいるとは思えねぇ。見間違いじゃないのか?」


「そんなことより、今日は竜は一緒じゃないのか?」

「竜ってあの竜か。俺、最初はなんで魔物がこっちにいるのかってびびっちまったよ」

「どうやらあのパーティの従魔って話だぜ。ギルド長がそういってたのを聞いたぞ」


「竜なんて従魔にできるのかよ!」

「あの獣人の姉ちゃんも強かったぜ。ずっと最前線守っていたしよ」

「最後にオーガを倒した兄ちゃんも同じパーティだそうだ」


「ふぅん、そんな強いパーティなのか。何てパーティなんだ?」

「《トンコツショウユ》らしいぜ。昨日ブルンが聞いたらしいぜ」

「聞いたことねぇな。だいたい、そのパーティ名どういう意味なんだ?」

「俺が判る訳がないだろう!」


 やがて千夏達の番が回ってくる。

「今日この街を出る予定なの。その報告とランクアップの件で、今日ギルドに来るように言われたの」

 セレナはギルドカードを渡しながら用件を受付嬢に手短に説明する。千夏も首から下げていたギルドカードを受付嬢に渡す。


「パーティ《トンコツショウユ》ですね。話は伺っています。こちらへどうぞ」

 受付嬢は受付カウンターから出てきて、二階へと案内する。

 千夏は受付嬢の後に続きながら、すっかり忘れていたパーティ名について少し後悔していた。


 階段を上り、一番奥にある扉の前に立つと受付嬢は軽く2回ノックをする。

「ギルド長、《トンコツショウユ》のみなさんを連れてきました」

「どうぞ」

「失礼します」

 受付嬢が扉を開け、千夏達に中に入るように促す。


 こじんまりとした部屋の中に、以前見た羊系の獣人がソファに座っている。

「あれ、魔法屋さん?」

「いいえ、違います。魔法屋は私の弟ですね。私は当ギルドの長を勤めています、スコットと申します。まずはお座りください」

 千夏とセレナは指し示られた手前の椅子に腰かける。


「まずは、お礼をいわせてください。ミジクの街を守ってくれてありがとう。あなた達のおかげで、大変助かりました」

「緊急クエストなの。戦って当たり前なの」

「自分たちのために戦っただけだものね」

 頭を下げようとしたスコットにセレナと千夏は慌てて言い添える。そこまでされるとかえって気まずい。


「では、本題に入らせていただきます。昨日お話させていただいた通りに、お二人の冒険者ランクをCランクに上げます。Eランクのままでは混乱を招きますし、なにより宝の持ち腐れです。ランクアップ試験は不要です。実技は十分拝見させていただきました。お手持ちのカードをお預かりさせていだだけますか?」

 にこにこしながら手を出したスコットに千夏とセレナは自分の冒険者カードを渡す。スコットはすぐにカードを受付嬢に渡す。


「少しかかりますから、お茶でもいかがですか?」

「いただきます」

「ありがとうなの」

 スコットは、茶器を並べると手慣れた様子でお茶を注ぐ。


「これ、かわいいの」

 白磁に小さな花柄模様がアクセントになっている、可愛らしいティーカップをセレナは持ち上げ、しげしげと見つめる。

「私は茶器を集めるのが趣味なんです。可愛らしいお嬢さんにはこれがよいかと思いまして」

 お茶菓子を出しながらスコットは微笑む。

 突然ギルド長に呼び出しをされたことにセレナは少し緊張していたが、想像していた筋肉達磨のギルド長と異なり、スコットのおおらかな人柄にほっとする。


「本当はBランクに上げたいのですが、一度に3ランクアップというのは前例がないのです。そこで是非王都のギルドでBランクへのランクアップ試験を受けていただきたい。王都のギルドのほうには私から連絡を入れておきます」

「Bランクはまだ早いと思うの」

 Cランクでも十分すぎるほどだ。セレナは首を振る。


 Bランクの討伐依頼になると、サラマンダーやグリフォンなどが対象となる。実際一人で倒せといわれても難しい。Bランクの下位に位置するオーガですら、一人で相手をした場合、かなりきわどい。

 千夏はランクの違いがよくわからないので、セレナにお任せ状態だ。


「パーティランクとしては問題ないと思いますよ。なにせ、あの竜もいますし。ルビードラゴンですよね?私、初めてみました。基本4属性竜に比べるとルビードラゴンはかなり希少な存在ですしね」

 ルビードラゴンは別名光竜と呼ばれる。闇の竜と並び基本属性の火・水・風・地竜よりも絶対数が少ない。


「Bランクになると、ギルド直営店での割引がききますし、何より確かな身分証になります。Bランクの冒険者は下級貴族と同等に扱われますからね」

 ランクBからギルドから緊急連絡用のマジックアイテムが支給される。いざ、何かあったときにすぐに招集できるようにするためだ。もちろん緊急招集なので拒否権はない。


 スコットとしては、《トンコツショウユ》にもいざというときにすぐに招集できるようにとBランクアップを勧めていたのだ。


「タマはまだ子供だし、ランクアップについては少し考えてみます」

 セレナが躊躇しているランクに無理になる必要はない。だいたい今のパーティはいつまでも続くわけではないのだ。少なくても、今回の護衛の任務が終わればアルフォンスとエドはパーティから抜けることが決定している。前衛が一気に2/3も減るのだ。


 千夏自身はこの世界にいろいろと興味があるが、一人でわざわざ冒険したいとまでは考えていない。


 受付嬢が更新が終わったカードを持って戻ってくる。スコットは二人にカードを渡し、「気が向いたらいつでもランクアップ試験を受けてくださいね」と念を押す。


 ギルドを後にし、二人は待ち合わせ場所と移動しつつ露店をひやかす。王都は内陸にあるので、しばらく新鮮な魚が食べられなくなる。道中、千夏は目についた魚屋から適度に魚を購入する。


 セレナは薬屋から大量に回復用薬を買い求めた。前回のオーガ戦でそれなりの数を消費したのだ。なにせ、このパーティはやたらと前衛に人が偏っていて、回復役がいないのだ。前衛は自力で回復しなければならない。

(王都では何が起きるかわからへんからな)

 シルフィンのその一言で千夏も回復薬をそれなりに購入する。セレナの予備分も含めてアイテムボックスに放り込む。


 待ち合わせのミジク中央広場には久しぶり登場した馬車がすでに準備されている。

 船に乗らなくていいのだ。それだけでも千夏は心が軽くなる。

「お、揃ったか」

 どうやら時間を持て余していたらしい。アルフォンスがタマに絵本を使って文字を教えていた。シャロンへの手紙を書くために最近タマは文字を勉強中だ。


 セレナは御者台に回り、久しぶりの手綱を引く。

「それでは、まいりましょうか?」

 千夏が馬車に乗り込むとエドの合図で馬車は進み出す。


 馬車で王都まであと4日。

 途中でいろいろあってゼンを出発してからすでに20日以上経っている。アルフォンスの衣装注文やらいろいろな準備を考えると結構ギリギリだ。いざとなればエドが転移を使って移動することになっているが、ここまで来たのだ。最後まで旅を続けたい。


 あまりだらだらする時間が少なかったわりには、結構この旅を楽しんでいたことに千夏は気が付く。

 一カ所では味わえない料理や景色。

 日本にいたときは出かけることが億劫だったが、意外と旅もいいものだ。

 王都ではどんな料理が待っているのか少し楽しみな千夏であった。

坊ちゃんと執事の名前がとある兄弟の名前と一緒だということに今更気が付きました。全く意図してなかったのですが、失敗した・・・

ちょっとだけ風邪から復活しました。

ストック0ですが、できるだけ連日投稿できるように頑張ります。

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