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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
王都に出かけよう
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魔物襲来

 時刻はもうそろそろお昼になる。日の光を反射させてキラキラと輝いている波の向こうにうっすらミジクの街が見える。


 アルフォンスにとって退屈な船旅がもうすぐ終わる。

 一行は甲板で近づいてくるミジクの街を眺めていた。ミジクはシシールと並ぶ大きな港街だ。街の形もシシールと同様に港を中心に半円状の城壁に囲まれている。


 港が見える距離まで船が近づくと、溢れるばかりの人々が港に集まっているのが見える。港は大きな荷物を抱えている人々に埋め尽くされていた。その様子はまるで街を挙げて引っ越しでも行っているかのように見えた。


「何だ、これは」

 アルフォンスは唖然としながら船を降りる。

 荷物を抱えた人々は、到着したばかりの船の周りに怒涛の勢いで寄ってくる。


(何かのイベントって……ことはないか)

 千夏は、押し寄せてくる人波に飲まれそうになる。慌ててセレナが千夏の手を掴んで引っ張る。

 タマはアルフォンスの肩に担がれ、エドは人の多さに興奮している馬を宥めながらなんとか人波を乗り越える。


 本来ならアイテムボックスに仕舞ってある馬車を取り出したいところだが、あまりの人込みで馬車を出す空間がない。

「様子がおかしいですね。ヴァーゼ侯爵家に急ぎましょう」

 エドは港から少し離れたところに全員を集め、そのままヴァーゼ侯爵家前に転移した。


 ヴァーゼ侯爵家は広大な森の中に城塞に囲まれている。

 本日の昼にアルフォンスが到着する予定を前もって伝えておいたが、ジャクブルグ侯爵家と異なり、出迎えはいない。

 エドが古めかしいノッカーを数回叩いたが、しばらく待っても誰も現れない。


 再度エドがノッカーを叩くと、慌てた様子のメイドが現れた。アルフォンスはすぐに侯爵と面会させて欲しい旨をメイドに告げる。メイドは頷くと、侯爵がいる執務室へと案内をしてくれた。


 今年還暦を迎えるヴァーゼ侯爵は、少しやせ気味ではあるが古き良き貴族の貫録を漂わせた老人である。

 ヴァーゼ侯爵はアルフォンスの来訪予定をすっかり忘れていたのだ。別にアルフォンスに悪意があるわけではなく、今朝から慌ただしくてそれどころではなかったのだ。


 侯爵はアルフォンスに出迎えがなかったことを潔く謝罪する。厳格な侯爵が来訪予定を忘れていたという事実にアルフォンスは驚く。


「いったい何があったのですか?」

 アルフォンスは簡単に挨拶を済ませた後、港で見た人の群れについて侯爵に尋ねた。侯爵は両手を組み額にあて、一度大きく一息をついてから重々しく答えた。


「昨日の昼過ぎに、ミジクから西に20キロ程離れたビスの村が魔物の群れに襲われた。魔物の数はおよそ100前後。オーガを中心に、ビッグベアやシルバーフォックスなどのBランクの魔物だ。

 幸い足の早い魔物はおらず、群れは悠然と村に侵攻してきたそうだ。おかげで隙をついて村人達は馬車で逃げ出すことができた。彼らがミジクにたどり着いたのは今日の早朝だ」


「ランクBの魔物が100も!」

 アルフォンスは思わず席を立ちあがる。侯爵はアルフォンスの不作法を咎めず、静かに頷く。

「そうだ。ミジクの常駐兵は全て合わせても300程度。今冒険者ギルドに強制依頼を発動させているが、ランクAの冒険者は20名いるかいないか……ランクC冒険者まで総動員しても250を超えるかどうかだ」

 侯爵は再び両手を組み額にあてると黙り込む。


「ランクBの魔物ってそんなに強いの?」

 アルフォンスの背後に控えていた千夏はこっそりと隣のセレナに小声で聞く。

「チナツが知っているウォーターモンキーを、50匹くらいは平気で倒せる強さなの」

「普通の兵士が10人かかりで倒す魔物です」

 セレナとエドが小声でささやくように答える。


「10人で1匹というと1000人いないと無理なんじゃ……」

 千夏は「絶望的」という言葉を飲み込む。

(今のセレナやアルフォンスやったら、一人でなんとか倒せる程度やな。せやけど、100はつらいなぁ)

 いつも陽気なシルフィンの声も精彩に欠ける。


「お話中申し訳ございません。転移で、王都の兵を呼ぶことはできないのですか?」

 エドは一歩前にでると一礼してから侯爵に問いかける。

「それはもちろん考えた。しかし、なぜかミジクの半径30キロ以上先に転移することができない。ミジクから30キロ以内であれば短距離転移は可能だ。試してみるがいい」

 疲れたように侯爵は答える。


「差し出がましことを申しました」

「いや、構わん。誰もが思うことだ」

 侯爵がそう返したとき、廊下を慌ただしく走る音が聞こえてくる。すぐに執務室のドアがノックもなく、乱暴に開け放たれる。

「父上!偵察部隊から連絡が入りました。あと1時間ほどで魔物達がミジクに現れるそうです!」

 ヴァーゼ侯爵家長男のフェルナーが息を乱しながら侯爵に報告する。


「来たか……」

 侯爵は杖をつき、立ち上がる。そして厳しい表情でアルフォンスに向き直る。

「アルフォンス殿、魔物は真っ直ぐにミジクに向かっている。今なら大きく迂回すれば難を逃れられよう」

「いえ、私も戦います」

 アルフォンスも立ち上がり、侯爵にはっきりと答える。


「アルフォンス殿!」

「止めても無駄です。私の剣の師匠が言うには一人でBランクの魔物を相手取ることができるそうです。それに、心強い仲間達もいます」

 真剣に訴えるアルフォンスの顔を見て侯爵は、微かに笑う。

「頑固なところがバーナム辺境伯にそっくりだな」





「確かに王都方面に転移が使えないですね。どうやら結界かなにかが張られているようです」

 転移を試してた後、エドは訝しげに報告する。

 現在千夏達はミジクの街の入口にある城壁前に陣取っていた。


 目の前には朝から急ピッチで作られた二重の簡易柵が設けられている。結局かき集められたのは総勢500名前後。とても対等に渡り合える人数ではない。

「今更だが、勝手に決めて悪かった」

 アルフォンスが千夏達に向かって頭を下げる。


「いつものことですから、気にしていません」

 物々しい鎧を着こんだ兵士達の中に、黒のフロックコートを着ているエドはとても目立つ。

「転移が使えなきゃ、どうせ迂回しても逃げられるかわかったものじゃないしね」

 千夏も諦めたように答える。

「戦えるものが戦う、それだけなの」

 セレナは視界に入り始めた魔物たちを挑むように見ながら答える。すでに魔物との距離は500メートルを切っている。


「まぁ、まずは遠距離からいってみようか。タマ!」

 千夏は竜に戻っているタマに声をかける。

「はいでしゅ」

 タマと千夏は習ったばかりの気功砲の準備に入る。千夏は気を多く注入しながら複数の戦闘機を例の手で作っていく。

 セレナ、アルフォンスそしてエドは最前線に移動し、先陣の列に加わる。


 まずはできるだけ、魔法で遠距離から攻撃し、数を減らす作戦になっている。

 普通の魔法が届く距離は最長で50メートル。千夏とタマの気功砲の射程距離は150メートル。


 オーガを先頭に魔物達は威圧しながら悠然と揃って行進してくる。

(魔物って仲良く集団でなにかするものなの?)

 千夏はふと疑問を感じる。

「ちーちゃん!」

 タマが気功砲の射程範囲に入ったことを千夏に伝える。


「今は、気にしてもしょうがないか。タマ、気功砲発射ー!」

 ヒュンと音がすると魔物の先頭部隊が青い光に包まれ、魔物達がはじき飛ばされる。

 千夏もすぐに気功砲を発射する。上空に駆け登った複数機で編隊を組んだミニュチュア戦闘機が魔物集団の中に突っ込んでいく。その直後、ドガガガと音を立て爆炎が上がる。爆炎の後には10メートルほどの大穴が広がっていた。


 体が引きちぎられた魔物達が穴の中で折り重なるように積み上がっている。

 初回のタマと千夏の攻撃により、20匹前後の魔物が死亡または戦闘不能となる。


 魔物達は怖気づくわけでもなく、雄叫びを上げながら突進し始める。

 最前線で剣を抜き構えるセレナとアルフォンスが見える。

「タマ、奥の敵に向かって撃てるだけ撃つよ!前は味方を巻き込むから、注意してね!」

「はいでしゅ!」

 千夏はそう言いながら、再度気の錬成を始める。


 ついに魔物と後衛までの距離が50メートルをきる。本陣から大量の攻撃魔法が魔物に向かって放たれる。

 魔法により魔物達は傷を負うが、攻め上る速度はまったく落ちない。

「再度テイクオフ!」

 千夏は作り上げた戦隊を上空へと解き放った。


すみません、続きます・・・

文章を見直しました。

魔法の距離と敵の距離を修正しました。

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