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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
王都に出かけよう
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気功砲

 あれから島に来て今日で4日目になる。

 千夏の修行は平行線を辿っていた。逆にタマは順調で、気力を追加して大きな気功砲を撃つことに成功していた。その練習結果により、カンドックの家から砂浜まで道幅2メートルの道が完成していた。今日はシャロンと遊ぶために、タマはエドに送ってもらいシシールにでかけている。


 一方、アルフォンスとセレナの修行も一歩前進していた。

 カンドックに刺激されたのか、シルフィンが二人に、技を昨日から教え始めたそうだ。まだ成功はしていないが、それなりの成果がでており数日中には会得できそうだと、アルフォンスは朝食の席で楽しそうに報告した。


 二人の報告を聞きながら、普段どおりに食事をしている千夏をみてカンドックは少し溜息をつく。少しも焦った様子がないのだ。

 千夏が希望してカンドックに弟子入りしたわけではない。嫌々続けているのをカンドックは知っている。本来ならヤル気がない弟子なら島からとっとと追い出しているところだ。


 だが、このまま捨ておくには、あまりにも勿体ない。気力だけでいえば、千夏はカンドックを大きく上回っている。千夏の気力は成竜と同じくらい大きさなのだ。このままここで、修行を続けても自分が手が届かない領域に千夏はいるのだ。


 朝食の席では、明日でこの島を出るかどうかという話が持ち上がっていた。

「さすがに、数日くらいでは気力は上がらないか……」

「ずっとここに居るわけにはいきません。明日出発すべきかと」

「そうだな。名残おしいが明日出発するか」

「やっとこの島をでれるのねー!」

 旅立ちの決定に千夏は喜ぶ。しかし、喜んでいる千夏をみて、カンドックは首を振る。


「チナツ。気功砲が撃てるまではこの島で修行だ。こんな中途半端な状態で島を出すわけにはいかん」

「え?」

 千夏はパンを握りしめたまま固まる。


「チナツと別れるの?」

(修行を途中で投げ出したらあかん!)

「仕方ありません。数日おきに、転移で私がここに訪れて様子を見にきましょう」

「気功砲は確かにすごいよな。頑張れよ、チナツ」

「寂しいけど、チナツ頑張るの」

 すでに話の流れで千夏の残留が決定しているようだ。

 千夏は茫然としたまま話を聞いていた。


 食後、いつもの修行場に移動した千夏はカンドックに抗議を始めた。

「エドがいなくなったらご飯はどうするのよ!」

「自分で獲物を狩り、自分で作れ」

「おいしくないよ!」

「我慢しろ」

「天幕なくなってどこで寝るのよ」

「俺の部屋をつかえ」


「いやぁぁぁぁぁ!」

 千夏の叫び声が森にこだましていく。少しうるさげにカンドックは千夏を見る。

「嫌なら、さっさと終わらせりゃいい」

「わかった」

 千夏はかつてないほど真剣に修行に取り組む。


 転移で逃げ出そうとしないことに少しだけカンドックは感心する。

(まぁ、逃げ出せないようにチナツの気をこの島に固定してるがな……)


 気功術の基本は「放出」「錬成(練り上げる)」「固定」の三つである。

 今千夏が練習している気功砲も「錬成」で気を丸めたあと「固定」し、一点に「放出」させる。


「錬成」の精度が上がるといろいろと応用することができる。「錬成」の過程は気を粘土に例えてみるとわかりやすいだろう。千夏はつまずいているのは「錬成」である。


(ん……放出したこの壁を堅いものだと思うからだめなのかな。)

 千夏は目の前の防御壁を見つめる。

 いままで堅い壁を無理やり力づくで変形させようと努力していた。

 イメージが大切だとカンドックはいう。


(これは、柔らかい……そう……柔らかい粘土)

 手で粘土をこねるイメージを強く思い描く。すると、防御壁の横に2本の腕が現れる。

(こねる、こねる、こねる)

 その現れた腕をつかって千夏は防御壁をこね始める。


「なんだ、これは!」

 カンドックは突然現れた気で出来た2本の腕を凝視する。まるで人の手のように2本の腕は柔軟に動き、防御壁をこねていく。

 気功の3原則にあてはまらない、腕の動きにカンドックは声をなくす。

 腕の形に錬成し、固定することはカンドックにもできる。だが、固定された形をまるで生き物のように動かすことなどできない。


 丸くなった気を今度は千夏は堅いイメージを持たせる。

(堅いもの……堅いといえば?……そうダイヤモンド)

 以前美術館でみた大型のダイヤモンドを思い出しながら気を固める。丸くなっていたはずの気がブリリアントカットのダイヤモンド状に変形していく。


 あとはダイヤを飛ばせばいい。

 でも、飛ぶダイヤなどあるのだろうか……千夏はここで行き詰まる。

 とりあえず、手で投げてみるくらいしか思いつかない。

(この手は……そう、メジャーリーガーの腕。誰よりも早くものを投げることができる腕)

 一本の腕ががしっとダイヤを握りしめ、すごい勢いで森に向かってダイヤを投球(?)する。ダイヤは時速160キロほどのスピードで森に飛んでいく。


 ズガカガガ。

 ダイヤ状の気弾が次々と木々を倒していく。だが、タマの気功砲とは異なりスピードがそれほど出ていないため、3メートルほど木をなぎ倒してから気弾は消える。


「やっぱりスピードが足りないか……」

 千夏はがっくりと肩を落とす。千夏が気を抜いた瞬間に2本の腕は消える。

「タマのは音速くらいのスピードだったしなぁ……音速……音速ね……」

 千夏はぶつぶつといいながら考える。


「戦闘機ならいけるのかな……」

 防御壁を作り出し、そこからまた二本の腕が現れる。昨年ドラマでみた自衛隊の機体を思い浮かべながら戦闘機を作り上げていく。

(戦闘機は全長15メートルくらいだっけ?ミニチュアにしよう……)

 細部までは覚えていない。なんちゃって戦闘機である。


「テイクオフ!」

 千夏がそういうと戦闘機は空に向かって駆け上がっていく。数キロ浮上すると、一気に降下し、戦闘機はミサイルを発射しながら森の中を突っ込んでいく。音速で突っ切る戦闘機の挙動は千夏とカンドックには全く見えていなかった。


 ズドーンと大きな音が森からすると、まるで爆発を受けたように木々が吹き飛んでいく。森のほうから複数の木破片が千夏とカンドックがいる所まで飛んでくる。

 とっさにカンドックが大きな防御壁を展開し、それを防ぐ。数多くの木が爆散したので森の中は土煙で覆われてよく見えない。


 土煙が消えたあと、幅2メートルほどの焼野原が海まで広がっていた。

「……とりあえず成功で、いいのかな?」

 千夏は恐る恐るカンドックに尋ねる。


 だがカンドックはその質問は聞こえていなかった。眉間にシワを寄せ、先ほどから現れる腕について考え込んでいた。だが、いくら考えても答えが出ない。


「さっきから出し入れしている腕はなんだ?」

「なにって、腕かな……」

 千夏は無意識にイメージしただけなのでよくわからない。理論的に語ることなどできるわけもない。

「そうか……」

 気功術は奥が深い。俺などまだまだ修行不足だな。カンドックは空を見上げにやりと笑う。この年になって新たに挑戦すべきものがあるということは幸せだと感じたのだ。


「それで、私は修行終了でいいんだよね?」

 再度千夏は確認すると今度は聞こえていたようで、カンドックが頷く。

「よっしゃー!」

 やっと修行から解放されるのだ。千夏は大喜びである。


 そのあと、夕食までの間にカンドックは気功術の応用技を千夏に説明することにした。カンドックが目の前で披露する応用技は、大変面白く千夏は楽しく講義を聞いていた。講義の締めくくりに、カンドックが千夏の頭をポンとたたく。


「気功術はイメージが大切だ。それさえあれば、いろんなことができる。忘れるなよ」

「うん。いろいろ教えてくれてありがとう」

 初めて千夏はカンドックに笑顔で答えた。カンドックもにやりと笑う。

「こっちもいろいろ勉強になった。ありがとうな」


 この島で過ごす最後の夜は、いつもの夕飯よりも少し豪華だった。魚貝類を大量に煮込んだスープに、島で狩った鹿の焼肉と鯛の塩焼き。千夏としばしのお別れのために、エドが買い込んできたものであった。


「チナツ、修行終わったの?よかったの」

 セレナが嬉しそうに笑う。一人欠けたら旅はつまらない。

「無事に全員で出発できることに乾杯!」

 アルフォンスがワイングラスを掲げる。

「「乾杯!」」

 千夏とセレナもグラスを掲げ、楽しそうに笑う。

 いつのまにやら、みんなといることが当たり前になったんだな……と千夏は感慨に耽る。

 置いて行かれるなんてまっぴらごめんだ。


 その晩千夏は久しぶりにすっきりした気分で眠りにつくことができた。


誤記、脱字を修正しました。

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