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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
王都に出かけよう
24/247

誘拐犯を追え

 翌朝早朝に千夏とセレナはエドに叩き起こされた。

「見ての通りすっかりもぬけの空です」

 千夏は眠い目をこすりながら、エドが指し示したアルフォンスが使っていたベットを見る。


「早朝訓練とかでどこかにいるんじゃなくて?」

「剣が置きっぱなしです。剣は寝るとき以外は決して手を放すなと教育済です」

 エドがベットに立てかけられている剣を取り上げる。伯爵家の家紋が入ったミスリルで作られた立派な剣だ。


「んー?つまり?」

 千夏は眠いため頭が働かない。

「誘拐ですね」

 きっぱりとエドが答える。


「誘拐!大変なの!!」

 セレナがおろおろと落ち着かない様子で、数歩前に歩いては後ろに戻るを繰り返している。依頼主が誘拐されたとなれば護衛失格である。さすがに千夏も完全に目を覚ます。


「とりあえずは生きているようです。さきほどマジックアイテムで確認いたしました」

 エドは懐から小さな水晶玉を取り出す。これは事前に対象者の血を垂らしておき、確認時に呪文を唱えることにより対象者の安否がわかるマジックアイテムであった。健康なときには緑に光り、怪我をしていると黄色となり死亡した場合は赤く光る。今は健康を示す緑色に光っている。


 水晶をしまい込み今度は赤い宝石がついた指輪をエドは取り出す。

「これは対象がいる方向を示すマジックアイテムです。アルフォンス様の気紋に反応します。主の位置を知らせ、サーチライト!」

 エドが呪文を唱えると指輪の赤い宝石が光り、赤い一本の光が走る。指輪を持ったままエドは村長の家を出て方向を確認する。千夏とセレナも後に続く。


 指輪が放った光は方角的に南のほうへと続いている。しばらくすると消えた。

「シシールがある方角ですね。急ぎましょう」

 一行は急いで荷物をまとめると村長に簡単に挨拶を済ませ、馬車に乗り込んだ。すぐに馬車を発車させる。


 急いでいるため御者はエドが務める。ものすごい勢いで馬車は山道をシシール方面に向かう。スピードのせいで激しく馬車が揺れる。

「そんなに離れていなければいいの」

 セレナは手を組んで額に押し付ける。神に祈っているのだろう。

(神ってあのおしゃれ魔女ミソラの?)

 あんなきもい神に頼むよりはと、千夏は膝に座っているタマを見つめる。


「タマ、先にいってアルフォンスを見つけてきて。もし見つけられたら守って」

「ニュー」

 タマは短くないて頷いた。

「エド、もう一回さっきの光を出して。タマに先行してもらう」

 千夏は馬車の窓から顔を出して叫ぶ。


「わかりました」

 エドはそういうと一旦馬車を止める。馬車を止めないと指輪が取り出せないからである。

 セレナは慌てて馬車を飛び出すと御者台に移って、再び馬車を走らせる。少しでも距離を縮めたいためだ。


「主の位置を知らせ、サーチライト!」

 再び指輪から一本の赤い光が森を突っ切り南を指し示す。

「タマ、わかった?」

「ニュー!」

 タマはそう鳴くと翼を広げ、光のほうへと飛び立った。


「昨日はゴブリン、今日は誘拐……王都まで安全な道じゃなかったんだっけ?」

 そう呟きながら千夏はアイテムボックスからお弁当を取り出して食べ始めた。

 いざ戦闘というときに備えて。アルフォンスのために、今自分ができることが他になかった。




 さて、馬車を飛び立ったタマは一路南へと急ぐ。

 幼竜のタマはおよそ時速40キロが限界であるが、全速力の馬車の時速が15キロ、足の速いことで有名な従魔のトールバードで時速25キロである。十分な速度である。


 それに空を飛んでいるタマは山のような曲がりくねった道を通る必要がない。しばらくすると山を抜けた。

 山を抜けるとタマは高度を下げ、下に広がる草原をくまなく見つめる。そして飛び始めて1時間ほどたったあたりで南に向かって走る2匹のトールバードを発見した。






 突然目の前に緑色の物体が割り込んできたかと思うと、2匹のトールバードが急ブレーキをかけて止まる。

「わわ、なんだいったい」

 直樹と愛里はトールバードに必死にしがみつき、振り落とされないようにするだけで精一杯だった。

「なんなのよぉー」

 トールバードが完全停止してから愛里は顔を上げた。目の前には全長40cmほどの緑色をした魔物が低空で止まってこちらを見ている。


「ニュー!」

 その魔物が一声鳴くとトールバードは怯えているのかブルブルと震え、その場に座り込む。

「ちょっとぉ……何座ってんのよぉー、逃げなさいよぉー!!」

 ゲシゲシと愛里はトールバードの腹を蹴る。しかし、トールバードは動かない。


「愛里!こっちに来い!」

 直樹がそう叫ぶと愛里は座り込んだトールバードから飛び降り、直樹のそばに寄る。直樹は手を伸ばし、愛里の手を握ると隠密のスキルを発動させる。

 これで魔物には突然二人が消えたように映るはずだ。


 直樹は空いている手でアルフォンスを縛っているロープを指さす。愛里は頷き、腰からナイフを取り出すとロープを引きちぎる。支えていたロープが切れ、アルフォンスの体がぐらりとトールバードから落ちる。

 すかさず直樹が空いている手でアルフォンスの肩を掴み、自分のほうへと引き寄せた。


(トールバードは使い物にならない。ここからは歩いていくしかない……しかし、俺は手が塞がっている。こっそりこの魔物の前からこいつを運んで逃げることが難しい。……この小さい魔物は強いのだろうか?不意をうって倒せれば一番いい)

 直樹は一旦アルフォンスから手を放し、腰の剣を取り出す。


 幸い愛里を掴んでいない手のほうが利き腕である。剣をふるうのに問題はない。直樹の意図を察した愛里も短剣を構え、直樹と一緒に小さな魔物の背後へと忍びよる。

 直樹に手を離され、地面に倒れたアルフォンスはまだ目を覚まさない。一時間ほど前に再度眠り香を嗅がせてある。後4時間は起きないはずだ。


 直樹達がじりじりと移動をはじめると、小さな魔物はアルフォンスへと近寄り、直樹達がいる方向へぐるりと向きを変えた。

(まさか見えているのか?!)

 いままで魔物に見破られたことがない隠密のスキルである。直樹は愕然とした。


「どうするのよぉー」

 愛里は小さな魔物を見ながら直樹に言う。隠密のスキルが発動している間は消えているもの同士が話しても周りに聞こえないのだ。

 小さな魔物は飛ぶのをやめ、アルフォンスの前に降りた。目線はずっと直樹達を見つめている。

 どうやら襲ってくるつもりはないようだ。


「逃げよう。あいつはこちらを襲ってくるつもりはないらしい」

 直樹はぐいっと愛里を掴んでいる手を引いて走りだそうとした。

「だめよぉー。あいつを連れて行かなければ、私たちがヤバイんだよー!」

 愛里は力の限り抵抗する。


「かといってあいつをどう運ぶんだよ。トールバードは動かないぞ!」

「あの魔物がどこかに飛び去るまで待つしかないよぉー」

「追っ手が迫っているんだぞ!」

 直樹は再度ぐいっと愛里の手を引っ張る。しかし、愛里は抵抗する。

「普通の道からは外れてるから、見つからないはずよぉー!」


 確かに街道からかなり離れたところに直樹達はいる。

(しかし……)

 直樹は再び愛里を説得しようとするが、愛里はガンとして受け入れない。


「ここで失敗したら次にこいつを誘拐なんてもうできないよー、後がないのわかってるのー!!」

 確かに愛里の言う通りではある。アルフォンスの誘拐を完遂しなければ直樹達に未来はない。


 目の前の小さな魔物は飽きたようにしゃがみ込んであくびをする。

「ほら、だんだん飽きてきてるみたいだしー。待ってみようよー」

 愛里は直樹の腕をこちら側へと引き戻しながら言う。


 正直目の前の馬鹿馬鹿しいやりとりにタマは飽きていた。千夏に指示をされたのはアルフォンスを見つけ、守ることだ。守るといっても目の前の二人はまったく脅威にならない。

 早く千夏たちが追い付いてくれないかなとタマは眠くなるのをこらえていた。


誤記を修正しました。

×オーク ○ゴブリン

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