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大食い大会

のんびりお正月過ごしてしまいました。

お久しぶりです。生きています!

お正月休みの間にいろいろな方に読んでいたけたようで、嬉しかったです。

大食い本選会場は街の狭い中央広場ではなく、港に係留されている大型帆船の上に舞台を移す。

船の上と聞いて若干千夏が嫌そうな顔をしたが、小舟ではないので心配していた波による揺れはほどんどなかった。

観客達も別の複数の船の上に乗りこんでの観戦だ。一隻の大型帆船を囲むように船が何重にも連なっている。陸地が少ないこの街では大型イベントがある場合によく使われる手段である。


船の中央のマストを中心に千夏達のテーブルが円状にぐるりと並び、どの船からも食事の内容が見えるようになっている。


「さて、いよいよ本選開始です。たった今掛札の締め切りです!買い忘れた人はいないですか?大丈夫ですね?今年は波乱がありそうですよ。前年度王者が無難に本選に出場していますが、無名のルーキーが4人も出場しています。なんとこの4人、王者タイソンを押さえて予選を突破しております。勝負の行方が見えませんね、エリオス様」

「そうだな。私としてはあの小さい子が勝ってくれると面白いと思っている」


丁度千夏の正面にある大きな船に司会進行役の小柄な猫の獣人が拡声魔法を使って喋っている。その隣の席には新年の挨拶がひと段落したこの街の領主の巨体がある。領主の頭には2本の大きな角がにょきりと生えている。彼は牛系の獣人で巨躯の通りの怪力を持つ。威圧的な外見とは異なり性質は温厚でおだやかな人柄らしく、タマに向ける視線は優し気だった。


「では本選に入る前に説明をさせていただきますね。予選ではひたすらみなさんにシーフードカレーを食べて頂きましたが、本選では同じものは出てきません。みなさんご存じだとは思いますが、大食い大会と同時に実施される料理大会で作られた作品を食べて頂きます。この料理大会は味はもちろんのこと数多くの種類を創り出すことが求められています。一口私たちが味見させていただいて、美味しいと思われるものが大食い大会の方に出され、いまいちなものは作り直してもらうことになります。料理人のみなさん作って作って作りまくってください!」

「「「おおう!」」」

空に浮かぶ中継魔法が何隻かの調理場を映し出し、気合を入れた白いコック服を着た料理人達を映し出す。


「それでは本年度の料理大会および大食い大会の開始を宣言する」

領主がそう宣言し、各厨房に火が入れられる。

せわしく動き回るコック達の手際を上空の中継魔法で千夏はのんびりと眺める。料理は得意ではないが、作るのを見るのは楽しい。


目の前にある中継魔法では羊の獣人が手早く3枚におろした魚に味付けをして、その上に小麦粉をまぶしていく。どうやら魚のフライを作るようだ。油を温めている間に隣にいた熊の獣人が、大根などの根菜を取り出し角切りにして、別の鍋にそれらを入れてから紅い薬味を鍋に注入する。

料理大会は助手を一人つけられるので、二人で協力しあいながらフル回転で料理を作り上げていく手際が見ていて大変楽しい。

しかもあの料理を食べることが出来るなんて最高な贅沢だ。千夏は笑み崩れながら料理が出来上がるのを心待ちする。


「早速一品が上がってきました。うん、これは美味しいです」

解説席にいる領主と解説者がOKを出すとこちらに皿が回ってくる。

海老と貝の香草バター焼きだ。

千夏はフォークで大きな海老を差して、ほふほふと口の中へと運ぶ。


ちらりと横を見るとタマはフォークを使わず素手で海老を掴み口にしている。大きな海老はシャロンと食べた以来だ。あの時タマは海老を手で食べると聞いていたので、そのまま素手で行ったらしい。

タマを給仕する担当する人が手を拭くための手ぬぐいを差し出しているから大丈夫そうだ。


「ちーちゃん、大きい海老さんでしゅよ」

タマは海老を持ち上げて嬉しそうに笑う。

「うん、大きいね。美味しいよ」

千夏がそう答えるとタマは海老を手づかみでもぐもぐと口の中へと突っ込んでいく。懐かしい料理で我を忘れたのか最近直っていた口の中に大量に食べ物を突っ込む癖が出て頬袋を作っている。

見ている分には可愛いのだが、マナー的には……まぁ、大食い大会だからいいかと千夏は割り切る。


のんびりと食べている間にも次々とテーブルの上に料理を載せた皿が置かれていく。

冷めたら勿体ない!

千夏は食べるスピードを上げ始める。




「一口だけですが、そろそろ私たちもかなりおなか一杯になってきましたね、エリオス様」

苦しそうに司会を務める小柄な猫系獣人がおなかをさする。

若干作るスピードが落ちて来た厨房を中継魔法でエリオスは眺める。

「俺はまだまだいけるが、今ので何皿目だ?」

「まだまだですか。やっぱり胃が4つあるという噂は本当なんですか? えっと30皿目ですね」

「どんな噂だ。30か。今回は皆頑張っているな」

「はい。脱落者は四人だけです。でもそろそろラリマーさんが危なさそうですね。脂汗かいていませんか?無理は禁物ですよ、ラリマーさん。おっ、どうやらギブアップのようです。残り5人になりました。前年度王者とルーキーだけになりました。ルーキーのみなさんは人族なのにすごいですね」


感心する司会の声を聞きながらリルは苦笑する。人族は千夏だけで、残りは本当は竜族だ。

基本獣人のほうが人族よりも体が丈夫で多くもの食べることが出来る。もちろん獣人の種類によるのでリルはそれほど食べるほうではない。舞台に残っているのは千夏達を除いて3人は全て獣人だ。

それも大型獣系で、昨年の王者は熊の獣人だった。


メモを片手にじっと千夏達を観戦するリルはタマの笑顔を見つけ、その料理の名前をメモする。竜達は好き嫌いがはっきりしないのだが、多少好みはあるようだ。那留やレオンの好きそうな食べ物もきちんとリルはメモを取っていた。しばらく彼らは狩りにいけないので、美味しく食べれるものをリサーチしている。

といってもレオンはどちらかというとワイン蒸しなどお酒がふんだんに使われている料理に興味を示しているようで、食事というよりもやっぱり酒だ。

那留は煮物が好きらしく、なんとおかわりを要求していた。おかわりはもらえなかったが。


「そろそろタマ達もおなかいっぱいになってくれないと、今後の食費が不安ですね。滞在費は水の妖精王が持ってくれるというなら問題ないですけど」

エドが不安になるのも当然だろう。昼前から食べ続けて一匹あたりすでに60皿を平らげている。

ラヘルにいたときよりも彼らが食べている量が多い。

実際は竜達はそれなりに満腹にはなっていたのだが、もともと勝負好きなのでリタイアする気がないだけだ。


『……妖精にお金を要求する人を初めて見たわ。まぁこちらもお願いを聞いてもらうのだから用意はするわ。真珠でいいかしら?』

図太く言い放つエドにリリィは肩をすくめる。

妖精王は普通の妖精より気力も魔力もずば抜けて大きい。千夏達と一緒に中央舞台に上がると目ざとい人が騒ぎ出す可能性があるので、エドたちと一緒に観客席のほうで待機している。


舞台の上では油たっぷりの海鮮焼きそばが振舞われたところだ。

限界まで胃に食べ物を送り続けており、駄目押しのこってりしたこの料理は胃にかなりキツイ。

ついに前年度王者がギブアップを宣言する。


続いて出て来たのは10キロもある大きな鳥の丸焼きである。

さすがにそろそろ決着をつけたい運営側の意図が見え始める。

ぺろりと全員が鶏肉を食べ終わった次には小ぶりではあるがマグロをまるまる一匹焼き上げたものが出てくる。マグロの重さはおよそ200キロ。これを食べきれとはなかなかの無茶振りだ。


「どうせ千夏には勝てないしな。俺はここで抜けるか」

那留は満腹になったおなかを押さえて席を立つ。那留はタマやレオンほど若い竜ではないので、引くべきところを見極める。これが喧嘩だったら最後まで粘ったのであろうが……。


「お、大きいでしゅね」

タマは少し涙目で目の前のマグロに齧りつく。

成竜でも満足するほど食べているのだ。幼竜のタマはかなりおなかがパンパンだった。

必死に齧りつくタマを見てレオンはさっくりとリタイアする。千夏は論外だし、弟相手にむきになる必要はない。


レオンのリタイアを見届けるとタマはじっと千夏を見つめる。

千夏もタマの必死な様子をみてリタイアしようと思っていたのだが、それにタマは気が付いたようだ。

「ちーちゃんが一番でしゅ。やっぱりちーちゃんは凄いでしゅ。お魚全部食べるでしゅよ?」

タマは少し高い椅子からぽんと降りて、笑顔で千夏を見上げる。


「そうだね。全部食べるよ」

千夏は笑顔でタマに答えるとしゅたっとかなり大きめな解体ナイフとフォークを構える。

獲物がでかいだけあって食事というよりほぼ解体に近い。幸いマグロの身は柔らかく、解体ナイフは切れ味抜群であったのでざっくざっくと解体しては魚の身を口へと運んでいく。


「恐るべし速さで食べ進んでいます。凄いですね、チナツさんは。予選からの分もあわせて彼女は自分の体重以上のものを食べていますよ。一体彼女のどこにこれだけ食べ物が入るのでしょうか!彼女以外全員がリタイアした時点でもう優勝は決まったのですが、やはり私としてはこれを食べきって欲しいところです!」

司会者が興奮したように大きなマグロを解体し続ける千夏に激を飛ばす。


「大丈夫かな、チナツ。おなか壊さなければいいんだけど……」

さすがにあの大きさはまずいだろうと不安気に見守るリルにコムギが得意そうに尻尾を振って「クゥー!」と鳴く。

「大丈夫、チナツの胃は丈夫なの」

かつて千夏の暴食を唯一目撃しているセレナがコムギと同様に自信たっぷりに答える。


そして一時間後。小ぶりではあるが200キロはあるマグロをかなりの時間をかけて綺麗にぺろりと食べ終えた千夏は、タマを抱きかかえて大観衆に向かって手を振っている。

マグロを食べきった鉄壁の胃を持つ女としてチナツは長い間この地に名を残すことになる。

評価とご感想ありがとうございます。


大食い大会って書くのが難しいですね。

千夏が鉄板すぎますし……。でもここまで食べたのは初めてかも。


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