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SS クリスマス後日談

今日は時間がないので短いです。

申し訳ありません。

『あなたの欲しいおたまは金のおたまですか? 銀のおたまですか?』

フルール村の村長はみずみずしい大樹の前に立っていた。太い枝には青々とした葉が茂り、幹の太さは20メートルほどあるだろうか。めったに見られない大樹だ。その大樹と村長との間にぷかぷかと金色に輝くおたまと銀色に輝くおたまが宙に浮いている。


「おらが欲しいのは壊れにくいおたまだべ」

そんなキンキラしたものはいらないと村長は頭を振る。

さわさわと目の前の大樹の葉が風もないのに揺れる。


『なんと不滅のおたまとは贅沢な!まぁいいでしょう。願いを叶えるのは200年ぶりですから』

ぱっと金と銀のおたまが消えて代わりにどこにでもありそうなおたまがぷかりと浮かぶ。

『神器といっていいでしょう。大事にするのですよ』

するするとおたまが空中で動き、村長の手の上に乗る。村長はおたまを利き手で掴むと軽くぶんと振り下ろす。重さも丁度いい。これなら使い心地はよさそうだ。不滅だの神器だのとなんやら樹が言っていたが村長にはよくわからなかった。




「ふぁぁ、よく寝たべ」

村長はいつも通りに夜明けちょい過ぎに目が覚めた。枕元には夢の中で見たおたまが一つと布袋がひとつ。村長はごそごそと袋をあけると、その中にもおたまがあった。

「サンタどんのプレゼントだべか?2本もあればしばらく持つべ。」

村長はベットから降りると家族にもらったおたまを見せるために居間へと向かっていった。


むろん千夏が用意したおたまは普通の鉄でできたおたまである。

もうひとつのおたまは不滅属性をもつ非常に打撃力があるおたまであった。のちに村長がそのおたまを使ってフライパンを叩いたときにフライパンが壊れるという悲しい出来事に遭遇することになる。

フライパンキラーの二つ名がつけられたそのおたまは、村長の家で代々受け継がれる家宝となったとかならないとか……。それはまた別の話である。



寒さに若干弱いコムギが布団の中で丸くなっている頃、タマはパチリと目を覚ます。

いつの間にやらかえってきた千夏がベットの中でコムギと一緒に丸くなっており、タマはこてんと寝返りを打つ。

「?」

寝返りをうった拍子になにやら小さな木箱に手が当たり、タマはもそもそと起きだすと近くにあったそれに手を伸ばす。昨日ギリギリまで粘って起きていたときにはなかったものだ。


「なんでしゅか?」

タマは小さな手を使って木箱のふたを開ける。

「!! キラキラでしゅ!」

木箱の中に入っていたのはクリスタルで作られた小さな猫の置物だった。

タマはそれを手にとり、昇ったばかりの朝日の光に当てる。日の光にあたりキラキラとカットされたクリスタルが乱反射する。その置物を眺めるタマの紅い瞳もキラキラと輝き、興奮して高揚したぽっぺがほんのりと赤く染まる。


こんな綺麗なものを独り占めにするわけにはいかない。

「ちーちゃん、コムギ。起きるでしゅよ!」

タマは蒲団の中で丸くなっている千夏とコムギをゆさゆさと揺する。

コムギはすぐに起きたが、千夏はなかなか起きてこない。


「……ん。おはよぉ……」

寝ぼけながらもやっと千夏が起きて来る。

「見るでしゅよ!キラキラでしゅよ!」

タマは小さな猫のクリスタルの置物を紅葉のような小さな手でしっかりと掴み、日に当てる。

「あー……。サンタさんからのプレゼントだね」

千夏はごしごしと目をこすりながら、興奮しているタマを見下ろす。


「サンタさんでしゅか?」

タマは昨日千夏から聞いたサンタの話を思い出す。

いい子にしているとサンタが来てプレゼントをくれるという話だ。

「ほら、こっちにコムギの分もあるよ」

千夏は別の箱をベットから取り上げ、ぱかりと開いてコムギに見せる。


「新しい茶碗だね。今度は白い猫が書いてある」

千夏は茶碗を取り上げ、コムギに見せる。

「クゥー!」

パンパンとコムギが茶碗を持ち上げた千夏の腕を軽く叩く。千夏はコムギに茶碗が見えるようにころりとベットの上に置いた。

コムギは茶碗の中に描かれた白い小さな猫柄を気にいったようで、ペロペロと何も入っていない茶碗をなめる。


「タマもコムギもいい子だから、サンタさんが来てくれたんだね」

千夏はふかふかのコムギの体を撫で上げる。

「タマはいい子でしゅか?」

タマはベットの上を四つん這いで歩き、千夏の膝の上にちょこんと座って尋ねる。

「タマはいい子だよ。コムギもね」

千夏に褒められ二匹は嬉しそうに笑う。


「サンタさんと会いたかったでしゅ。会ってお礼が言いたいでしゅ」

タマはキラキラと輝くクリスタルをまた日に当てて目を細める。

「うーん。サンタさんはクリスマスにしか来ないんだよ。来年のクリスマスにお礼のお手紙を書いておこう。そうしたらきっと読んでくれるよ」

「はいでしゅ」

こくんとタマが頷くと、コムギが自分もといって、タマの膝の上に体を乗りあげて来る。


「来年にはコムギもお手紙がきっと書けるでしゅよ。タマと一緒に書くでしゅよ」

「クゥー!」

少しコムギに似ている置物を片手にタマはコムギの耳の下をこりこりと掻く。コムギは気持ちよさそうに目を細める。


千夏は腕を伸ばし膝の上に載っている2匹をきゅっと抱きしめてから、昨晩レオンからもらった指輪をはめた指を見せる。

「これ、ありがとうね。大事にするよ。タマとコムギそしてレオンの目の色と同じだね」

千夏は一つ一つ指輪にはまった小さな石を指し示す。

正確にはタマとレオンは竜の角の色なのだが、普段人型でいることが多いので誰もそんなところは気にしていない。


タマとコムギはきゅうっと千夏の腕に頬を寄せる。

来年も再来年もずっとずっと一緒に千夏と楽しいクリスマスを過ごすのだ。


評価とご感想ありがとうございます。


何かしら読者様からご反応を頂くと読んでいただいているんだなぁと実感します。

いつもありがとうございます。


作者自体は微妙なクリスマスでしたが、千夏達のほのぼのクリスマスで皆様が少しでもほっこりできたのであれば嬉しいです。

ああ、ペット飼ってしまおうかなぁっ!

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