表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
王都に出かけよう
20/247

お坊ちゃまの初めての冒険(前編)

 ゼンの街を発って二日後。旅は順調にすすみ、今日の宿となるレキの村に辿り着いた。

 ずっと同じ姿勢でいたため千夏は凝っていた肩をぐりぐりと回しながら馬車を降りる。

 その後ろから青い顔をしたアルフォンスがのそのそと降りてくる。


「体調が悪いの?」

 セレナが心配してアルフォンスに声をかける。ふるふると震えながらアルフォンスは絶叫した。

「冒険が……冒険がないぞー!」


 すかさずエドの鉄拳制裁がアルフォンスの前頭葉にスパーンと入る。

「近所迷惑です」

「痛いぞ、エド」

 アルフォンスを除いた一行は今日の宿となる村の村長宅にさっさと入っていく。後頭部を押さえながらもアルフォンスは慌ててあとを追いかける。


「ようこそおいでくださいました。なにもない村ですがごゆっくりお休みください」

 村長が歓迎の意を表し、夕食会が始まった。

 今日の夕飯は黒パンにジャガイモとベーコンのソテー。野菜の具だくさんスープであった。貧しい村では精一杯のおもてなしである。


「ところで村長、この村で今困ってることはないのか?」

 夕食会が始まってすぐアルフォンスが村長に尋ねる。

「そうですなぁ、今年の麦の出来がいまいちで困っています」


「それは大変だな。それ以外にはないのか?」

 じれたようにアルフォンスは質問を続ける。

 ここまで二日。何もなく過ぎてしまっている。このままでは冒険のぼの字も出てこない。アルフォンスは焦っていた。


「そういえば、村のはずれの森にゴブリンが住み着いたようで、樵が困っていました」

「それだ!」

 アルフォンスはお行儀悪く、身を乗り出してフォークで村長をびしっと指す。 すかさずエドから鉄拳制裁がくだるが、アルフォンスは気をとりなおして村長に向き直った。


「森にゴブリンが住み着いたら村民も困るだろう。よし、俺たちが明日森にいってゴブリンを退治してやろう」

(俺たちって私もいくのかな…面倒だなぁ……)

 千夏はげんなりする。


「それならタマに掃除させようか?」

「ノーサンキュー!俺たちがいくことに意義がある!」

 アルフォンスが力説をする。どうしても冒険がしたいようだ。


「まぁゴブリンくらいなら問題ないでしょう。私はちょっと薪やら食材を明日こちらの村で買い物させていただきますので、3人でいってきてください」

 エドはさっさとリタイアする。


「ずるーい!」

 千夏が抗議を上げるがさっくりとエドに言い返される。

「護衛のお仕事です。頑張ってくださいね。ゴブリンの肉は結構おいしいのです。たくさん倒しても千夏さんが行かれないとほとんど持って帰れませんね。残念です」

「私も行って頑張ってとってきます!」

 素直に千夏が返事をするのをみてアルフォンスは満足そうにうなずいた。

「では明日は朝からゴブリン退治だ!」



 そして翌朝。

 ヤル気満々のアルフォンスにたたき起こされた千夏とセレナは森に向かっていた。なお、タマは森以外で獲物をとるようにとアルフォンスから厳命が下る。獲物を横取りされたくなかったからである。


 村から森までは意外と近く1キロほど歩いたところにあった。

「ふむ。これだけの近い場所にゴブリンがいたら村民もかなり不安であろう」

 アルフォンスは本来なら守られる立場であるが先頭を突き進んでいく。

 出かけに村の樵からゴブリンを発見した場所を教えてもらっていたのだ。


 森にはいってまっすぐ進むと泉がわいている場所にぶつかり、そこを右に曲がってしばらくいったところがゴブリンの目撃場所だ。

 実にわかりやすい、それゆえ道案内を頼まなかったのだ。


「やけに森の中が静かなの」

 セレナが辺りを見回しながらそうつぶやく。確かに鳥の鳴き声すら聞こえない。


「たぶんゴブリンに襲われないように森の動物が身を潜めているようだな。ゴブリンは群れで生活する。かなりのゴブリンがこの森に入り込んでいるのだろう」

 初めて真面目なアルフォンスを見た千夏は驚きながら尋ねる。


「群ってどのくらいいるものなの?」

「そうだな、20匹くらいはいると思うぞ。ゴブリンは魔物の中では多少知性があり、我々人の装備をまとっている群のリーダーに率いられている」

「ゴブリンは力がとても強いの。生命力も強いの」

 セレナがアルフォンスの回答を補足する。


「お、泉が見えたぞ。あそこを右だな」

 ようやく中継点の泉が見えたのは森にはいって2キロほど歩いた後であった。







 小集団のゴブリンはたいてい洞窟や廃屋を利用して住処としている。集団が増えてくると木々を使って自分達の村を作って勢力を伸ばす。

 ゴブリンのはオスのみであり、繁殖するには他種族のメスを使う。村をよく襲うのもそのためだ。その際男は不要であるため、大半が殺される。


 千夏達が討伐に向かったゴブリンの集団は発展期に入っており、狭い洞窟の住処を捨て村作りをそろそろ始めようかと思案しているところであった。

 そのために明日村を襲い繁殖用のメスとオスの奴隷を確保しよう。ゴブリンリーダーはそう考えていた。


「グガッ!」

 突然、少し先からゴブリンの呻き声が聞こえてきた。それは大きな声ではなかったがここは洞窟の中である。

 声が反響して響き洞窟の最奥のゴブリンリーダーの耳にまで届いた。


「ギャゥ!」

 再び聞こえる短い叫び声。

 異変を感じたゴブリンリーダーはバトルアックスを拾いあげ音のしたほうに同じ部屋にいたゴブリン数匹を向かわせた。



誤記を修正しました。

オーク退治ではなく、ゴブリン退治です。

ご指摘ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ