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クタの街(改訂版)

前のお話を読んでくださった皆様へ。


大変申し訳ありません。魔女の城関連を全面書き直ししました。

内容がかなり変わってしまい、ご迷惑をおかけします。

クタの街はゼンより規模が小さいので、もちろん領主の館もバーナム辺境伯の屋敷と比べると見劣りがする。といっても、千夏の住んでいるフルール村の屋敷よりはだいぶ立派だ。

すでに日が落ちているので門の両脇にはかがり火が焚かれている。ゆらゆらと風に揺れるかがり火に照らされた千夏の顔は、仏頂面だった。夜に呼び出されたことよりも、食事を邪魔されたということが一番の原因だ。


兵士に案内され、千夏達は広い応接間に通される。そこに領主の姿はない。なかなか姿を現さない領主に千夏はこれだったら、ご飯食べてからでもよかったんじゃないの?と不満を露わにする。

「腹減ったなぁ……」

那留は出されたお茶を飲みきり、ぐったりとソファに寄りかかる。見た目は人と変わらないが、あの巨体を維持するために、大量の食事が彼には必要だった。


「申し訳ございません。もうしばらくお待ちください」

千夏達をもてなすためにつけられたメイドが何度も頭を下げる。


応接室に通されて20分ほど経った頃にやっと部屋の扉が開かれる。

「大変お待たせしました。食堂へどうぞ」

古めかしいフロックコートを着た初老の男は、一礼すると千夏達を食堂へと連れていく。


食堂ではすでに領主らしき老人が上座に着き、千夏達が部屋に入っていくるとすぐに立ち上がり頭を下げる。老人といっても、堂々とした体躯の持ち主で戦場で駆け巡る老将軍のような風格を漂わせている。


「大変お待たせしてすみませんでした。あなた方の身元の確認をとるのに少々時間がかかってしまいました。わしはここの領主を務めるソチと言います。わしは武骨ものゆえ、礼儀が苦手でしてな。言葉使いが聞き苦しいかと思いますが、ご容赦を」


「私も敬語は使い慣れていません。普段通りに話してもらえると助かります」

千夏がそう言うと、領主は顔を上げ「ではそのように」と快諾する。千夏も敬語はかなり苦手だが、この人にも苦痛だったのだろう。少し強張っていた領主の顔が緩む。


「腹が減っては話もできん。まずは腹ごしらえとしよう」

領主がそう告げると、給仕たちが空のグラスにワインを順に注ぎ淹れる。

千夏は早速フォークを掴み、出された食事に手を付ける。ゲストが先に手をつけないと食事会が始まらないというマナーはアルフォンスとの旅で覚えた知識だ。


少し遅くなった夕食会はあまり喋るのが得意でない領主とおなかをすかせまくった千夏達も食べることに専念して、黙々と食べ進めていく。領主は豪快に肉にかぶりつき、千夏もせっせと手を動かし次々と食べ物を口に入れていく。


「千夏さん、那留さん。これ、コーヒーの味がします!なんて野菜なんだろう。どうみても根菜みたいだ……すみません、この野菜後で見せてもらってもいいですか?」

太郎が嬉しそうに、紫色の野菜が入っている小鉢を持ち上げる。


千夏は太郎に勧められた小鉢に手を伸ばす。

「ん、確かに。いろいろいじったらコーヒーが飲めるかも」

千夏も満足そうに頷く。


「それが気に入ったのであれば、後で用意させよう。ところでそろそろ話をしてもいいかね?」

「どうぞ」

すでに食事が終わった領主に千夏は気軽に答える。


「チナツ殿は正規な手順でノークに入国しておらなんだんが、どのような方法で入国されたのだ?」

領主は食後のワインを傾けながら、千夏に向かって尋ねる。確かに今回は転移石で移動したので、千夏達は正式な入国手続きを済ませていない。


「ネバーランドの森を探索していたときに、不思議な石を見つけました。その石に触れたらこの国に転移されてしまったようなんです」

「転移石とは……確か古の魔道具の一つだな」

千夏の説明を聞き、領主は少し考え込む。


「魔道具といえば、この国には昔有名な魔女が住んでいた。その魔女は中央大陸からやってきた魔王を討伐した勇者の一員ではないかと言い伝えられている。魔女は魔法の研究家で、いろいろな魔法や魔道具を生み出した。今使われている魔法の大半が彼女が生み出した魔法だといわれている。もしかしたらその転移石は魔女が作ったものかもしれんな。かの魔女は神出鬼没と言われていたからのぅ。せっかくこの国に来たのだ。見学してはいかがだろうか?なかなか見応えする場所だ」

「魔王と戦った古の魔女か……」

千夏は今の自分の境遇から少しだけその魔女に興味がわく。


「入国手続きはこちらで対処しておこう。ただ正規な手順を踏んでないのでな、すぐに発行はできないようだ。その間はこの館に滞在していただこうと思うのだが、よろしいか?」

「はい。構わないです。ついでに出国手続きもお願いします。すぐに戻りたいので。ちなみに、エッセルバッハまでここから船でどのくらいかかりますか?実は一週間後に予定があるのです」

千夏の言葉に領主は少し困った顔をする。


「手続きは1日ほどかかると聞いている。エッセルバッハまでは直通の海路がなく、2回程船の乗継ぎが必要でしてな。うまく船に乗り合わせたとして2週間ほどかかるかと。なにせこの国は辺鄙な場所にありますからなぁ」

「2週間もかかるんですか」

もともと出たいパーティではなかったが、支援してもらっている以上出ないとまずいだろう。とりあえず、千夏達は領主に礼を言い、部屋に戻ることにした。


「さて、どうする?」

食後に千夏に割り当てられた部屋に集まり今後の相談を始める。

「パーティに間に合わせるには船でゆっくり帰っている暇はなさそうだよね」

千夏はこてんとベットに大の字になり天井を眺める。


「俺の背に乗って帰るというのは?」

那留は部屋に置かれていた果物をモグモグと食べながら答える。

「出来れば乗りたくないなぁ。短時間ながら我慢できるけど、海の上をずっといくからトイレ休憩とかいろいろきつそうだもん」

「そうですね。那留さんも休憩できないでしょうし」

「うーん、じゃあさっき話がでた魔女の住処に行ってみたらどうだ? 神出鬼没ってことはここからどこかに飛ぶ転移石があるんじゃないか?どうせ入国手続きが終わるまで暇だしな」

「そうだね。そうしようか」

話し合いはそこで終わり、今日は疲れたので解散となった。


「タマとコムギは元気でいるかなぁ……」

広いベットで一人で寝ることに千夏は違和感を覚える。なんとなく寂しい。

千夏は何回もベットの上でゴロゴロと転がりまくる。普段は寝つきがいいのだが、その日はなかなか眠ることが出来なかった。


翌朝。朝食の席で千夏は領主に「魔女の館に行きたい」と希望を述べる。

領主は頷くと、至急魔女の館の近くまで転移できるものを用意するといって席を立った。魔法を使える者が少ないので、王都にいる魔術師に直接依頼をするそうだ。


用意が整うまでの間、千夏達は例のコーヒー菜っ葉の育成をしている農場へ案内してもらう。畑は見事に目が痛いほどの紫色で覆われている。

コーヒーの実験用に千夏は菜っ葉を100個ほどその場で購入し、太郎はアモラと呼ばれるこの作物の苗を購入した。


領主の屋敷に戻ると、すでに王都から魔術師が到着していた。帰りは自分で帰れるため、行きだけお願いすることにした。

「この国はあまり見るものがないですが、あの館は見ごたえありますよ」

少しぽっちゃりとした女性魔術師が朗らかに千夏に声をかける。千夏達のことを他国からの賓客だと彼女は説明を受けていた。


「では、転移します」

女性魔術師が杖を振るい、転移の魔法を発動する。

街の中の風景が一瞬でゴツゴツした岩だらけの土地に変化する。

「あれです。あれが魔女の住処です」

魔術師が杖を振り上げて指し示した方向には、巨大な岩で出来た武骨な城がそびえ立っている。


「住処って……どうみてもお城じゃん!」

お屋敷程度を想像していた千夏は唖然と城を見上げた。


ご感想と評価ありがとうございます。


佐藤千夏

Lv    183

生命力  18,300(335,680)

魔力   21,840(493,120)

気力   50(1,100)

持久力  400(14,000)

Str    193(6,172)

Vit(DEF) 193(+防具10)

Dex    374

Int    556

Agi    356

Luk    44

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