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領主は面倒

皆さまのおかげで初めてデイリーランキングに載りました。

評価とブックマークありがとうございます。

びっくりしました。

記念にスクショとりました(笑

「月の光で白い花が青白く光る草ね。そういえばどこかでみかけたような……」

 アンジーは顔を上げて中空に視線を向け考え込む。

 妖精王は世界中にちらばっている風の精霊の知識を共有しているのだ。自分が直接見たわけではないので、すぐに記憶から絞り込むことができない。


 リルやタマが病人相手に頑張っている頃、千夏達は屋敷に戻り忘れないうちにアンジーを召喚することにした。

(思い出せんということは年のせいか?)

 シルフィンが剣から抜け出し、空中でごろりと横になりながらニヤニヤと笑う。

「シルフィンに言われたくないわよ!妖精の谷の場所を忘れていたくせに!」

 むっとアンジーがシルフィンをにらみつける。


 きゃんきゃんと言い合いを始めるシルフィンとアンジーを放置し、千夏は必要だと思うものをリストアップし始める。

「病院、警察(森の護衛含む)、食堂、最後のコンビニってなんだよ」

 那留が横から千夏が書き込んでいる紙を眺め読み上げていく。

「コンビニは最終目標であって、あまり急いでないんだけどね。あったら便利だなぁと。お店が鍛冶屋さんだけだっていうしね」

 千夏はぽりぽりと頭をかきながら答える。


「森の護衛は、果物やきのこを採取するための護衛のことだよな?ところで、コンビニとはなんだ?今の話を聞く限り店のことだと思うのだが」

 レオンが知らない言葉を聞きつけて、千夏に尋ねる。

「お店のことだよ。必要なものを必要なときに買えるお店。夜遅くまで開いているの」


「それよりも水回りをなんとかできないのか?見たところ毎回川から水をくみにいくんだろう?魔法が使えればいいんだが、上下水道があると楽だよな。それと風呂。佐藤は魔法が使えるが、村人には無理だろう」

 那留が少し考えてから付け加える。


「水道は水道管とかの工事が必要だね。一家に一つ水道完備は理想的だけど、いまだとコストがかかりすぎるような気がする。

 川から村の中心までため池を作るくらいが今のところできそうなところ?水道はあったら便利だけど、将来的な目標だね。

 お風呂は共同浴場があればいいか。体をきれいにしていれば病気にかかりにくいしね。村の地下で温泉でも湧いているところない?」

 千夏は将来目標として水道完備という文字を書き込み、温泉についてレオンに尋ねる。


「細い湯脈はあることはある。どのくらいの量が出てくるかは掘ってみないとわからないな」

「それだったら、暇そうな地竜にでも頼むか。温泉が出れば儲けもんだな」

 レオンはどちらかというと水竜よりの混血竜(ハーフドラゴン)だ。地竜が手伝ってくれるならそのほうが早そうだ。


「とりあえず、今日は温泉作りとこの前途中になっていた畑近くの水路堀でもしようか。水路堀りのほうをレオンに手伝ってもらって、温泉のほうは那留に頼んでもいい?」

「ああ、いいぞ。俺は一回竜の谷に戻って地竜を連れてくるか」


 空を飛んで行ってもいいが、エドが転移で竜の谷まで移動してくれることになったので、素直に転移で那留は竜の谷へと戻る。

 千夏はレオンに途中までタマに掘っていてもらった水路の説明をして、残りの水路を掘ってもらうようにお願いする。


 病院はしばらくの間ならリルが対応できる。

 でも魔族が出た時にや用事があって留守にする場合に、他に常駐してくれる医者がいないと厳しい。

 クロームかセラ頼んで医者を回してもらうったほうがいいだろう。


「電気があればなぁ。いろいろ便利なんだけど……。でも電化製品のつくり方がわからないからどうしょうもないね」

 千夏は溜息をついて、かきだした紙を眺める。

 快適な食っちゃ寝生活をぼんやりと考える。


 このあたりで冒険者として生活するのはお金が手に入らないので厳しい。千夏の生活費はどちらかというと領主としての税収になるだろう。生産性が上がれば収支がマイナスにならないはずだ。

 そのためには村人には元気で気持ちよく働いてもらう必要がある。


「なんか国造りのシミュレーションゲームみたいだよね。だけど、シュミレーションは苦手なんだよね……」

 千夏がぼけっと考え込んでいるところに、ライゼがやってきてお茶を淹れてくれる。


「ありがとう。ところで、ライゼは何か欲しいものはある?」

「そうですね。できれば新鮮な卵と牛乳がほしいところですね。行商人が月2回では鮮度が高いものを買い置きできません」


「牛乳と卵か……。確かに必要だよね。今までアイテムボックス使ってたから気が付かなかったけど。家畜でも育てないとだめだね」

 ふむふむと千夏は紙にそれを書き込んでいく。家畜を育てるにも一応専門家が必要だろう。素人だけでやるのにも限界がある。


「というか、村人達は普段なに食べてるの?森にもはいっていないようだし、果物やキノコを採取していないんだよね?牛乳と卵も手が出せないし」

 森に入っていなければ、獣の肉でさえ手に入らないだろう。

 千夏の質問に答えるためにライゼはカンナを呼び出す。


「普段の食事ですか?基本は畑でとれた豆や芋それと小麦で作ったパンですね」

「うわー、栄養偏ってるね」

 カンナの答えに千夏はびっくりする。毎日それだけだと食べる楽しみもないじゃないか。


 ご飯に楽しみがないなんて人生かなり損をしている。早急に食事事情を改善しないとだめだなと千夏は頭を抱え込む。

 村人の作った作物の売り上げで生活する以上、自分だけおいしいものを食べるのに罪悪感を感じるのだ。


「肉、魚、乳製品は必要でしょう。肉は森で手にいれるとして、魚は湖かな。乳製品も早めに家畜補強しないと、カルシウムが完全に足りてないよ、それ」

 考えることが増えて千夏の頭はパンパンだ。


「自給自足する場合は長期的に計画を立てないとだめだな。なんでもすぐに改善などできないぞ」

 千夏の話を聞いていたアルフォンスが苦笑する。

「そうだね。とりあえず家畜についてはセラとクロームに相談する。ところで、そっちのほうはなんか進んだ?」


「今、アンジーが風の妖精たちと連絡をとっているところだ。どうやら自力で思い出せないようだからな。それでな、もし場所がわかれば俺はそれを採取に行きたいと思っているんだが、問題はないか?」

 月光草は早めに手に入れておきたいとアルフォンスは考えている。次に襲撃にくる魔族がもし呪い持ちだった場合に対処できないからだ。


「問題ないけど、私はいけないかも。リルにもお医者さんがくるまではここを離れてもらうわけにもいかないんだよね」

「わかっている。セレナとエドとそれからレオンを誘ってみようと思っている。レオンがいれば魔法と回復ができるしな。タマとコムギは千夏が出かけないなら無理だろうし」


 レオンはこの世界について興味津々なので、アルフォンスが誘えばついていく可能性が高い。

 パーティが2分割されてしまうが、確かにアルフォンスのいうとおり月光草を手に入れた方がいいだろう。


「場所がわかったわよ。チェザール山で見たことがあるらしいわ。でも10年ほど前だから今も確実にあるかはわからないけど」

 風の妖精と連絡をとっていたアンジーが、パタパタと羽を動かしながらほっとしたように報告する。


「チェザール山ってどこ?」

 千夏はアイテムボックスからセラから借りたこの世界の簡易地図を取り出しながら質問する。


「ここよ。ハマールの中央から少し南にくだった山ね。山頂付近で見かけたそうよ」

 アンジーが地図の一点を指さして答える。

「ここなら一週間ほどで着きそうなの」

 南国諸島や遠い島国でないことにセレナも安堵する。


「クロームにいってそのあたりに転移できる人を頼もうか?」

「そうだな。なにをとりに行くとはいえないが、戦いに必要なものと言えば協力してくれるだろう」

 千夏の提案にアルフォンスは頷く。竜と約束したのでクロームにも月光草については話せない。


 千夏は早速セラとクロームに連絡をとる。

 家畜と竜へのお酒、それにチェザール山への案内人について二人に説明をする。

『案内人はすぐにでも手配しよう。出発は早いほうがいいんだな?』

「そうだな。早い方ほうがいい」

 アルフォンスも遠話の腕輪を使って会話に参加する。


『お酒は次の行商人に大量に持たせるとして、家畜は別に配送したほうがよさそうね。商人が連れていくにも限度があるし。医者はちょっと時間がかかるわね。あと遠話の腕輪を一つ用意するわ。竜の谷の竜も魔族と戦ってくれるんでしょう?いつまでもその村にいるかわからないしね、連絡を取るのに必要だわ』


「そうだね。あったほうが便利かも」

 セラの助言に千夏は頷く。

『とりあえず、今日中に案内人を手配する』

 クロームはそういって通信を切る。


『あと竜のためにお酒を定期的に必要なら、「発酵」という魔法を取った方が楽よ。果物からお酒が造れるしね。行商人の手間賃を考えるとそのほうが利益がでるわ。無属性だからとれるかどうかは運次第だけどね』

「そんな魔法があるのか。教えてくれてありがとう」

 千夏はセラに礼をいう。


「どこかに出かけるのですか?」

 戻ってきたエドが遠話を聞いていたようで、そう尋ねてくる。

「月光草を探しに行こうと思っている。エドもついてきてもらうからな」

 久しぶりに冒険に出かけることができるのでアルフォンスの声が弾む。


「もう目星をつけたのか。はぇえな。さすが妖精王」

 那留は空中に浮かぶアンジーを見上げる。

「竜の長老にそういわれるのも悪くないわね。ところでこの村まで竜の谷の範囲を広げるの?」

 アンジーは、那留が連れてきたおびただしい竜の数に首を傾げる。

「どういうこと?」

 千夏も一気に増えた複数の大きな気を感じ那留に尋ねる。


「暇竜が多かったからな。温泉堀と別に鉄を掘り出す部隊も連れてきた。

 あと変わり種の火竜も連れてきた。あいつ鍛冶が得意だからな、掘り出した鉄で水道管を作らせる。うまくいけば儲けもんってとこだな。


 ほかの竜達は森で獣と果物やキノコの採取それに木材の伐採だな。新しい家を作るのに必要だろう。

 報酬は温泉に入ってゆっくりさせて、後は酒でも出してくれればいいんじゃないか」


 長老であるガーシャが竜達に協力を促せば、断る竜はいない。

 しかも温泉、酒つきならなおさらだ。

 千夏はうーんと唸る。手伝ってくれるのはいいのだが、そんなにお酒を飲む人がいないので今の備蓄量で賄えるとは思えない。


「しかたない。王都にいってお酒を購入してこよう……」

 面倒くさいが仕方ない。2回転移すればすぐに着くだろう。ついでに発酵の魔法も取れたら取っておくべきか。


「王都にいくのか?俺もいくぞ」

 那留がそう言い出したので、冒険者ギルドにいって身分証を作ってくるように千夏は言いつける。

 身分証がないと国境を越えられないからだ。

 セレナが那留を冒険者ギルドへ案内してくれる。


 ついでにライゼとエドから頼まれた買い物リストを受け取る。

 領主ってめんどい……。

 まぁ冒険者が仕事だとしても、数日おきに狩りにはいかないと食べていけないから働く必要はあるのだが……。

 千夏はメモ用紙をみて軽く溜息をついた。


評価ありがとうございます。

それとご心配をおかけしてすみません。


次回からはアルフォンス達の月光草捜索と竜達の町おこしをちょろちょろ書いていこうと思っています。

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