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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
はじめての街
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スィートベリー採取

「さて、いこうか」

「ニュー」

 千夏は早めの朝食を食べ終えると、タマを連れて街の外まで出る。タマは千夏の頭によじ登る。結構重い。タマを飼い始めてから二日ほどたった。


 タマは多少動きが機敏になり、翼を使って空を飛ぶことができるようになった。街の中では放し飼いが駄目らしいので、街を出るまでは重いが千夏の頭の上に乗っかっている。


 門の外に出たところでタマは翼を羽ばたかせ、森のほうへ飛んでいく。

 千夏はタマを見送ると冒険者ギルドに向かって歩きはじめた。


前回稼いだお金がタマを買ったせいですっからかんになってしまったのだ。タマだけのせいではなく、だらだらと数日過ごしたせいでもあるのだが。


 ギルドに入るといつものEランク掲示板を見る。定番の薬草採取とウォーターモンキー討伐があることを確認する。今度は風魔法があるのだ、放火魔になるまい。


「あら、久しぶりなの」

 セレナが千夏に気が付き声をかける。さわさわとしっぽが軽く左右に揺れている。

(あ、もふもふしたいかも……)


 じーっと千夏はセレナの尻尾にくぎ付けになる。

「触ってもいい?」

「だめなの!」

 セレナは尻尾をびくっと縮めてつぶらな黒い瞳でうるうるする。

(やばい、かわいすぎる……)


「わかった、あきらめるから」

 千夏がそういうと警戒をといたセレナは「火魔法以外買ったの?」と聞いてきた。


「ありがたく買わせていただきました。セレナは何か依頼受けるの?」

「ん、スィートベリーの採取に行こうと思うの」

 セレナはさきほど剥がした依頼書を千夏に見せる。


「スィートベリー?」

「甘くておいしいの。初夏に実がつくの」

「私もいく!!!」

 千夏はがしっとセレナの腕を捕まえる。


砂糖があまり流通していないのか、街の中で甘味を千夏は食べたことがなかった。果物も食べてみたがどちらかというとさっぱりした甘味のものが多かった。


「わかったから離してなの」

「あ、ごめん。つい……」

 とりあえず気を取り直して二人で受付に向かう。


今日はカリンではなく、人族のミラさんだった。ミラさんはセレナと同じくらいの年で茶色のショートカットのキュートな女性である。


「はい。スィートベリーの採取ですね。ギルドカードをご提示ください。あら、チナツさんは未精算の討伐がありますね。ウォーターモンキー12匹。先に清算しちゃいますね」


 千夏には全く心当たりがなかったが次のミラの一言で謎がとける。

「あれ、13匹に増えた」

(タマかー)


 獣魔が倒した魔物はどうやら主人が倒したものとして扱われるらしい。金貨7枚と銀貨8枚を千夏は受け取る。どうやら経験値も入っているようでLvが12になっていた。

(もしかしてかなりいい買い物したのかも!)


「では、スィートベリーをこのかごいっぱいに採取してきてくださいね。依頼報酬は金貨1枚です」

 ずいっとミラにかなり大きめなかごと冒険者カードを渡される。とりあえずカゴは千夏のアイテムボックスに放り込む。


「空間魔法便利なの」

「スィートベリー一杯とっても大丈夫だよ!一杯とろうね!」

 千夏はヤル気満々である。


「ああ、そういえばトムさんがチナツさんを探していましたよ」

 思い出したようにミラがギルドを出ようとした千夏に声をかけた。


「トム…………?」

 千夏は誰だか思いつかない。すかさずセレナが千夏に教える。

「気功術を教えてくれた人なの」

「あ、ああ…(やばい、約束すっかり忘れていた)とりあえず行こうか」

 二人は街を出て目的のドンペン山に向かう。


「ドンペン山は街から北に5キロほど離れたところにあるの」

「5キロかぁ…ちょっときついね……」

「そうなの?1時間くらい歩けばつくの。ただ、山賊が住んでるの。注意必要なの」


(山賊か……そういえば防具まだ買ってなかったわ。大丈夫かな……。そうだ!)

「セレナ、私の従魔を呼んでもいい?」

「問題ないの。チナツは従魔がいるの?すごいの」

 セレナはどんな従魔が出てるかわくわくする。まるで小さな子供ようだった。


「あ、ちなみに小型なんで、乗り物にはできないよ」

「ドンペン山まで歩くのは問題ないの」

 千夏は首からぶらさげていたヒモのうち竜笛がついているほうを胸元から取り出す。


息を大きく吸い込んで思いっきり吹く。セレナの聴覚は獣人特有で小さな音でもひろうことができるが、千夏が吹いた笛の音はセレナには何も聞こえなかった。


「とりあえず先に歩いて行こう。そのうちくるよ」

「わかったなの」

 二人は先に進みはじめる。


「あのね、私も従魔がほしいの。なので今お金ためてるの」

「何買うか決めているの?(なんでもいいなら例の金貨1枚の卵をおすすめするけど…)」


「トールバードが欲しいの。足が長くて、とても速いの。背中にのれるの。ふわふわの羽毛でとても乗り心地がいいらしいの」

「じゃあ、金貨9枚以上かかるんだ。(あれ、例の〇〇コボのことかな)」


「金貨12枚必要なの。実はそろそろDランク昇格試験を受けようと思っているの。ランクアップしたら遠い狩場になるからトールバードがいるととても便利なの」

 うきうきとセレナは楽しそうに話していた。


 しかしその顔はすぐに引き締まり、ピクリと西のほうからすごいスピードで近づいてくるなにかを感知した。

「チナツなにかくるの」


 まだよく見えないが緑色の物体であることは判った。

「ああ、あれが私の従魔のタマ」

「ニュー」

 タマは千夏の頭上を旋回してから地上に降りる。飛び始めた当初はそのまま千夏の頭に止まったのでしつけしたのである。


「朝ごはんは食べ終わったよね?」

 千夏がそうきくと、タマは頷いて「ニュー」と鳴く。

「見たことがない従魔なの」

 セレナは警戒を解いて取り出していた長剣を鞘に戻す。


「珍しい従魔なんだって。タマはウォーターモンキーくらいなら蹴散らせるらしいから、(盾として)連れて行こうかとおもって」

「わかったなの。セレナなの。タマちゃん、よろしくなの」


 従魔であれば突然人を襲ったりしないことをセレナは知っていた。タマの頭を軽くなでる。タマは気持ちよさそうに「ニュー」と鳴く。






 ドンペン山はそれなりの傾斜がある大きな山であった。ピクニック気分では登山できない。山の麓についたところで一旦軽く休憩をとり、いざ登山である。


(杖が欲しい……)

 きちんとした登山道がなく、二人は獣道を登っていく。慣れない山道に千夏は何度か転びそうになる。


「スィートベリーはドンペン山の中腹くらいの木になってるの」

 セレナは慣れているらしく軽快に登っていく。少し先にいってはまわりをみわたし、千夏が追い付くの待っている。


「あとどれくらい登るの?」

 セレナに追いついた千夏が尋ねる。

「このペースならあと1時間くらいなの」

「なんかもう、登るの面倒になってきた……」

 登り始めて30分ほどで千夏は弱音を吐いた。


 体力的に疲れはまったくないのだが、悪路すぎて面倒になったのだ。

(なんで、私は山を登ってるんだろう……)


 登山なんて無理やり中学の遠足で富士山を登らされたとき以来である。あの時のつらかった記憶を思い出し、千夏はその場にしゃがみ込んでしまった。


「チナツ頑張るの。スィートベリーはとても甘くておいしいの」

「甘くて……おいしい?」

「そのままたべてもおいしいの。あとタルトしてもおいしいの」

 千夏はむくっと立ち上がると歩きはじめる。


 何回かそういうやりとりが続いてやっとスィートベリーが生息している山の中腹に辿りつく。セレナは千夏を食べ物で操るスキルを覚えた!


 山の中腹はにつくとセレナはするすると一本の木によじ登っていく。キョロキョロとまわりを確認したあと、セレナは戻ってくる。


「チナツ、あっちに生えてるの」

「いよいよご対面かー。くぅ、長がった!」

 乱立する木立を抜け、少し開けている空間に大量にあざやかな赤い実をつけた木々が立ち並んでいた。


「よぉ、ベリー摘みかい?場所代よこしな。お代は有り金全部だ」

 スィートベリーの前に待ち構えていた山賊たちが飛び込んできた獲物に楽しそうに笑いかけた。


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