表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
ハマール編
134/247

閑話 練馬蒼汰の場合

話しが途中なのに、閑話です・・・

コムギとワイバーンの戦闘シーンが難しくてちょっと難航しているので、間にこれを入れました。

注意:千夏達の話とは関係ありません。異世界に来た他のひとのサイドストーリーです。

「あー、暑い。なんでこんな暑いのに僕はこんなところを歩いているんだろう。」

ぶつぶつとチムが、地図を片手に不満を言い始める。

チムは蒼汰(そうた)がこの世界にきてから買った小柄な奴隷だ。

まぁ実際まだ12歳なので小柄なのは当たり前だが。


さっきから止まることのない愚痴をチムは言い続ける。

聞いているこっちがうんざりするほどだ。

奴隷というものはもう少し主人に従順なものだと思っていたが、こいつを見る限りどうやらそれは当てはまらないらしい。


しかも男児だと思って買ったのだが、女児だった。

やけに女顔していると思っていたが、性別まで蒼汰は気が回らなかった。

まぁいい。もともとチムの『情報収集』というスキル目当てだったのだから、性別はどちらでも構わなかった。


蒼汰とチムはカタ村の村長から受けたゴブリン退治に向かっている。

森の中を切り分け、ゴブリンの住む巣穴目指して一直線だ。

「ご主人様、そろそろ目的地です。」

チムはかぶっていたフードを頭から取り払い、目の前の洞窟を指さす。


「あれか。」

蒼汰は手の中で転がしていた二つのダイスを握りしめる。


「事前情報からゴブリンは40から50の集団です。いくらご主人様でも万が一のことがあるので、死ぬ前に僕を解放する遺言を書いておいてください。」

「馬鹿か?ゴブリンごときに俺がやられるわけないだろう。」

無表情で淡々と説明するチムの頭をぽかりと殴り、蒼汰はそのままなんの警戒もせずに洞窟に向かっていく。


「ご主人様、横暴です。」

頭を押さえながら、チムは森の木陰に身を潜ませる。

はなから蒼汰についてゴブリン退治に参加する気はない。終わるまでここで身を潜めて待つだけだ。

「そんじゃ、バトル開始!」

ひゃっほーと叫びながら蒼汰は洞窟へと単身突っ込んでいった。



練馬蒼汰は今年17歳になる。趣味は仲間と集まってTRPGをすることだった。

友達の家遊びにいった帰りに電車の脱線事故であっけなく死亡した。

どうやら死神の手違いでの死亡だったらしく、生き返るにあたり3つのコースを選ばされる。


Aコース。

そのまま練馬蒼汰として続きの時を生きなおす。ただし、奇跡の生還となるため上半身か下半身不随付き。


Bコース。

生まれたときまで時を遡り、練馬蒼汰として人生をやり直す。ただし、1年ほどで死亡する。


Cコース。

新しい体をつくり異世界で暮らす。


当然蒼汰はCコースを選ぶ。

Cコースを選ぶと自動的にお詫びとして希望するスキルをくれるという。

欲しいスキルは?と聞かれたときに即決TRPGをライブで楽しむためのスキルを要求したのだ。


TRPGでは行動する際にダイスを使う。

敵とであったとき、敏捷度によって攻撃する順番が決められ、まず攻撃判定が行われる。

攻撃判定とは攻撃が当たるかどうかが判定するものだ。

使う攻撃の内容及び攻撃する相手によって難易度が変わる。


ゴブリン相手だと蒼汰のLvで換算すると攻撃判定値は70%だ。

2つの十面ダイスを振り00から70までの数値が出れば判定成功となる。

特に01が出た場合、クリティカル攻撃となる。つまり痛恨の一撃だ。


攻撃判定が成功すると次に攻撃のダメージをまたもやダイスで振る。

これは持っている武器や魔法によりダイスの種類が変わる。

普通の鉄の剣だと6面ダイス2個振った合計値が相手に与えるダメージとなる。


TRPGでは防御判定などいろいろな判定にダイスが使用されるのだ。

普通に考えたらのんびりダイスなど振っている余裕はないのだが、このスキルを持っている蒼汰が判定ためにダイスを振るとき、周りの時間が停止する。


蒼汰はこの時間を観察タイムと呼んでいる。時間が止まるのだ、相手の動きなどいろいろ状況を観察するいい時間だった。観察タイムは蒼汰がダイスを振るまで続く。

つまり、蒼汰がダイスを振らなければその間周りの時間は停止しっぱなしだということだ。


なお、観察タイムではダイスを振る以外のアクションは何もできない。

剣を振るって相手を殺すことも、防御のために遠くへ飛びすがることができないのだ。


「まぁそんなことができなくても、強い俺様には関係ないけどな。」

早速目の前に現れた3匹のゴブリンが静止している姿を捕えて、蒼汰はにやりと笑う。

攻撃ターゲットを現す▼が3匹のゴブリンの上に表示されている。

一番手前のゴブリンを指さすと他のゴブリンの上から▼マークが消える。


次に『攻撃判定70%』と表示がポップアップされる。

蒼汰は十面ダイスを転がす。出た表示は00。

長年TRPGをやっていた蒼汰は簡単にクリティカル[01]を出すことなど簡単なことだ。

これはイカサマプレイとして本来でのTRPGでは禁止されていることだったが、この世界では関係ない。

さっさと攻撃ダメージ分のダイスを振る。


蒼汰の世界ではいちいち動作がストップする。

だが、ゴブリン達からしてみればいきなり突っ込んできた人間が、ばっさばっさと仲間達を切り裂き、こちらの攻撃が全く持って当たらない恐怖に身をすくめる。


「甘い甘い!俺様にそれで勝つつもりか?」

仲間の悲鳴で奥から30匹のゴブリンの増援が来るが、蒼汰は楽しそうにひらひらと回避しながら、次々とゴブリンを倒していく。


最後は20匹のゴブリンが蒼汰に突っ込んでいったが、蒼汰は範囲魔法ウィンドカッターを使い、ゴブリン達を切り捨てていく。


追加のゴブリンが出てこないので、蒼汰は洞窟の奥まで他にゴブリンがいないかを確認する。

他にゴブリンがいないかったので、ゴブリン達の死体をアイテムボックスへ収容した後洞窟を抜けて外へ出る。


「もう終わったのですか?」

茂みに隠れていたチムが姿を現す。

「ああ。だがMPを使い切ってしまったから転移を使えない。歩いて帰るぞ。」

えーっと文句をいうチムを無視してさっさと蒼汰は来た道を戻り始める。


「調子にのって魔法を使ったのでしょう?だいたいご主人様は後先考えなさすぎです。」

後ろを歩くチムがぶつぶつと文句をいう。

「う、うるさいな。黙って歩け。」

図星をさされて蒼汰は少しどもる。戦闘になると我を忘れて暴れまくるくせが蒼汰にはある。


まだぶつぶつと言い続けるチムの小言を聞き流し、蒼汰はメニュー画面を開く。

先程のゴブリン戦でLvが一つ上がったのだ。

この世界のTRPGルールではレベルが上がるとスキルポイントが割り振られる。

取得可能なスキル一覧を眺めて、蒼汰は『MP回復小』というスキルを取得する。


HPやMPは一晩ぐっすり眠れば最大値に回復するが、その日使った分は薬などを飲まないと回復しない。

『MP回復小』は一時間あたりに1ポイントだがMPを自動回復してくれる。

回復薬のほうがとっても便利だが、なにせ先日チムを買ったばかりでお金があまりない。

また大きな街の賭場で稼ぐ必要がある。


賭場は蒼汰にとってはぼろ儲けができるいい場所だった。

勝負判定にクリティカルを出せば必ず勝てるのだ。だが荒稼ぎ過ぎると目をつけられる。ほどほどに勝つくらいが丁度いいのだ。


それから2時間ほど歩き、カタ村に戻ると村長から謝礼を受け取る。

その金で村の薬屋で魔力回復剤を1つ買うと、蒼汰はチムを連れて転移でラファールの街へと飛ぶ。

それだけで回復したMPはすっからかんだ。


冒険者カードで街の中に入ると、蒼汰はくるりと振り返りチムに命令する。

「俺はこれから生活費を稼ぎにいってくる。お前はギルドでなにかいい依頼が出てないか見てきてくれ。」

「わかりました。ついでに宿も探しておきます。集合場所は広場の噴水前でいいですか?」

素直にチムは頷く。


「ああ。2、3時間くらいで行く。宿代と小遣いだ。」

蒼汰は銀貨4枚と銅貨5枚をチムに渡す。

「ありがとうございます。」

チムは小さな手でお金を受け取り、冒険者ギルドに向かって歩き出す。


この世界の情報が殆どなかったため奴隷を買ったのだが、日本人の蒼汰は奴隷という制度になじみがない。年の離れた義妹ができたと思えばいい。『情報収集』スキル持ちのため口が達者でまるで小姑のようだが……。


蒼汰は馴染みの賭場へと歩きだす。

ときには勝ちすぎないように普通にダイスを振り、結局蒼汰は賭場で金貨20枚ほどを手にいれた。


すでに中央広場の噴水の囲いにちょこんと腰かけチムが待っていた。

手には小遣いで買った饅頭を持っている。

蒼汰に気が付くとチムはひょこりと立ち上がり、持っていた饅頭を蒼汰に手渡す。


「なんだくれるのか?」

「僕が可愛いからおまけでもう一個くれたんです。おまけなのでご主人様にあげます。」

すましたように答えるチムに、蒼汰は礼をいい饅頭を口にする。


「宿はあっちです。一番割がよかった依頼はオーガの討伐ですね。3日ほどいった山でオーガが出るそうです。でも歩いていくのは面倒です。いい加減馬車くらい買ってください、ご主人様。」

チムにそうねだられるが、さっきまで薬を買えないほど金がなかったのに馬車を買えとは無理をいう。


黙り込んだ蒼汰にチムは駄目だしをする。

「ご主人様、男は甲斐性ですよ。」

蒼汰は食べかけの饅頭をむぎゅっとチムの口の中に突っ込む。チムは文句をいいながらも饅頭をもぐもぐと食べる。


結局蒼汰はロバとぼろい馬車を賭場で儲けた金で購入する。

甲斐性なしと言われて黙っていられるわけがない。

値引き判定をしてぎりぎりまで値引いてもらって、なんとか金貨10枚までに出費を抑える。


そのあとオーガ討伐に向かう最中に女の子を一人拾うことになってしまうのだが、それはまた別の話だ。

私もTRPGを何回かやったことがあるのですが、すっかり忘れています。

その辺りはなんちゃって設定なので、突っ込まないでくださいませ。

蒼汰もチートくさいですが、Lv縛りがあるのでLvが上がっていけばかなり強くなります。

気が向いたら続きをまた入れたいと思います。


追記

 クリティカル判定が誤ってるとのご指摘があり、修正しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ