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だらだら行こう(仮)  作者: りょうくん
はじめての街
11/247

初討伐です

「セレナさんは、その長剣がメインなの?」

 セレナの腰に携帯されている長剣を見ながら千夏は質問をした。

「セレナでいいの」

 無理やり千夏に引きずられて狩りにいくことになってしまったセレナだったが、もともと行く予定だった狩りであったため、とりあえず気をとりなおした。


「じゃあ、セレナ。私は千夏と呼んでね」

「わかったの。それで私の武器はチナツがいったとおりメインは長剣なの。サブとして短剣を投擲して戦うの」

 セレナは腰のベルトから1本の短剣を引き抜き千夏にみせる。投擲用短剣としてほかに2本ほどベルトに装備している。


「チナツは魔法をつかうの?杖は装備していないの?防具もないみたいなの」

 杖どころか防具すらなにも身に着けていない千夏をみて怪訝そうにセレナが聞く。

 セレナは素早く攻撃して敵の一撃をかわす戦闘スタイルなので、胸あてと手足のガードという軽量な防具を身に着けている。


「えっと…あ、そうそう、防御は気功術があるし。杖は………私の場合つかっても使わなくても変わらないんだよね。あははは……」

 千夏は適当にごまかした。昨日夕飯を食べたあとに武器屋に行ってみたのだったが、高くてなにも買えなかったのである。残りの生活費をすべてつぎ込めば一番安い防具くらいは買えたのだが、手持ちが0になるリスクをおかせなかった。防具が買えなったため、自分の盾となる前衛を探していたなど口がさけても言えない。へへ……と千夏は笑ってごまかした。


「そういえば気力がほかの人より強かったの」

 千夏の適当な言い訳をセレナは納得したようだった。

 ちなみに魔法は買った後に一回も使ったことがない。千夏は自分の魔法の威力がどのくらいあるのすら判っていなかった。ほとんどセレナにおんぶにだっこ状態である。


「あ、入口についたね。先に薬草ちゃっちゃと採取するね」

 せめて薬草採取くらいは自分が頑張ろうと千夏は考えていた。アイテムボックスからスコップを取り出し、ざくざくと薬草を掘って次々アイテムボックスに入れていく。


「空間魔法が使えるの。すごいの、チナツ」

 セレナは千夏のアイテムボックスの性能に驚いた。

(よっぽど強い魔法使いなのね。杖いらないって言ってたの)

 セレナはそう納得する。


「じゃあ念のために私は魔物が襲ってこないか、周りを警戒しておくの」

 セレナは森のほうを向き警戒態勢にはいる。千夏は周囲を警戒するセレナを見て少し驚く。

(この前逢わなかったから森の中にしか魔物が出ないかと思ってた。森の外にも出てくるのね。薬草採取も危険なお仕事だったのか……)


 次にいつ護衛付で依頼を受け付けられるかわからないので、千夏は頑張って50束ほどそれぞれの薬草を掘り起こした。

「だいたいこんなものでいいかな」

 スコップをアイテムボックスに入れて千夏はセレナのほうに声をかける。


「じゃあ、森に入いるの。気功術!」

 セレナの目の前に透明な防御壁が展開される。千夏と違って真面目なセレナは毎日気功術の訓練を行っていた。そのため展開速度が早く、展開された防御幕も初回に比べたら頑丈になっている。千夏も気功術を使ってみるがさぼっていたせいで展開するのに少々時間がかかった。

 二人は森の中へと進んだ。最初はあぜ道を進み、少し歩いたところでセレナは道を外れ森の奥へと歩きだす。森の中の道なき道は木の根や少し長めの雑草のせいで結構歩きづらい。千夏はセレナに遅れないようにえっちらおっちらとついていく。


「チナツはこの森をどこまで進んだことがあるの?」

 辺りを警戒しながらセレナは尋ねる。

「街道沿いの辺りをちょっとだけ。森の中に入るのは初めて」

 今度は正直に千夏は答える。

「そうなの。この森は奥にいけばいくほど強い魔物がいるの。街道辺りはほとんど魔物が出ないの。今回の討伐対象のウォーターモンキーは、この森の中では真ん中くらいの強さの魔物なの。たまに群れで襲ってくることがあるから気を付けるの」

 セレナは大きな耳で森の中の音を聞き分けながら、進んでいく。


 しばらく進んだところでセレナの耳がぴくりと動き、立ち止まる。

「この先になにかいるの」

 慎重なセレナの声に千夏は黙ったまま頷いた。


「先に先制してチナツが魔法を打ち込むの」

 セレナは長剣を引き抜くと再度千夏をみて指示を出す。

「判った」

 音をできるだけ立てないように二人で警戒しながら歩いていく。


 少しひらけた場所に2匹のウォーターモンキーがいた。ウォーターモンキーは体毛が濡れており、水の防御がかかっているちょっと中型の猿である。


「ファイヤーボルト!」

 千夏は一匹に向け魔法を放つ。

「な、森で火魔法なの?」

 一瞬驚いたセレナだが戦闘がはじまっているのだ。すぐさまウォーターモンキーに向かって走りだす。


「ウキィィィ!」

 千夏のはなった魔法は見事にヒットし、水の防御幕を突き破り、火だるまとなってウォーターモンキーは倒れた。セレナはもう一匹のウォーターモンキーにかけより、長剣で襲い掛かる。ザンッと音が聞こえ、猿の左腕が胴体から切り離される。セレナは連続で切りつけウォーターモンキーを倒した。もともとセレナひとりでも2匹同時でも倒せるのである。圧勝であった。


「チナツ!森で火魔法は危ないの!」

 セレナの怒った顔をみて千夏はいそいそと燃えている猿にウォーターをかける。

「大丈夫。ほら、すぐ消えるから。範囲魔法じゃないし」

 えへへとまたもや笑ってごまかす千夏である。だいたい使える攻撃魔法がファイヤーボルトしかない。


 なお、討伐した魔物は冒険者カードに討伐数が記載され、報酬を受けるとその表示が消える仕組みになっている。あとは売れる部分をはぎとって持って帰るだけである。

 ウォーターモンキーの売れる部位は毛皮のみ。千夏がまっ黒にしたウォーターモンキーは剥ぎ取り不可。セレナのほうも千夏のファイヤーボルトでちょっと気が動転していたので切り刻んでしまったため、意味がない。とりあえず毛皮はあきらめた。


「はっ!」

 ピクリとセレナの大きな耳が森の奥のほうに向く。

「チナツ、逃げるの!群がくるの」

 慌ててセレナは千夏の腕を掴んで走り出そうとした。しかし目の前にはすでに3匹のウォーターモンキーが木をつたって回り込んでいた。

 ファイヤーボルトの爆発音とさきほど討伐したウォーターモンキーの断末魔が近くにいた群をおびき寄せたのだった。


「ファイヤーボルト!ファイヤーボルト!ファイヤーボルト!」

 千夏はがむしゃらに3匹に向かって魔法を打つ。俊敏なウォーターモンキーに連続で魔法攻撃などかわされるだけ無謀な攻撃であった。だが運良く千夏の魔法はドカドカとウォーターモンキーに命中した。

 そのときセレナは後ろから近づいてきた8匹のウォーターモンキーに剣を向ける。もう逃げれる隙はない。


「やぁぁぁぁぁっ!」

 セレナは一番左側にいたウォーターモンキーを即座に斬り伏せる。すぐに3匹のウォーターモンキーが次々とセレナに襲いかかる。

 セレナを襲ったウォーターモンキーは、一匹目はセレナに斬り倒され、二匹目の攻撃は回避され、三匹目の攻撃は無防備なセレナの右上から振り下ろされた。ガンっと音がなり、三匹目が逆にはじきとばされる。気功の防御幕に防がれたのだ。セレナはすぐに倒れた三匹目に剣を振り下ろす。

 残ったウォーターモンキーは再度セレナに向かって突撃してくる。セレナはバックステップでそれをかわしつつ、ベルトから短剣を取り出すとウォーターモンキーに投擲した。


「グャァァ!」

 運よく短剣がウォーターモンキーの右眼に当たり、目に致命傷をうけたウォーターモンキーが痛みに暴れる。

「せぃぃぃぃっ!」

 セレナは飛び込んでとどめをさす。


(あと5匹なの!)

 流れる汗を手でぬぐってセレナは右手のほうに振り向き、唖然とした。


「森が…燃えているの…………」

 轟々と音をたてて木々がすごい勢いで燃えていた。

 ウォーターの魔法で必死に火消しをしている千夏がセレナの視線をに気が付くと、あはは……と笑ってごまかしていた。



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