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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第一章 奴隷編
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 間話 兄弟

 私、トレスには、上位属性【焔】を操る才能と――――他人の魔力を見る才能があった。


※※※※※


 物心ついた時から、自分は他人の魔力を見ることができると気づいていた。


 我ながら聡い子供だったので、それは他の人にはできないことだというのにも気づき――――誰にも言わないようにしてきた。


 そして、確か私の七歳の誕生日と同じ日に、三人目の弟が生まれた。

 お母さんは「神様が誕生日プレゼントをくれたんだね」とか言っていた。


 弟――――ゼロは【無】属性だから、別れてしまうことになるかもしれないと聞いた時は、悲しかった。


 しばらくの間は、普通に。


 ちっちゃくて可愛いゼロを見ていた。




 ある日。

 ゼロの魔力が急に膨れ上がった。


 【魔導の扉】と呼ばれる現象がある。


 魔力を使い切った時に現れるもので、ここから魔力を引きずりだし、魔法として使うことができるようになれば魔力がぐっと上昇するのだ。


 ただし、事前にその分の魔力を使う魔法を覚えておかないと、魔力が暴走して死ぬ危険性もあるらしい。


 大きな魔力を使う複雑な魔法を覚えなければならない上、魔力が足りないから事前に練習することもできないので、回数を重ねるほど開くのは難しくなる。


 誰でも一度は開くもので、

 半人前の魔法使いなら十回。

 一人前の魔法使いなら三十回。

 魔術師と呼ばれる、魔法使いの上の人たちなら五十回。

 すごい魔術師なら、百回も開いたことがあるらしい。


 目も開いていないゼロに、そんなことができるとは思えなかったが、きっとゼロはすごい魔法の才能があるんだろうとその時は思った。

 【無】属性なのが残念だなあ、とか。


 次の日。

 また、ゼロの魔力が膨れ上がっていた。

 驚いた。

 やっぱりゼロはすごいんだと思った。


 その次の日。

 また膨れ上がった。


 その次の日。

 また膨れ上がっていた。


 その次の日も。

 その次の日も。

 その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。その次の日も。


 気づけば、家中がゼロの魔力で満たされていた。

 視界が、ゼロの魔力でフィルターがかけられていた。

 怖かった。

 まだハイハイしかできない弟が怖くて怖くて仕方がなかった。


 誰かに気づいてほしかった。この家にバケモノがいると。


 誰も気付かなかった。


 当然だ。魔力が見えるのは私だけなんだから。

 誰かに言おうと思ったが、どうせ誰も信じないと気づいて、心の奥底にしまった。


 ゼロが【無】属性じゃなかったら、この村が消えているかもしれない…………そんなことさえ、思った。


 ゼロの魔力は止まらずに増加していった。


 ゼロが暴れたら、みんな死んじゃうかもしれない。

 そう思って、村長の家に行ったりして、魔法の勉強をした。

 私は【焔】属性という上位の属性を持っていたので、強い魔法がどんどん使えるようになった。

 【魔導の扉】も、二十回ぐらい開いた。


 これならなんとかなるかもしれない。と思った。

 それと同時に、これでもどうにもならないかもしれない。とも思った。


 …………早く売られちゃえばいいのに。


 そんなある日、とうとうゼロが売られることになった。

 父さんが、逃げた時のために村で見張りをしていてほしいと言った。


 私は、村はずれに立っていた。

 ゼロが、ウノ兄さんを蹴っ飛ばして走ってきた。


 殺される。そう思った。

 ものすごい魔力を足に込めて、ありえないスピードで疾走してきた。


 私は、とっさに自分の使える最強の魔法を放った。


紅蓮大火クリムゾンファイア!」


 魔法というのは十五段階に分けられている。

 『下之下(レベル1)』から『上之上(レベル9)』の九段階。

 それに加えた、『特之上、中、下』、『極之上、中、下』。


 これはその中の――――『上之下(レベル7)』。

 大人の魔法使いでも使える人はあんまりいない、大きな大鬼オーガだって一発で消し飛ばす魔法。


 ゼロはまともにくらった。


 そしてゼロは。


 ゼロは。




 ――――無傷だった。



 髪すら燃えていなかった。


 魔力が尽きてしまったのか、その後は大人しく兄弟たちに捕まった。



 もうゼロは、家にいない。

 けれど、いつ自分を売った私たちを憎んでこの家に戻ってくるかわからない。


 その日のために私は魔法の鍛錬を続け――――本来十五歳に出る予定だった村を、十三歳で出た。


 これから、村長の知り合いの魔術師のところで、魔法を教わりに行くところだ。


 街に入り、ここまで送ってくれたウノ兄さんと別れた。


 歩いていると、こんな会話が聞こえた。


「なあ知ってるか? コロシアムで奴隷の子供がレッドドラゴンをぶっ飛ばしたって話」

「ああ。朝軽く聞いただけだけどな。どんなガキなんだ?」

「それがよ――――」


 次の言葉に私は、目を見開いた。












「【無】属性の、ゼロって名前のガキなんだと」

「え?」

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