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無属性魔術しか使えない魔術師  作者: 401
第一章 奴隷編
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第七話 脱出

「ねえ、なんでにげなかったの?」


 見られていた。

 バッチリ見られていた。


 俺が売られてから一週間がたち、牢屋の生活にも慣れてきたころ、あの【死】属性の女の子にそう聞かれた。


 慌てて彼女の口をふさいだ。


「…………それって皆知ってんの?」

「ふぁふぃあ?(なにが?)」

「俺が抜け出そうとしたこと」

「ふぁふんふぁひはへふぁほ(たぶん私だけだよ)」

「そうか…………ならいいんだ」


 彼女の口から手を離す。


「ちっちゃいのにすごいんだね」

「…………」


 幼女に言われるとなんかイラッとくるが、確かに俺は彼女よりちっさいので、それは仕方がない。


 小声で話す。


「バレたらきっと酷い目にあうし、それに逃げ切れたとしてもその後生き延びれる自信がなかったからだよ」

「なるほど」

「頼れる知り合いもいないしね」

「じゃあ私をにがして」

「は?」


 何を言っているんだこの幼女は。


「私たよれるひとしってる。このちかくにいる」

「マジで?」

「まじだよ」


 そっか……いるんだ…………。


「けど今やったら目立つから、もうちょっと後でな」

「うん」


 素直だ。

 素直でいい幼女だ。


※※※※※


「ちなみに俺も匿ってもらったりできないのか?」

「むり。私ひとりでもこころぐるしいのに、こんなちっちゃいこつれてったらおいだされちゃう」


 心苦しいとか、難しい言い回しを知ってんな、この幼女は。

 そして、ちっちゃいとか言うな。


 同日、あの大部屋から俺たち二人は移動され、石造りの建物の、鉄格子がはめられた、恐らく奴隷展示用であろういくつかの牢屋の、一番奥の誰も見ねーだろこんなんって感じの牢屋に入れられた。


 二人だけだ。


 なんか部屋の隅っこに白い髪が落ちていることから、多分ここは忌み属性の者専用の牢屋なのだろう。


「実に都合がいい。夜中になったら行動開始な」

「あなたはにげないの?」

「ん。だから言っただろ? 逃げ切る自信も逃げて生き延びる自信もないって」

「そっか…………」


 黙る少女。


 それにしても、まさかあんなに壁が脆いとは…………。

 え、ナニコレ、幼少からの積み重ねで魔力が多くなり過ぎちゃったとかそんなん?


 いや、それはないな。多分【無】属性でも、大人になればあれぐらいのことはできるようになるんだろう。


 俺は生まれた時から魔力を鍛え続けてきただけで。すでに大人とおんなじだけの魔力を持っていたから、あれだけのことができたのだ。おお、辻褄が合うじゃないか。


 大体子供だと、上位属性を持っていても大した威力の魔法は使えないってことは、トレス姉さんによってわかっている。


 きっとこの世界の大人はすごくて、俺はすでに大人並だからこれだけのことができる、と。


 おっけおっけ。


 しばらくして、採光窓からわずかに赤い光が差し込むだけになり、それもやがて消える。


 夜だ。


「ねえ、まだ?」

「もうちょっと後でな」


 待つ。

 待つ。

 待つ。


 眠くなってきたあたりで行動開始。

 うとうとしていると、女の子に肩を叩かれた。


「ね、ね、ね」

「うん?」

「これ、はずせない?」


 足の鉄輪を指差す彼女。


「いや、無理だろ」


 魔法が使えなくなるらしいからな。


「なんで? ちからもちじゃん」


 そういう認識だったのか。


「魔法で力を強くしているだけだよ」


 そういいつつも、彼女の鉄輪を触る。

 もしかしたら嵌められた相手にしか効果がないみたいな感じかもしれないしな。


「お?」


 魔力が吸い取られる。

 が、それは余りにも微量だ。


 なんだこれ。

 子供だとこんだけ吸い取られるだけで魔法が使えなくなるのか?


「えい」


 逆にこっちから魔力を送り込んでやる。

 バラバラに分解した。

 ちょろいな。


「取れたよ」

「ありがとー」


 にこ、と笑う幼女。


 和むなぁ。


「じゃあいくぞ」

「うん」


 筋力強化、防御力強化、同時起動。

 魔力充填率、九十パーセント!


「ラッ!」


 狭い牢屋内に、風が吹き荒れた。

 ドガアアアア! という音とともに、壁だった物が瓦礫となって吹っ飛び、外の街が見える。


 おお、なんとファンタジー的な街並み。


 大穴がぱっくり開いた壁から、出ていく彼女。


「じゃー、ばいばい」

「おう。シーユーレーター、アリゲーター」

「ありげーたー?」


 小首を傾げつつ、彼女は走り去っていった。

 あんな幼女をロクに手助けもせず送り出すというのは人としてどうかと思うが、こんなところで奴隷として買われるんじゃ、どうせ同じだろう。

 確実に不幸になるか、幸せになるか死ぬかなら、後者を選ぶべきだ。


 音を聞きつけた守衛が駆けつけてきた。


「何事だ!」

「相部屋の人が、壁をぶち壊してここを出ていきました!」

「な、なんだと! そうなのか!」


 信じちゃうんだ。


「どっちに行った!」

「あっちです!」


 当然反対方向を指差す。


「くそっ、おい起きろ! 奴隷が逃げ出したぞー!」


 さて、寝るか。


※※※※※


 一週間たっても、彼女は見つからなかった。

 うまく頼れる人のところに辿りつけていればいいのだが。


※※※※※


 俺が奴隷じゃなくなったのは、それから三年後のことだった。

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